前回は、フランジ面積と変形抵抗の関係に注目して、絞り加工を紹介しました。今回は最終回です。プレス加工の安全対策を解説します。
第9回「プレス加工の安全対策」を解説していきます。
第9回もくじ
1. 安全とは何か?
プレス加工の安全対策について考える前に、安全とは何かを確認しましょう。機械を使った作業では、作業者の安全を確保するためのシステムが必要です。また、安全に関する法令も整備されています。この場合の安全は、人(作業者)は間違える(フールプルーフ)、機械は壊れる(フェールセーフ)という観点で構築されています。言い換えれば、生産システムは人間と機械で構成され、この相互のバランスが崩れたとき、事故が発生するということです。
フールプルーフ: 人間は間違えるという観点に立った、安全に対する考え方。ミスは発生するという前提で、作業者が間違えた操作をしても危険な状態を招かないようにすること。
フェールセーフ: 機械は壊れるという観点に立った、安全に対する考え方。装置やシステムにおいて、誤操作や誤動作による障害が発生しても、常に安全側に制御すること。
次に、身近な例として、自動車の安全運転のためのシステムをイメージしながら、プレス加工における安全確保を考えてみましょう。
このように、安全を確保するためのシステムを理解して、安全作業を行うことが重要です。ただし、絶対に自動車事故を防げるわけではないように、これらの工程を確実に実行したからといって、作業の安全性が保障されるわけではありません。安全は与えられるものではなく、作り上げるものです。その中心は、プレス加工に携わる作業者です。作業者は、プレス機械や金型、被加工材の特性を十分に理解し、安全確保を行う必要があります。
2. 安全装置
プレス加工機械には安全装置が取り付けられています。なぜ、安全装置は必要なのでしょうか? 作業者の身体の一部が、機械の危険な領域に絶対に入らないのであれば、安全装置は必要ではありません。しかし、プレス金型の取り付けや段取り、金型の修正、調整、試作では、危険領域に入る必要があります。このような状況下でも安全を確保するために、安全装置は必要です。安全装置の種類には、ノーハンド・イン・ダイ、およびハンド・イン・ダイがあり、できるだけノーハンド・イン・ダイを志向することが望まれます(図1)。
ノーハンド・イン・ダイ(No Hand in Die): プレス機械で最も危険な金型が上下する範囲に、身体の一部(手など)が入らない方式、または入れる必要がない方式。身体の一部が入らない囲いや金型構造、身体の一部を入れる必要のない専用プレス、材料供給から製品取り出し、金型交換まで自動化されたプレスなど。
ハンド・イン・ダイ(Hand in Die): プレス機械の危険領域に手が存在する場合、作業者の安全をより確保する方式、またはプレス機械が停止するか動かない方式。身体の一部が危険領域に達するまでに、安全が確保された状態を作り出す設計など。
3. 安全距離
4. 安全プレスと安全機構
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 プレス加工とは?プレス加工の3要素とは?
- 第2回 被加工材の特性
- 第3回 プレス機械のトルク能力、公称能力、仕事能力とは?
- 第4回 金型とは何か?なぜ金型が必要か?
- 第5回 プレス加工の種類
- 第6回 せん断加工とは?
- 第7回 曲げ加工とは?
- 第8回 絞り加工とは?
- 第9回 プレス加工の安全対策