ゴム材料のメリットとデメリット|ゴムの基礎知識2

ゴムの基礎知識

著者:東京理科大学 名誉教授 伊藤 眞義

前回は、ゴム特有の特性である弾性変形を実現している構造や、この特性を多種多様に変化させられる理由など、ゴム材料の基礎を解説しました。今回は、ゴム材料のメリットとデメリット、さらにデメリットを克服する方法を説明します。

第2回「ゴム材料のメリットとデメリット」を解説していきます。

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1. ゴム材料のメリット

ゴム材料の最大のメリットは、原料ゴム本来の弾性変形の特性に、幅広い特徴・機能を付加できることです。このメリットは、原料ゴムが高分子物質であることと、さまざまな機能を有する微粒子を原料ゴムに混合(配合)することによって生まれます(図1)。

幅広い特徴・機能を付加できるゴム材料
図1:幅広い特徴・機能を付加できるゴム材料

原料ゴムが、天然ゴムと合成ゴムに大別できることは、前回説明しました。合成ゴムは、1 本の分子鎖中に種々の特性を発現させるべく、選択したモノマーを組み込むことができます。これを利用して、耐寒性・耐熱性・耐薬品性など各種耐性を持った原料ゴム、生体適合性や血液適合性のある医療用原料ゴム、生分解性・低反発性など特異な特徴を有する原料ゴムを得られます。

さらにゴム材料は、充填剤の選択により、さまざまな機能性材料になります。例えば、弾性率、強度、残留ひずみなどの力学的特性に関する要求に対しても、充填剤の選択や架橋構造を制御することで、対応できます。電気伝導性を有する充填剤の配合により、導電性ゴム材料も比較的簡単に作ることができます。原料ゴムと充填剤の組み合わせで、材料が振動エネルギーを熱に変換する機能を持つ制振性ゴム材料を得ることも可能です。低分子化合物で構成された物質では、ゴムのような弾性を発現できません。また、ゴムと似たような弾性変形の特性を持つ金属ばねでも、上述のような機能は発現させられません。ゴムは非常にユニークで、代替品がない材料といえます。

ゴムの第2 のメリットとして、他材料との複合化により、特異な物性を発現できる点が挙げられます。例えば、地震による建造物の被害軽減に役立つ、免震用積層ゴムです。ゴム板と金属板を交互に張り合わせた構造(図2)で、これを建造物の基礎部に設置すると、建造物の揺れの周期を長くすることができます。地震の揺れを抑えることはできませんが、揺れの周期を長くすることにより、建造物に働く力が小さくなり(免震効果)、被害の軽減が期待できます。

免震用積層ゴムの構造図
図2:免震用積層ゴムの構造図

2. ゴム材料のデメリット

ゴム材料には、3 つのデメリットがあります。材料が劣化しやすいこと、劣化時期の予測が難しいこと、使用可能な温度範囲が他材料と比較して狭いことの3 つです。

最大のデメリットは、熱や光による劣化が発生しやすい点です(図3)。原料ゴムとして使用している高分子物質(シリコーンゴムを除く)は有機化合物であり、炭素原子を骨格に、他原子が化学的に結合して分子鎖を形成しています。分子鎖中における各原子間の結合エネルギーは小さく、熱や光などの外的エネルギーにより切断が起こります。さらに大気中のオゾンや、水道水に殺菌剤として使用されている塩素も、化学結合の切断に関与するので厄介です。この切断は、架橋構造を形成している化学結合部でも発生します。切断した部分は化学的に不安定であり、そこを起点として材料内部でさまざまな化学反応が発生します。このような化学反応が材料の特性を低下させ、劣化を発生させます。これは高分子物質の本質的な問題で、例えば金属材料と比較すると、大きなデメリットだと認めざるを得ません。

劣化したゴム部材の例
図3:劣化したゴム部材の例

2 つ目のデメリットは、ゴム材料の寿命予測が簡単にできないことです。これは材料の劣化が、化学反応によって引き起こされているからです。化学反応の速度は、温度や湿度などの環境条件に依存するため、定量的扱いが困難なことや、複数の化学反応が同時に進行している場合が多いことなどが、劣化の解析を困難にしています。

3 つ目のデメリットは、ゴム材料を使用できる温度範囲が限られている点です。ゴム材料は、材料の主成分である原料ゴムが、液体状態を保てる温度範囲内で使用する必要があります。使用可能な温度範囲は、基本的にガラス転移温度以上、さらに原料ゴムを構成している分子鎖の分解温度以下となります(参考:第1 回)。この温度範囲は、他の材料と比較すると、極めて狭いものといえます。上限温度の低さは、高分子物質共通の問題です。しかし下限温度の高さは、ゴム材料特有の問題です。

3. ゴム材料のデメリット克服方法

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ゴムとは
  • 第2回 ゴム材料のメリットとデメリット
  • 第3回 原料ゴムの特性と種類
  • 第4回 ゴム材料・ゴム製品の製造工程
  • 第5回 ゴム材料の物性
  • 第6回 ニーズに合わせたゴム材料の作り方
  • 第7回 ゴム材料が抱えている課題

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