ターボポンプの仕様|ポンプの基礎知識4

ポンプの基礎知識
著者:防衛大学校 機械システム工学科 元教授(芝浦工業大学 UniKL-JUPプログラム 非常勤講師)西海 孝夫

前回は、ターボポンプの構造と分類を紹介しました。今回は、ターボポンプの重要な仕様である吐出し量と揚程(ポンプが液体を押し揚げる能力)、液体の種類、設置場所について解説します。どのようなポンプを用いるかは、ユーザーがどの程度の吐出し量(流量)と揚程(圧力)を必要とするか、また液体の種類、設置場所や用途で決まります。これらの仕様にもとづいて、原動機(電動機、エンジンなど)の動力、ポンプ形式、回転速度などが選定されます。

第4回「ターボポンプの仕様」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 吐出し量

吐出し量Qは流量とも呼ばれ、ポンプが単位時間Δt当たりに吐出す体積Vなので、第2回でも述べたように、次式で定義されます。

ポンプの吐出し量は原動機の回転速度で決まり、さらに、吐出し管路に設けられたバルブの開閉によって、吐出し量を設定できます。ポンプの大きさを表現するに当たって、この吐出し量のことをポンプ容量とも呼びます。吐出し量の単位は、国際単位系のSIでは、1秒当たりの立方メートル(m 3 /s )が用いられます。ポンプの容量により異なるものの、一般には(m 3 /min )、(L/min)、(mL/min)などの単位で表示します。なお、ユーザー(使用者・購入者)とメーカー(製造業者・供給者)間の契約で取り決められた吐出し量を、規定吐出し量と呼びます。

2. 揚程

揚程とは、ポンプが液体を押し上げることができる能力のことで、高さ(m)の単位で表します。揚程はポンプの運転によって生じるヘッド(m)であり、単位重量当たりのエネルギー (J/N)です。揚程には、実揚程・全揚程と呼ばれる2つの揚程があります。

図1は、ポンプ装置によって、液体が吸込側タンクからターボポンプを経て、吐出し側タンクに汲み上げられるまでの過程を示しています。ここで、ポンプの主軸を通る中心線は、ポンプ基準面と呼ばれます。

ポンプ装置とターボポンプの揚程
図1:ポンプ装置とターボポンプの揚程(参考:日本機械学会編、機械工学便覧 改定第5版、1968年)

・実揚程
実揚程とは、ポンプが液体を押し上げることができる実際の能力をいいます。図1に示すとおり、吸込側タンクの液面から吐出し側タンクの液面までの高低差h a は、実高さと呼ばれます。実高さは、吸込高さh s と吐出し高さh d の和で表されます。

上式にて、吸込高さh s は吸込液面から測ったポンプ基準面の高さで、ポンプ基準面がポンプ吸込液面より上部にあるときには正の値(+)、下部にあるときには負の値(-)になります。また、吐出し高さh d は、ポンプ基準面から測った吐出し液面の高さで、ポンプ基準面より吐出し液面が上部にあるときには正の値、下部にあるときには負の値となります。

2つのタンクが加圧され、吸込タンク側の液面には圧力p 1 が、吐出しタンク側の液面には圧力p 2 が作用しているならば、実揚程H a は次式で表されます。

すなわち、ポンプ装置における実揚程とは、吐出し液面と吸込液面との間の実高さに、吐出し液面と吸込液面に作用する圧力ヘッド差を加えたものです。両液面に大気圧が作用しているときには、ゲージ圧力ではp 1 =p 2 =0となるので、実揚程は実高さに等しく、H a =h a となります。

・全揚程
全揚程について、図1の吸込口(s)点と吐出し口(d)点の圧力から考えてみましょう。全揚程とは、ポンプの吐出し口の全ヘッドH d と、吸込口の全ヘッドH s との差と定義されています。したがって、全揚程Hは、

となります。これらの全ヘッドは、単位重量当たりのエネルギーであり、第2回でのベルヌーイの式

より、圧力ヘッド、速度ヘッド、位置ヘッドの総和で次式のように表されます。

上の2つの式において、p s 、p d は吸込口および吐出し口でのゲージ圧力(静圧)、v s 、v d は吸込口および吐出し口での断面平均速度、z s 、z d は任意の基準面からの吸込口(s)点および吐出し口(d)点での高さです。したがって、式3、4、5より、全揚程Hは、吐出し口と吸込口の高低差をh p =z d -z s と置けば、

となります。吸込口と吐出し口での管路直径が等しいならば、吐出し量Qは、第2回での連続の式Q=Av(A=流路の断面積)より一定なので、両者の速度はv s =v d となり、もし両者の高さもz s =z d と近似できるならばh p =0 なので、上式より、全揚程Hは、

のように簡単に表せます。吐出し圧力p d や吸込圧力p s の計測には、マノメータ、ブルドン管、圧力変換器などの圧力計が用いられるため、圧力計から管路までの測定孔の形状や配置を考慮して、圧力を補正する必要があります。

次に、全揚程について、図1の吸込側タンク液面(1)点と吐出し側タンク液面(2)点との比較から考えてみましょう。(1)点と(s)点、(d)点と(2)点に、それぞれ損失を考慮した第2回でのベルヌーイの式

を適用すれば、吸込全ヘッドH s と吐出し全ヘッドH d はそれぞれ次式となります。

ここでの圧力p、速度v、高さzの添え字1、2は、吸込側および吐出し側タンクの液面です。また、h ls 、h ld は、それぞれ吸込側タンク液面から吸込口まで、吐出し口から吐出し側タンク液面までの損失水頭です。全揚程Hは、両液面の昇降速度をv 1 =v 2 と近似すれば、式3、6、7より次式が得られます。

上式にてh a は実高さであり、タンク液面の差h a =z 2 – z 1 です。また、h l はポンプの上下流での損失水頭の総和であり、h l =h ls +h ld です。式2と式8から、以下のとおり全揚程Hは実揚程と損失水頭の和として表すことができます。

3. 揚液の性質

4. 用途と設置場所

5. 吸込全揚程

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全10回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ポンプとは
  • 第2回 ポンプのための流体力学の基礎
  • 第3回 ターボポンプの構造と分類
  • 第4回 ターボポンプの仕様
  • 第5回 ターボポンプの選定
  • 第6回 ターボポンプの効率と動力損失
  • 第7回 ターボポンプの性能と運転
  • 第8回 ターボポンプの比速度と特性曲線
  • 第9回 ターボポンプのキャビテーションと吸込み性能
  • 第10回 ターボポンプの理論揚程

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