転がり軸受の潤滑|転がり軸受の基礎知識4

転がり軸受の基礎知識
著者:東京理科大学 理工学部 機械工学科 教授 野口 昭治

前回は、転がり軸受の寿命を解説しました。今回は、転がり軸受の潤滑について解説します。潤滑の一般的な目的は、摩擦を小さくすることです。ただし、転がり軸受においては、長期間安定した性能を維持することが潤滑の目的に挙げられます。

第4回「転がり軸受の潤滑」を解説していきます。

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1. 転がり軸受の潤滑目的と潤滑剤

第1回で説明したように、転がり摩擦の摩擦係数は非常に小さいため、潤滑を行うと粘性抵抗や撹拌(かくはん)抵抗が生じ、摩擦係数は大きくなってしまいます。そのため、転がり軸受を潤滑する目的は、転がり面、および滑り面に油膜を形成し、金属同士が直接接触するのを防ぎ、表面損傷を防ぐことです(軸受内部には滑り摩擦をする箇所があり、そこでは摩擦を低減させる)。これ以外にも、転がり軸受の潤滑は、以下の目的で使用されています。

・摩擦熱の排出
・軸受寿命の延長
・さびの防止
・異物の浸入防止・排出

転がり軸受に使用される潤滑剤には、以下の3種類があります。

・潤滑油:液体状、最も一般的に使用されている
・グリース:半固体状、転がり軸受では多く使用されている
・固体潤滑剤:固体状、表面に皮膜を形成させるなどして使用されている

潤滑剤の働きを十分に発揮させるためには、使用条件に適した潤滑剤と、潤滑方法の選定が重要になります。固体潤滑剤は特殊な用途なので、本稿では、潤滑油とグリースについて解説します。

2. 潤滑油

潤滑油は、主成分となる基油(粘度などの物性に影響を与える基材)と、添加剤(潤滑効果を高めるために加えられる薬品や物質)から構成されています。液体で流動性が高いため、転がり軸受内部の隅々にまで浸透します(図1)。

潤滑油は転がり軸受内部の隅々にまで浸透する
図1:潤滑油は転がり軸受内部の隅々にまで浸透する(イメージ)

潤滑効果が高いため、潤滑剤としては最も多く使用されています。また、循環させて使用することで、軸受から発生する熱や、内部で生じた摩耗粉などを排除する効果もあります。

潤滑油には、スピンドル油、マシン油、タービン油などの鉱油(石油が原料)が多く使われます。また、高温や低温領域では、人工的にブレンドした合成油が使われます。

潤滑油の流動性を示す尺度として、粘度があります。粘度の値が小さいと流動しやすく、値が大きいと流動しにくくなります。潤滑油の粘度は、潤滑性能を決定する重要な物性です。粘度が低すぎると油膜形成が不十分となり、軸受表面が損傷しやすくなります。逆に、粘度が高すぎると、粘性抵抗が大きくなり、温度を上昇させ、摩擦損失を増大させます。一般的な選定としては、低トルクや高回転用途には低粘度潤滑油、重荷重や低速用途には高粘度潤滑油となります。

転がり軸受においては、形式ごとに必要な粘度として、表1のような目安があります。

転がり軸受の必要粘度
表1:転がり軸受の必要粘度(引用:転がり軸受入門ハンドブック、CAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.63)

また、潤滑油は液体なので、温度によって粘度は変化します。図2に、潤滑油粘度の温度特性を示します。軸受が稼働する温度において、必要な粘度を確保する必要があります。

潤滑油の粘度-温度線図
図2:潤滑油の粘度-温度線図(引用:転がり軸受入門ハンドブック、CAT.No.9012-7/J、NTN株式会社、P.63)

潤滑油の粘度は、基油によって決まります。基油には、潤滑効果を高める目的で多くの添加剤が入っています。摩擦を低減させる油性剤、摩耗を少なくする摩耗防止剤、耐焼き付き性能を高める曲圧剤などが代表的です。用途によっては、清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤などを加えることもあります。

3. グリース

4. シールドとシール

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 転がり軸受とは
  • 第2回 転がり軸受の種類と特徴
  • 第3回 転がり軸受の寿命
  • 第4回 転がり軸受の潤滑
  • 第5回 転がり軸受の取り付け方法
  • 第6回 転がり軸受の損傷と状態監視

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