曲げ加工とは?|プレス加工の基礎知識7

プレス加工の基礎知識
著者:塑性加工教育訓練研究所 小渡 邦昭

前回は、せん断される面(切り口)の出来栄えに着目しながら、せん断加工を説明しました。今回は、曲げ加工について詳しく解説します。

第7回「曲げ加工とは?」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 曲げ加工の材料の動き

製造現場で、板金の曲げ加工を見たことがありますか。金属製の箱を作る工程では、サイコロの展開図のような金属の薄板を機械で曲げているだけの、非常に簡単な加工のように感じるかもしれません。ところが、実際は複雑な現象が生じています。本稿では、「曲げ角度」は、曲げ製品の内側角度の意味で使用します(図1)。

曲げ製品の内側角度
図1:曲げ製品の内側角度

曲げ加工で起こる複雑な現象を、身近な事例で確認してみましょう。少し厚めの書籍と金属板材料を折り曲げたところを想像してください(図2)。

書籍と金属版の端部形状の比較
図2:書籍と金属版の端部形状の比較

折り曲げた書籍と金属板とでは、端部の形状が異なります。書籍の場合は、端面が斜めに広がり、ページをめくりやすい形状になります。一方金属板では、端部の形状は変わりません。このような違いは、なぜ生じるのでしょうか?

それは、書籍と金属板の素材の違いにあります。書籍の紙は、大きさや厚さが簡単に変化することはありません。一方、金属板では材料に変化が起こっています。例えば、腕を曲げると、肘の外側は伸び、逆に内側はしわが寄って縮みます(図3)。

腕の曲げ伸ばし
図3:腕の曲げ伸ばし

同じ現象が、金属板の曲げ加工にも生じています。曲げた金属板の外側は引っ張られ、内側は圧縮されています。この相反する力の作用が、わずかな板厚の中に同時に存在しています。また、伸び(引っ張り)も縮み(圧縮)もしない、両者の境目となる部分も存在します。この境目を、中立面(中立線)と呼びます。

金属材料の特性に、加工前後(塑性変形の前後)における体積一定の原則があります(第2回参照)。この原則に基づくと、金属板の曲げ加工時には、引っ張りが生じた箇所は伸び、板幅や板厚が減少する現象と、圧縮が生じた箇所は縮み、板幅や板厚が増加する現象が同時に起きています。

さらにこれらの変形には、金属板が元の平らな板材に戻ろうとする弾性変形が含まれています。つまり、引っ張りが生じた箇所では縮もうとする力が、圧縮が生じた箇所では伸びようとする力が働いています。その結果、曲げ角度90度で製品を曲げ加工したはずが、実際は92度になるスプリングバックという現象が生じます(図4)。

スプリングバックの原理
図4:スプリングバックの原理

2. 加工プロセスと加工荷重

図5に、曲げ加工プロセスにおける荷重と曲げ角度の変化を示します。曲げ加工プロセスでは、3種類の曲げで、90度の曲げ角度を得られます。自由曲げ(エアー)、底突き曲げ(ボトミング)、矯正曲げ(コイニング)です。

曲げ加工プロセスにおける荷重と曲げ角度
図5:曲げ加工プロセスにおける荷重と曲げ角度

自由曲げは、荷重の変化に敏感に変化するため、正確な90度を得ることは困難です。また、矯正曲げは、荷重の変化には鈍感なものの、非常に大きな曲げ荷重を必要とします。そのため一般的には、底突き曲げを利用します。

曲げ加工機械の選択には、加工荷重の計算式を用います。このとき荷重計算は、たわみ同様に、はりで考えます。図6にはりとたわみを示します。はりとは、建築物で地面に対して垂直材である柱の上に置き、上からの荷重を支える部材のことです。たわみとは、荷重がかかり、はりが変形する垂直方向の量のことです。

はりとたわみのイメージ
図6:はりとたわみのイメージ

荷重計算に利用する計算式は、材料力学のはりの曲げ加工力の計算式が土台になっています。曲げ加工の荷重計算式を使って、式を構成する要素を確認していきましょう(図7)。

曲げ加工の荷重計算式を使った係数の算出
図7:曲げ加工の荷重計算式を使った係数の算出

これにより、以下のことがらが分かります。

・ダイ肩幅 Lと材料特性(引張強さ、板厚)が一定のとき、板幅が大きくなれば、曲げ力は比例して増加する。
・材料特性(引張強さ、板幅、板厚)が一定のとき、ダイ肩幅Lが大きくなれば、曲げ力は反比例して減少する。
・ダイ肩幅 L が一定のとき、引張強さと板幅が同じならば、板厚と曲げ力は2乗の比例関係になる。すなわち、板厚が増加すると急激に曲げ力も増加する。

この関係から、注意するポイントが見えてきます。板厚変化とともに曲げ力も2乗で増加します。例えば、板厚1mmの材料を曲げ加工するとき、5トンの曲げ力を必要とすると、板厚2mmでは、10トンではなく25トン(5 2 )が必要となります。これは、加工機械を選択する際に考慮すべきポイントの一つです。

3. 曲げ加工の展開寸法

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全9回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 プレス加工とは?プレス加工の3要素とは?
  • 第2回 被加工材の特性
  • 第3回 プレス機械のトルク能力、公称能力、仕事能力とは?
  • 第4回 金型とは何か?なぜ金型が必要か?
  • 第5回 プレス加工の種類
  • 第6回 せん断加工とは?
  • 第7回 曲げ加工とは?
  • 第8回 絞り加工とは?
  • 第9回 プレス加工の安全対策

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