免震のメリットと展望|免震の基礎知識6
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2025.01.29
基礎知識
免震のメリットと展望|免震の基礎知識6
前回は、免震建物の効果を現地調査の結果を用いながら示しました。最終回である今回は、免震構造のメリットを確認し、今後の課題・展望について解説します。
第6回「免震のメリットと展望」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 免震構造のメリット
本連載では、免震構造によるメリットとして、地震動による揺れが抑えられることを説明してきました。図 1 に示すように、揺れの低減以外にも免震構造のメリットはあります。それぞれを詳しく見ていきましょう。

1:エネルギーの授受が単純である
免震建築では、建物への入力エネルギーは免震部材(アイソレータとダンパー)により全て吸収されます。そのため、エネルギーの授受が単純で不確定要素が少なく、免震部材の性能が分かれば、地震時の建築物応答を求めることができるのです。
2:鉛直支持部材(アイソレータ)とエネルギー吸収部材(ダンパー)が明確に分離している
アイソレータは上部構造を支え、地震のエネルギーを伝えないようにする部材であり、積層ゴムアイソレータが用いられます。ダンパーは地震エネルギーを吸収して震動を抑える部材で、オイルダンパーや、鋼材・鉛材の弾塑性変形を利用します。アイソレータとダンパーは別々の役割を担っており、それぞれの性能を個別に計測することができます。そのため、免震建物の免震性能を容易に計算でき、地震時の挙動を推察することができます。
3:上部構造を無損傷にとどめ、設備機器の損傷も回避できる
地震のエネルギーによる変形は免震部材に集中し、免震部材より上の構造物はゆっくりと水平方向に動くことで、建物への被害を抑えます。
建物内部の日常家具・機器類・二次部材の転倒や損傷を防ぎ、住人へ大きな安心感をもたらします。
4:免震層は柔要素(アイソレータ)と剛要素(ダンパー)との混合構造である
柔要素と剛要素を組み合わせることで、エネルギー吸収効率が良い構造体にできます。その結果、建築物に残留塑性変形が残らず、部材の損傷を抑え、地震後も継続して建築物を使用することができます。
5:建築コストが安くなる
免震構造では、骨組みを少なくすることで、構造骨組全体で数パーセントのコスト削減を見込めます。また、設備機器などへの二次被害も防ぐことで、総コストを抑えられます。
参考:秋山宏、エネルギーの釣合に基づく建築物の耐震設計、技法堂出版、1999 年
2. 免震技術の課題と展望
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 免震構造とは
- 第2回 免震構造と耐震構造の違い
- 第3回 包絡解析法による免震層の評価
- 第4回 免震層の設計方法
- 第5回 免震効果の調査
- 第6回 免震のメリットと展望