包絡解析法による免震層の評価|免震の基礎知識3

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2025.01.29

基礎知識

包絡解析法による免震層の評価|免震の基礎知識3

免震の基礎知識

 
著者:福岡大学 建築学部 教授 高山 峯夫

前回は、免震構造と耐震構造の比較から、なぜ免震構造が地震被害を防げるのか解説しました。第 3 回では、免震層を評価する手法の一つである、包絡解析法を紹介します。

第3回「包絡解析法による免震層の評価」を解説していきます。

 

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1. 包絡解析法とは

包絡解析法とは、建物への入力エネルギーと免震層の吸収エネルギーのバランスを考慮することで、免震層の応答変位や応答せん断力係数を予測する解析法です。免震構造は、免震層に地震動のエネルギーを集中させる明快な構造なので、地震動による建物への入力エネルギーが免震層で全て吸収されると仮定できます。そのため、建物への入力エネルギーと免震層の吸収エネルギーが等しくなります。

包絡解析法を用いると、免震構造物に生じる変位・せん断係数などの応答予測や、免震層の性能(免震周期・ダンパーの減衰量など)の評価が可能になります。時刻歴応答解析(個別の地震波を用いて解析する手法)と異なり、包括的な応答評価が可能です。そのため、時刻歴応答解析による結果の検証や、設計した建物の性能評価に用いられます。今回は、包絡解析法を取り上げ、さまざまなパラメータが免震構造の挙動にどのような影響を及ぼすかを解説します。

2. 地震時の入力エネルギー

免震建物への入力エネルギーを計算してみましょう。建物基礎部には、免震層としてアイソレータとダンパーを使用し、地震エネルギーの吸収は免震層のみで起こるものとします。この時、入力エネルギーと吸収エネルギーは以下の式で表されます。

We(t)+Wp(t)=E(t)

ここで、We(t) はアイソレータの弾性ゆがみエネルギー、Wp(t) はダンパーの消費エネルギー、E(t) は地震動による建物への入力エネルギーです。いずれも、時間 (t) の関数です。計算を簡略化するために、免震建物は 1 自由度系振動モデル(一方向のみに振動する)と仮定します(図 1)。

1自由度系振動モデル
図1:1自由度系振動モデル

地震動による免震建物への入力エネルギーは以下の式で表されます。

ここで、z の 2 回微分は地震動により建物に生じる加速度、M は免震建物の質量です。地震入力エネルギー E は、建物質量 M とエネルギーの等価速度 VE に変換しておくと便利です。

3. 地震時の応答モデル

4. ベースシア係数とは

5. 免震構造の応答予測

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 免震構造とは
  • 第2回 免震構造と耐震構造の違い
  • 第3回 包絡解析法による免震層の評価
  • 第4回 免震層の設計方法
  • 第5回 免震効果の調査
  • 第6回 免震のメリットと展望

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