ニーズに合わせたゴム材料の作り方|ゴムの基礎知識6

ゴムの基礎知識

著者:東京理科大学 名誉教授 伊藤 眞義

前回は、3つのゴム材料の物性評価を行いました。今回は、各種特性や使用環境など、ニーズに合わせたゴム材料を作るための方法を、解説します。例えば、寒冷地での使用に耐えられるゴム製品のニーズがあった場合、耐寒性に優れたゴム材料を作る必要があります。こうした特定の物性を高めたゴム製品を作るための方法を、原料ゴム・配合剤の選択、架橋構造の制御という3つの工程ごとに説明します。

第6回「ニーズに合わせたゴム材料の作り方」を解説していきます。

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1. 原料ゴムの選択

耐油性、耐寒性、電導性、力学特性など、特定の物性を強調したゴム材料が必要な場合、基本的には原料ゴムと配合剤の選択でニーズに応えることができます。この作業を行う前に検討すべきことは、ゴム製品の使用環境を理解することです。

ウレタン系ゴムは、化学結合の違いにより、ポリエステル系とポリエーテル系に分けられます。ゴム製品が常に高温水にさらされる環境で使用される場合、ポリエステル系のゴムは高温水による加水分解で、ボロボロになってしまいます。この場合には、同じウレタン系でも、ポリエーテル系を選択する必要があります。耐油性の高い原料ゴムであるNBR(ニトリルゴム)は、ゴム分子鎖中のニトリル基量が増加するにつれて、耐油性が増加します。しかし耐寒性は逆に低下するので、寒冷地では使用できません。天然ゴムに類似した構造の合成ゴムに、IR(イソプレンゴム)があります。基本物性は天然ゴムに似ていますが、高ひずみ下では力学特性に違いが認められます。高ひずみ下で高い力学特性が要求される場合には、イソプレンゴムではなく天然ゴムを選択する必要があります。

多くの原料ゴムは、ゴム分子鎖中に架橋構造を形成するために必要な、化学的に不安定な結合(二重結合)を含んでいます。この結合は、熱や光でダメージを受けやすく、ゴム製品の劣化につながります。ゴム製品が屋外で使用される場合、紫外線の影響を受けるので、この結合量がなるべく少ない原料ゴムを選択します。

ゴム製品の使用環境に対応できる原料ゴムの一例を、表1に示しました。HNBR(水素化ニトリルゴム)は、耐油性をキープしながら、ゴム分子鎖中の二重結合量を減らすことで、耐候性を付与した原料ゴムです。原料ゴムが有する基本的特徴は、ゴム分子鎖の化学構造と密接な関係があります。なお、ゴム分子鎖の屈曲性が高いほど耐寒性に優れるとともに、反発弾性率も高くなります。

ニーズに応える原料ゴム選択
表1:ニーズに応える原料ゴム選択(伊藤眞義、図解入門 よくわかる 最新ゴムの基本と仕組み、秀和システム、2009年、P.139を基に作成)

2. 配合剤の選択方法

特定の物性を引き出す上で、特に重要な配合剤は、充填剤です。充填剤は、補強性充填剤、非補強性充填剤および機能性充填剤の3つに大別されます。

補強性充填剤は、主として材料の力学特性を向上させるために使用されます。ゴム分子鎖と充填剤の間で強い相互作用が働き、ゴム溶剤に不溶のゴム成分(バウンドラバー構造、参考:第5回)が形成されることにより、力学特性が向上すると考えられています。相互作用の大きさは、充填剤の種類に依存します。とりわけカーボンブラックは、汎用充填剤の中で最も大きい相互作用を示します。カーボンブラックには、粒子の大きさや粒子の凝集状態が異なる多数の種類があり、補強性の目安となるバウンドラバー量はこれらに大きく依存します。一方、省エネルギータイヤの充填剤として使われるシリカの場合、ゴム分子鎖との相互作用は比較的小さいため、ゴム分子鎖とシリカを化学的に結合させるカップリング剤が必要です。シリカ粒子表面にあるシラノール基が結合点となります。この基が多いと粒子同士が凝集しやすく、原料ゴム中での均一分散が困難になるため、この点に関する検討が必要となります。非補強性充填剤は、主として増量の目的や加工性改善のために用いられるもので、ゴム材料の物性にはほとんど影響を与えません。

機能性充填剤は、ゴム材料に導電性や磁性など、特殊な機能を付与するために用いられます(表2)。充填剤の機能を効果的に発現させるためには、充填剤の形状、サイズ、配合量などのほかに、粒子表面処理など複合界面での相互作用を考慮する必要があります。

機能性充填剤の一例
表2:機能性充填剤の一例(編集・出版:一般社団法人日本ゴム協会、新版 ゴム技術の基礎(改訂版)、2002年、P.196を基に著者作成)

3. ニーズに応える架橋構造制御方法

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ゴムとは
  • 第2回 ゴム材料のメリットとデメリット
  • 第3回 原料ゴムの特性と種類
  • 第4回 ゴム材料・ゴム製品の製造工程
  • 第5回 ゴム材料の物性
  • 第6回 ニーズに合わせたゴム材料の作り方
  • 第7回 ゴム材料が抱えている課題

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