前回は、ゴム材料のメリットとデメリット、その克服法を説明しました。今回は、原料ゴムにフォーカスを当て、その特性や種類を紹介します。
第3回「原料ゴムの特性と種類」を解説していきます。
第3回もくじ
1. 原料ゴムに求められる特性
ゴム材料は、原料ゴム中に架橋構造を形成させた純ゴム架橋物と、これに充填剤を配合した充填系ゴム架橋物に大別されます。充填剤を配合する主な目的は、材料に特殊な機能を付与することです(参考:第2 回)。原料ゴムの基本特性は、原料ゴムを構成している高分子鎖の化学構造と、その長さ(分子量)および分子量分布に左右されます。一方、耐熱性・耐寒性・生体適合性などのゴム材料の基本的特性は、主に原料ゴムと架橋構造に左右されます。
分子量とその分布は、原料ゴムの加工特性と材料の力学特性に影響を与えます。一般に分子量が大きいほど、溶融粘度が高くなるため、金型内での流動性が低下するなど加工性が低下します。また、分子量の増加とともに、材料の強度は増加します。加工性と力学特性のバランスは、分子量分布で取ることができます(図1)。
ゴム材料の基本特性であるゴム弾性は、原料ゴム中に架橋構造を形成させることでより顕著になります。従って原料ゴムは、架橋構造を形成できる化学構造を有していなければいけません。最も一般的な構造は、分子鎖内に二重結合を含む構造です。二重結合付近では分子鎖内にラジカル(不対電子を持つ原子や分子、イオンのこと。遊離基)が発生しやすく、反応性に富むようになります。これを利用して、分子鎖同士を直接あるいは間接的に、化学的に結合させます。このようにしてできた構造を、架橋構造と呼びます。この構造により、分子鎖に力が働いても分子鎖は分離しなくなります。その結果、力による分子鎖変形が効率的に行われるようになり、エントロピー弾性が顕著になります。
架橋構造の形成には、100 年以上も前に発見された硫黄を用いる方法が、今も活用されています。しかしその反応機構は、完全には解明されていません。現在提案されているポリイソプレンと硫黄の反応例を、図2 に示しました。最近では硫黄に代わる物質の利用や、分子鎖の化学構造制御により、種々の架橋構造が形成できるようになっています。
架橋構造の発達程度は、架橋密度という物理量で表します。架橋密度が高くなるにつれて、ゴム弾性の弾性率が増加し、硬いゴム材料になります。
2. 原料ゴムの種類
原料ゴムは、非常に多くの種類が存在します。日本工業規格(JIS)では、原料ゴムの化学構造(主鎖の構造)で分類し、さらにモノマーの化学名の頭文字と化学構造から、略号を定めています(表1)。
国内の全ゴム製品のうち、タイヤ類の生産量は8 割を超えています。第1 の分類は、タイヤ原料に使われる汎用ゴムと、それ以外の目的に使用される特殊ゴムです。汎用ゴムには、天然ゴム(NR)、合成ゴムであるイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが分類されます。一方、汎用ゴムよりも耐油性・耐熱性・対候性などを改善した合成ゴムである特殊ゴムには、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)などがあります。
なお、例えば同じNBR でも、市販品の特性はさまざまです。NBR は、1 本の高分子鎖中に多数のアクリルニトリルとブタジエンモノマーが組み込まれたものです。両者の比率を変えることで、耐油性や耐寒性が異なる、数種類のNBR が商品化されています。
U グループに含まれるウレタンゴムも、高分子鎖中に組み込み可能なモノマーの種類が多く、多種類のウレタンゴムが市販されています。ウレタンゴムは、ポリウレタンの一種で、その化学構造によりプラスチックの特性を有するもの(ポリウレタン)とゴムの特性を有するもの(ウレタンゴム)があります。また、R グループのIR は、NR とほぼ同じ化学構造を有しています。しかし、その力学特性に相違があるため、NRの優れた力学特性を期待してIR を使用することはできません。
3. 特殊な原料ゴム
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ゴムとは
- 第2回 ゴム材料のメリットとデメリット
- 第3回 原料ゴムの特性と種類
- 第4回 ゴム材料・ゴム製品の製造工程
- 第5回 ゴム材料の物性
- 第6回 ニーズに合わせたゴム材料の作り方
- 第7回 ゴム材料が抱えている課題