前回の連載では関節自由度、手先自由度、冗長性などの考え方を解説しました。これらの内容を踏まえ、今回はロボットマニピュレータの運動学について説明します。運動学は、マニピュレータの位置制御を行う上で、切っても切り離せない重要な要素です。
第5回「マニピュレータの運動学」を解説していきます。
1. ロボットマニピュレータの位置制御
ロボットマニピュレータの位置制御とは、エンドエフェクタの関節角度や位置姿勢を希望する値に制御することです。実際の制御では、まず希望する関節角度やエンドエフェクタの位置姿勢を計測・算出します。そのデータに基づき、関節部に組み込まれたアクチュエータを動かし、関節角度・位置姿勢を希望する値に制御します。
ロボットマニピュレータの位置制御のポイントは、センサの選定です。カメラを用いて、エンドエフェクタの位置姿勢を直接計測する方法があります。しかし、カメラの計測は分解能が低いことが多く、タイムラグや外環境の光量の変化で画像が受ける影響も大きく、カメラ単体では使用しづらい場合があります。そこで、関節角度センサが多く用いられます。関節角度センサを用いる場合に重要なのが、エンドエフェクタの位置姿勢と関節角度を幾何学的(図形的)に捉えることです。
図1 のように、x-y 平面内にある部品が存在する場合を考えてみましょう。このロボットの目的は、エンドエフェクタを部品の目標位置まで位置制御し、部品を把持する(しっかりつかむ)ことです。説明を簡単にするために、部品とエンドエフェクタの位置は点と見なし、回転も考慮しません。
もし、エンドエフェクタを目標位置に動かした際の関節角度が分かっていれば、各関節の角度をそれぞれの目標角度に制御することで、エンドエフェクタを目標位置に位置制御できます。
2. 順運動学と逆運動学
マニピュレータの位置制御で重要なのは、エンドエフェクタの位置と関節角度の幾何学的な関係を知ることです。この関係を求める学問を運動学といいます。運動学は、図2 のように順運動学と逆運動学の2 つに分類されます。
1:順運動学とは
順運動学はマニピュレータの関節角度(図2 左のθ₁、θ₂が分かっている時に、エンドエフェクタの位置姿勢(手先位置)を求める学問です。リンクの長さやエンドエフェクタの形状などの情報と、サイン、コサインなどの三角関数の計算を組み合わせ、目標位置の座標を求めます。
2:逆運動学とは
逆運動学は順運動学の逆で、エンドエフェクタの目標位置・姿勢(図2右のx,y)が分かっている場合に、それを達成するための関節角度を求める学問です。リンクの長さやエンドエフェクタの形状情報と、アークサイン、アークコサインなどの逆三角関数などを組み合わせ、計算式を求めます。
3. 運動学の特徴とダイレクトティーチング
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ロボットマニピュレータとは?
- 第2回 ロボットマニピュレータのアクチュエータ
- 第3回 ロボットマニピュレータのセンサ
- 第4回 ロボットマニピュレータの自由度
- 第5回 マニピュレータの運動学
- 第6回 力制御とインピーダンス制御