前回は、ゴム材料・ゴム製品の3つの製造工程について解説しました。今回は、3つのゴム材料の物性評価を行います。純ゴム系材料、充填剤系ゴム材料、複雑系ゴム材料の材料別に見ていきます。
第5回「ゴム材料の物性」を解説していきます。
1. 純ゴム系材料の物性
純ゴム系材料とは、原料ゴムに架橋構造を形成したものです。純ゴム系は基本的に透明あるいは半透明で、小さい力でもよく伸びる特性があります。実際の製品としては、輪ゴム、手袋などに使用されています。
純ゴム系の物性は、主として原料ゴムの物性と架橋構造に支配されます。基本物性(耐寒性、耐熱性、耐薬品性、耐候性など)は、原料ゴムの物性と原則として類似します。力学特性や疲労特性、耐久性などは、架橋構造と密接に関連します。架橋密度(単位体積当たりの架橋点数)が同じでも、反発弾性率は原料ゴムによって異なります。例えば、ブタジエンゴムは高い反発弾性率を示すのに対し、ブチルゴムは低い値を示します。それらの特性を生かし、用途によって材料を選択し、各種ゴム製品が作られます。
図1に、応力-ひずみ曲線を示します。材料の弾性率(図1グラフの初期傾きから算出できる値)は、架橋密度の増加とともに増加します。強度も原則として、弾性率の増加とともに増加します。なお、図1の応力-ひずみ曲線中の斜線で示した面積を、抗張積といいます。この値は、引張応力が大きく、かつ最大ひずみが大きいほど大きい値を示すので、原料ゴムの分子量が大きいほど大きい値を示すことになります。分子量増加にともない、ゴム分子鎖1本当たりの架橋点数が増加し、同一架橋密度の場合、ゴム分子鎖の外力による引き伸ばし効率が良くなるためです。この抗張積は、材料の持つ破断エネルギーの推定に利用できます。
架橋構造は、主として硫黄架橋と非硫黄架橋に大別されます。これらの形成には、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、スコーチリターダ(早期架橋を制御する薬品、参考:第4 回)が用いられます。硫黄架橋物は、非硫黄架橋物と比較して、一般的に破断強度が高く、耐疲労特性と対屈曲き裂性に優れていますが、耐熱酸化性が低く、高温での圧縮永久ひずみや残留伸びが大きいという欠点があります。そこで硫黄架橋では、ゴム分子鎖間をつなぐ硫黄の数を加硫促進剤とスコーチリターダの組み合わせなどで調整し、上記の欠点をある程度改良する場合があります。
2. 充填剤系ゴム材料の物性
充填剤系ゴム材料とは、架橋構造の形成および充填剤の配合を行ったゴム材料のことです。充填剤系は不透明、もしくは黒および有色で、最大ひずみは小さいものの、強度が高く、産業用資材に適した物性を有しています。製品では自動車用タイヤ、ゴムパッキン、ゴムホースなどに使用されています。
充填剤系の物性は、前述の純ゴム系材料の物性に、充填剤配合で発現する物性が加わります。純ゴム系材料中に形成されている架橋構造に、ほとんど影響を与えないような機能性充填剤、例えば金属粉、顔料、マイカ(雲母、鉱物)などを配合した材料では、純ゴム系材料の物性に、単純に充填剤の特性が加算された物性が得られます。一方、架橋構造を強化する充填剤の代表であるカーボンブラックを配合した場合には、充填剤周辺に特殊な構造が発現し、これが材料の力学特性に大きな影響を与えます。このカーボンブラック周辺に形成される、特殊な構造をバウンドラバー構造(図2)と呼びます。
バウンドラバー構造とは、カーボンブラック粒子表面に多数のゴム分子鎖が集合し、その集合密度がカーボンブラック表面に近いほど高くなっている構造です。このような構造形成に参加しているゴム分子鎖は、密度が高いため自由な運動ができず、束縛状態にあります。束縛状態が厳しくなれば、ゴムは硬い状態(弾性率が増加)に変化します。従って、カーボンブラックを配合した材料では、ゴムよりも弾性率の大きいカーボンブラックと硬いゴム相の発現で、弾性率が大幅に増加します。弾性率の増加に伴い、強度も増加します。しかし硬いゴム成分の存在により、破断伸びの値は純ゴム系材料に比較して小さくなります。なお、カーボンブラック、シリカ(ケイ素系無機物質)のように、弾性率や強度などの力学特性を改善できる充填剤を、補強性充填剤といいます。
3. 複雑系ゴム材料(熱可塑性エラストマーなど)の物性
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ゴムとは
- 第2回 ゴム材料のメリットとデメリット
- 第3回 原料ゴムの特性と種類
- 第4回 ゴム材料・ゴム製品の製造工程
- 第5回 ゴム材料の物性
- 第6回 ニーズに合わせたゴム材料の作り方
- 第7回 ゴム材料が抱えている課題