前回は、ターボポンプの吸込み特性を表すキャビテーションと、NPSHについて解説しました。ターボポンプ内の流れは、極めて複雑です。最終回の今回は、この流れを角運動量の法則を用い単純化して考え、ポンプの理論揚程がどのように得られるかについて考えてみましょう。
第10回「ターボポンプの理論揚程」を解説していきます。
第10回もくじ
1. インペラ内の流れと速度三角形
ターボポンプ内部には、最も重要な構成部品であるインペラが組み込まれ、液体が流れています。図1(a)に、クローズド形のインペラを示します。液体がインペラの中央断面(1)から入り、数枚の羽根で覆われた流路を通り抜け、外周側面(2)へ出ていきます。主軸によりインペラが角速度ωで一定回転し、流体が羽根に沿って相対速度w(運動するインペラを座標にとる速度)で流れます。同図(b)のインペラ内の流れや、同図(c)の速度三角形に見るように、半径rのインペラ内では、この相対速度wと周速度u=rωとのベクトル和から、絶対速度v(固定座標から見た速度)が得られます。まず、羽根の厚さを考慮に入れず、入口および出口での半径r 1 、r 2 、流路幅をb 1 、b 2 とすれば、連続の式より、流量Qは近似的に次式で表されます。
ここで、v r1 、v r2 は、それぞれ断面(1)、(2)での速度の半径方向成分です。
つぎに、密度ρの液体が流量Qで半径r 1 の断面(1)の検査面へ流入し、半径r 2 の断面(2)の検査面から流出することを考えると、インペラが液体に及ぼすトルクTは、角運動量の法則から次式で得られます。
上式にて、v 1 、v 2 は、それぞれインペラの入口(1)、出口(2)での絶対速度、α 1 、α 2 は、これらの絶対速度が周方向と成す角度です。また、断面(1)、(2)での入口と出口の周速度u 1 、u 2 は、それぞれ、
となるので、液体に対して単位時間当たりに成す仕事、すなわち原動機がポンプの主軸に伝達する軸動力L s は、トルクTと角速度ωの積として、式2、式3より、
と得られます。以上は、全ての損失を無視した効率η=100%の理想的なポンプと考えて扱っています。つまり、第6回で述べたとおり、機械損失や漏れ損失、水力損失がなく、流れが無限枚数の羽根に沿う理想的な状態です。
一方で、ポンプが単位時間に与えるエネルギー、すなわち理論的な水動力L th は、第6回の式2においてH=H th∞ と置けば、
となります。
上式のH th∞ は無限枚数羽根での理論揚程であり、損失が全く無い場合でのインペラが液体に与える全ヘッドです。この理論的な水動力L th と、インペラを駆動するために必要な軸動力L s とを等しく置いた場合、ポンプが液体を汲み上げることのできる高さ、すなわち理論揚程 H th∞ は、式4、式5より、
となります。ここで、v θ1 、v θ2 は、それぞれインペラの羽根入口(1)直前と出口(2)直後における絶対速度の周方向成分です。式6は、オイラーの法則あるいはオイラーの理論揚程の式と呼ばれています。同図(c)に示す速度三角形にて余弦定理から、
の関係が断面(1)と(2)で成立するので、上式は、
とも書き表されます。右辺については、
第1項:周速度uによる遠心力の働きで静圧が増加すること
第2項:インペラ内の流路断面形状によって相対速度wが変化して静圧が増加すること
第3項:絶対速度vの二乗差にもとづき動圧が増加すること
を、それぞれ意味しています。第1項のみを取り出してu=rωと置けば
となり、H th∞ =Δhと置けば、第1回で既に紹介した式14と一致します。
2. 理論揚程の特性
全10回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ポンプとは
- 第2回 ポンプのための流体力学の基礎
- 第3回 ターボポンプの構造と分類
- 第4回 ターボポンプの仕様
- 第5回 ターボポンプの選定
- 第6回 ターボポンプの効率と動力損失
- 第7回 ターボポンプの性能と運転
- 第8回 ターボポンプの比速度と特性曲線
- 第9回 ターボポンプのキャビテーションと吸込み性能
- 第10回 ターボポンプの理論揚程