ロボットマニピュレータを制御する上で、目標とする運動を、実際の手先が実現できない場合があります。原因は、関節可動域が影響している可能性と、目標運動に必要な自由度より実際の手先の自由度が低い場合があります。マニピュレータの運動制御を考える上で、手先と関節の自由度は必要不可欠な要素です。今回はマニピュレータの自由度について解説します。
第4回「ロボットマニピュレータの自由度」を解説していきます。
第4回もくじ
1. 自由度とは
自由度とは、独立して自由にできる度合いを表します。ロボットマニピュレータにおける自由度とは、独立変数の個数と解釈できます。独立変数とは、他のパラメータから影響を受けずに値を変化できる数値のことです。簡単な例を用いて、さまざまな運動パターンにおける自由度の3つの概念を説明します。
1:並進運動の自由度
図1 左のように、点と見なせる物体A がx 軸上にあり、この軸上を運動する場合を考えてみましょう。回転運動を伴わない(あるいは考慮しない)運動を並進運動といいます。このとき物体A の位置は、1 つの変数x のみで表現でき、物体A の運動は1 自由度を持っています。
次に、物体A がx-y 平面上に存在するとします(図1 中央)。この場合、物体A の運動はx とy の2 つの変数で表現でき、これを2 自由度といいます。同様に、x-y-z 空間内に物体A が存在する場合(図1 右)には、物体A の運動はx、y、z の3 自由度となります。
2:回転運動の自由度
次に、回転する場合を考えてみましょう。図2 左のように、1 本の棒に回転軸が取り付けてあり、角度θ方向に回転するとします。この場合、独立変数は1 つなので、1 自由度です。さらに図2 中央、右のように、回転の2 自由度、3 自由度も成り立ちます。並進運動を伴わない回転だけの運動を、回転運動といいます。
3:並進回転運動の自由度
並進運動と回転運動が同時に起こる状態を考えてみましょう。図3 のように平面上にプレートが存在するとします。プレートの運動は、プレート重心位置(x,y) と回転角θで表現可能です。並進運動が2 自由度、回転運動が1 自由度を有することから、合計3 自由度となります。このような並進回転運動は、実際の物体の運動で多くあります。
では、拘束を受けていない物体の自由度は、いくつになるでしょうか。図4 に示すように、重心の並進運動が3 自由度と、3 つの回転軸の回転運動が3 自由度の合計6 自由度になります。
2. 関節自由度と手先自由度
マニピュレータは通常、複数の関節で構成されています。この場合、関節の数とそれぞれの関節が有する自由度の数によって、関節自由度と手先の運動自由度が決まります。産業用ロボットなどのマニピュレータでは、多くの場合において関節自由度をK、実際に実現される手先の自由度をEとしたとき、K=Eとなります。
図5 のようなマニピュレータを考えてみましょう。1 自由度の回転関節2つで構成されているので、関節自由度は2 自由度です。この場合、θ 1 とθ 2 を適切に制御することで、マニピュレータに接続された手先先端の点はx 方向とy 方向への運動が可能です(並進2 自由度)。
マニピュレータの手先位置を制御したい場合には、エンドエフェクタの目的の運動に必要な自由度と運動の種類(並進か回転かなど)、実際にエンドエフェクタが実現可能な自由度と種類などを考慮する必要があります。例えば、図6 左のようなマニピュレータで、つかんだ物体の姿勢を水平に保ったまま、状態A から状態B に移動できるでしょうか。このエンドエフェクタに実現可能な運動は2 自由度で、つかんだ物体の特定の位置(重心位置など)は平面内で制御できます。しかし図6 右のように、物体の回転角は自由に制御できないため、物体の角度は位置によって従属的に変化し、物体は水平を保てず斜めの姿勢になります。水平移動という要求を満たすには、関節自由度を増やすなどの工夫が必要です。
3. 関節の冗長性
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ロボットマニピュレータとは?
- 第2回 ロボットマニピュレータのアクチュエータ
- 第3回 ロボットマニピュレータのセンサ
- 第4回 ロボットマニピュレータの自由度
- 第5回 マニピュレータの運動学
- 第6回 力制御とインピーダンス制御