前回は、RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)の特徴と機能、その普及の背景について説明しました。今回は、RPAの導入を検討している方に向けて、導入のメリットに加え、実際の導入事例を紹介します。また、RPA がどのような業務に向いているかを、具体例を交えて解説します。
第2回「RPA導入のメリット」を解説していきます。
第2回もくじ
1. RPA 導入のメリット
RPA のメリットは、以下の 4 つの点が挙げられます。
・人件費を削減できる
・ミスをしない、サボらない、辞めない
・24 時間稼働させられる
・単純作業が減少し、付加価値の高い業務に集中できる
RPA とはいわば、あまり機転は利かないけれど、教えられたことは愚直に、サボらず作業をし続ける新入社員です。最初は教えるのに時間がかかるものの、一度覚えてしまえば愚直にミスなく作業し続け、サボることもありません。業務量が増えた場合、人材を採用するとなればその分、人件費が必要になります。しかし、ロボットには必要ありません。少しの電気代だけ負担すれば、24 時間 365 日、休みなく働いてくれます。さらに、プログラムを作りさえすれば、いつまでもその業務を処理してくれる点も、RPA のメリットです。
また、社員の場合は、いつか辞めてしまうかもしれません。社員ひとり1 人にはそれぞれ事情があるため、離職率をゼロにすることは不可能です。1 人でも社員が辞めると、その穴埋めをするには相当な時間がかかります。新しい社員に仕事を教えるには、他の社員の時間も割かなければなりません。その点、RPA ならそうした心配もありません。RPA の導入が進むと、複数のプログラムを同時に走らせて、業務の効率化を図ることになります。つまりこれは、人間が RPA というロボットを何人(何台?)も雇うようなものです。
一方で、AI 技術の進展により、懸念されていることがあります。それはAI が仕事を奪い、その業務を担当していた人が職を失うのではないかということです。しかし、それは大きな誤解です。RPA は大量の業務を短時間でこなすことができ、社員はこれまで担当していたその業務から解放されることになります。ロボットを使いこなすことで、より効率化を目指すためには何をすればいいのかなど、クリエイティブな作業に時間を割くことが可能になります(図 1)。
多くの会社にとって人材は貴重な経営資源であり、その人材のパフォーマンスを最大限に発揮できる環境の整備なくして、会社全体の中長期的な発展はないでしょう。RPA は、人にしかできないことに人材を集中させてくれるツールであるともいえます。
2. 現在の導入事例
熊本県の中央部に位置する宇城市の例で導入事例を紹介します。宇城市は、人口約6万人の自治体です。同市では、これまで職員が手作業で行っていた業務を、RPA で自動化する試みをしました。1 つは、ふるさと納税、もう1 つは時間外申請業務についてです。ふるさと納税では、電子メールで受付をしたデータのダウンロードやアップロードを自動化し、時間外申請では、時間外勤務(残業)手当の申請を自動化しました。これにより、職員の負担は大幅に改善されたといいます。
特に、時間外申請は、これまで各部署が紙ベースで申請し、総務課が手作業で集計処理を行っていたため、処理が必要な時期には人手が必要でした。そこで、各自が申請内容をシステムに直接入力し、RPA によって自動集計を行うようにしました。これにより総務課職員の作業が不要となり、職員の負担は大幅に削減されたそうです。
これら 2 つの業務を自動化したことにより、同市は年間で 3,632 時間の業務削減が可能になると試算しました。今後は、RPA を活用した本格的な業務の効率化を検討しています。導入が検討されているのは、住民異動(転入・転出・世帯主変更など)、介護保険納付書の打ち出し、戸籍の附票謄本・抄本の写しの交付、後期高齢者医療保険証の発行などです(参考:総務省、地方公共団体における行政改革の取り組み、2018年 3月28 日)。
3. RPA 向きの業務とは
全5回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 RPAとは
- 第2回 RPA導入のメリット
- 第3回 RPA導入事例
- 第4回 製造業におけるRPA導入
- 第5回 RPAの運用と今後の見通し