免震効果の調査|免震の基礎知識5
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2025.01.29
基礎知識
免震効果の調査|免震の基礎知識5
2016 年 4 月の熊本地震発生時、熊本県内には工事中含めて 24 棟の免震建物がありました。これらの免震建物のうち、17 箇所について実際に現地に行き、調査を行った結果をまとめました。免震構造物により、地震被害はどの程度抑えることができたのか、お伝えします。
第5回「免震効果の調査」を解説していきます。
第5回もくじ
1. 免震建築物の調査概要
熊本市周辺の免震建物 17 棟に対して、2016 年に発生した熊本地震による影響を調査しました。表 1 に、調査した免震建物をまとめています。調査対象の建築物は共同住宅、医療施設、事務所、倉庫などです。免震クリアランスとは免震建物が動けるように確保している伱間のことです。

免震性能の調査として、定性調査と定量調査を行っています。定性調査では、居住者、施設利用者、周辺住民へのヒアリング・アンケートを実施しました。定量調査では、地震時の免震建物の挙動を、けがき記録もしくは免震装置周りの地震痕などを用いて確認しています。けがき記録とは、免震建物に金属針(けがき針)、地盤に金属板(けがき板)を設置し、地震時に金属針が金属板の表面に付けた傷を観察して、建物の変位量を計測する手法です(図 1)。けがき記録では、建物の変位量を片振幅と全振幅の最大値で表します。片振幅とは、ゼロ点から極大値、あるいは極小値までの距離のことです。全振幅とは、極小値から極大値までの距離のことです。地震による建物の変位は、図 2 のように正方向への変形量と負方向への変形量が異なります。そのため、全振幅と片振幅の両方を示すことで、建物の変位量をより正確に表すことができます。


2. 免震建築物の調査結果
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 免震構造とは
- 第2回 免震構造と耐震構造の違い
- 第3回 包絡解析法による免震層の評価
- 第4回 免震層の設計方法
- 第5回 免震効果の調査
- 第6回 免震のメリットと展望