ねじの種類と素材|ねじの基礎知識2

ねじの基礎知識
著者:國井技術士設計事務所 所長 國井 良昌

日本には驚くほど、多種多様なねじが流通しています。そのため、適切なねじの選択は容易ではなく、トラブルの要因ともなっています。トラブルを防ぐためにも、まずは主要なねじ6 種の特徴や、素材に関する基礎知識を学びましょう。

第2回「ねじの種類と素材」を解説していきます。

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1. ねじの種類と特徴

ねじの種類はとても多く、設計や使用目的に適合するねじの選択に、迷うことがあるのではないでしょうか。まずは代表的な6 種類のねじを学び、用途に応じて正しく使い分けられるようになりましょう。

・タッピン
タッピンとは、ねじ先がテーパー加工されており、めねじ(雌ねじ)がない下穴に直接ねじ込むことで、相手部材にねじ立て(ねじ穴加工)をしながら締結するねじの総称です。ねじ立て方法は、切削加工タイプと塑性変形タイプがあります。ねじのピッチ(ねじ山間の寸法)には小ねじと互換性のあるものと、それよりも荒いピッチのものがあります。筆者は17 種のタッピンねじの存在を確認しています。

タッピンねじのうち、塑性変形タイプのものをフォーミングねじ(図1)と呼びます。メリットは、切粉(きりこ、切りくず)が発生しづらい点です。ねじ先の面がおむすび形状(三角形)のものがあり、長所は保持力が強い、ねじ込みトルクが小さいなどです。

フォーミングねじ
図1:フォーミングねじ

・小ねじ
小ねじ(図2)は、頭にマイナスやプラス形状の溝があり、ねじ先は平たい構造です。ホームセンターでも販売されている一般的なねじです。めねじを併用したり、相手部材にあらかじめねじ立てをする必要があります。素材として、ステンレス、炭素鋼、アルミ合金、銅合金、チタン合金、樹脂などが使用されています。

小ねじ
図2:小ねじ

・セムス
セムスとは、ワッシャ(座金)とセットになっているねじのことです。組立作業の工数削減・効率向上に寄与します。セット例は、ねじ・平ワッシャ、ねじ・ばねワッシャ、ねじ・平ワッシャ・ばねワッシャ(図3)などです。

セムス(ねじ・平ワッシャ・ばねワッシャ)
図3:セムス(ねじ・平ワッシャ・ばねワッシャ)

・六角ボルト
六角ボルト(図4)とは頭が正六角形になっているねじのことです。ホームセンターでも販売されている一般的なねじです。素材として、ステンレス、炭素鋼、アルミ合金、銅合金、チタン合金、樹脂などが使用されています。

六角ボルト
図4:六角ボルト

・トリプルスクリュー
トリプルスクリュー(TP ねじ:Triple Screw 図5)は、ビス・平ワッシャ・ばねワッシャを一体化したねじのことで、コスト面のメリットもあります。頭部に皿ばねワッシャ形状の大きな座面を有していて、緩み止め機能を備えています。タッピントリプルスクリューのように、複数の特徴を組み合わせたねじもあるため、選択時には注意が必要です。

トリプルスクリュー
図5:トリプルスクリュー

・止めねじ
止めねじ(図6)とは、ねじ先を押し当てて部材などを固定するねじのことです。例えば、ハウジング(機械装置などを保護する目的の箱)の中にシャフトを挿入する場合、ハウジング側から止めねじを挿入して固定します。ねじ先の形状は、平面・山形・半球状などがあり、素材はステンレス、炭素鋼、アルミ合金、銅合金、チタン合金、樹脂などがあります

止めねじ
図6:止めねじ

2. ねじの材質

ねじを選択する際、ねじの材質も重要なポイントです。今回は、使用頻度の高いステンレスと鉄に絞って説明します。ともに、電気自動車を含む電気・電子業界では、使用ランキングの上位を占めています。

1:ステンレス系材料
ステンレスとはクロムCr を含んだ鉄のことであり、さびにくい合金です。JIS では、SUS(Steel Use Stainless)の識別記号が使用されています。表1 に、代表的な6 つのステンレス鋼の特性をまとめました。コスト係数は、材料費÷ねじの体積で求めます。耐食性はSUSXM-7が最も優れ、SUS304、SUS303、SUS430、SUS410 の順で悪くなります。

ねじに用いるステンレス鋼の性能
表1:ねじに用いるステンレス鋼の性能(参考:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.89)

・SUSXM-7
SUS304 をベースにした冷間加工用のオーステナイト系ステンレス鋼です。耐食性・冷間加工性に優れています。ねじにお薦めの金属です。

・SUS303
SUS303 はオーステナイト系ステンレス鋼の一種で、SUS304 に硫黄を添加して切削性と焼付防止を付加した金属です。快削ステンレスとも呼ばれ、冷間加工よりも切削用にお薦めです。耐食性はSUS304 に劣ります。

・SUS304
SUS304 はオーステナイト系ステンレス鋼です。耐食性に非常に優れていますが、冷間加工による硬化が著しく、使用頻度は減っています。切削加工タイプのねじによく用いられます。

・SUS410
SUS410 はマルテンサイト系のステンレス鋼です。冷間加工性に優れるものの、耐食性はよくありません。

・SUS416
SUS416 はマルテンサイト系のステンレス鋼です。切削性が他のステンレス鋼と比べても良く、冷間加工後に切削加工を追加するねじにお薦めです。

・SUS430
SUS430 はフェライト系のステンレス鋼です。加工性に優れる一方、耐食性はSUS304 に劣ります。

2:鉄系材料
ねじの鉄系材料として、SWHC とSCM435 を紹介します。表2 に、ねじに用いる鉄系材料の性能をまとめました。

ねじに用いる鉄の性能
表2:ねじに用いる鉄の性能(参考:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.90)

・SWCH
SWCH(Carbon Steel Wire for Cold Heading and Cold Forging)は冷間圧造用炭素鋼線です。鉄系では代表的な材料であり、安価です。
SWCH をさらに細かく分類することもできます。

・SCM
SCM(Steel Cr Mo)とはJIS の識別記号で、クロムモリブデン鋼、通称クロモリとも呼ばれる合金です。SCM の長所として、高温環境でも強度低下しない、加工性・焼入性・溶接性・仕上がり面性に優れる、安価などが挙げられます。

3. ねじの選択方法

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 機械要素の学び方
  • 第2回 ねじの種類と素材
  • 第3回 ねじの加工方法
  • 第4回 ねじトラブルの原因と対策
  • 第5回 ねじ材料の選択と評価
  • 第6回 ねじの接地対策と締付トルク・軸力

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