前回は、空気圧機器の流量特性を紹介しました。今回は最終回です。空気圧アクチュエータの駆動方法と応用事例を紹介します。空気圧は圧縮性があり、軽量、クリーン、磁場の影響を受けない、発熱が小さいといった、電動駆動などとは異なる特徴があります。ただし、これまで見てきたように、流量特性などはやや複雑なため、今回説明する空気圧の制御も、やや煩雑になります。
第6回「空気圧による駆動」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 空気圧アクチュエータ
空気圧のエネルギーを直線運動や回転運動などに変換する機器を、空気圧アクチュエータといいます。空気圧アクチュエータは、空気圧シリンダなど直線運動を実現するものと、空気圧揺動アクチュエータや空気圧モータなど回転運動を行うものに大別できます。
近年は、柔らかさを有するソフトアクチュエータの研究開発が盛んです。人間の筋肉のように収縮する運動を実現する、空気圧ゴム人工筋などのアクチュエータも市販されています。
図1に、空気圧シリンダの概略図を示します。空気圧シリンダとは、圧縮空気のエネルギーを直動運動に変換する筒状の機械要素です(第3、4回)。一般に、空気圧シリンダは円筒をピストンで2つの部屋に仕切り、空気圧制御弁を用いて一方の部屋に圧縮空気を充填(じゅうてん)し、もう一方の部屋の空気を大気に排気することでピストンに圧力差を与え、ピストンを押してロッドの先端に接続した負荷の直線動作を実現します。
図1 に示すように、ロッドがピストンの片面のみに接続されているものを、片ロボット型と呼びます。ピストンの面積がロッド側とロッドがない側で若干異なるため、方向によって最大発生力が異なることに注意が必要です。また、ピストンには、2つの部屋を仕切るために、その外周に漏れを防止するシールが取り付けられています。よって、ピストンと円筒の内面との間には、摩擦が発生します。最近は、低摩擦の空気圧シリンダが実用化されています。ただし、空気圧シリンダを低速で動作させる際には、摩擦の影響を受けやすくなるため注意が必要です。
空気圧シリンダの最大発生力は、圧力×シリンダ断面積で決まります。また、動作範囲(ストローク)は、ロッドの長さで決まります。外径やストロークの異なるさまざまな種類の空気圧シリンダが販売されているため、用途に合わせて選定することが重要です。
図1の空気圧シリンダでは、ロッドが直線運動を実現することから、シリンダの円筒部分がスペースを取ってしまいます。これに対し、ロッドをなくし、省スペースを実現したロッドレスシリンダと呼ばれるものも実用化されています。
2. 空気圧シリンダの駆動
図1に示した空気圧シリンダ駆動回路の概略図において、一般的な構成である制御弁として、開度がオンかオフの電磁弁を用いた場合を見ていきましょう。電磁弁には5ポート型が広く用いられます。5ポート型とは供給ポートが1つ、制御ポートが2つ、排気ポートが2つの合計5つのポートを有するものをいいます。
図1に示すように空気圧シリンダを左から右に動作させる場合、空気圧シリンダの左側の部屋には供給ポートから制御ポートに圧縮空気が流入します。この際に、右側の部屋からは排気ポートに空気が流出します。電磁弁への制御信号によって接続を逆にすれば、右から左への動作となります。つまり往復運動が実現できます。
ここで、図中の制御弁とシリンダをつなぐ配管内に、スピードコントローラと呼ばれる要素が接続されている点が重要です。スピードコントローラとは、流れの向きによって、自由流れと絞りの開度を調整した制御流れを実現するものです。図1のように、流入流量は自由流れ、流出流量は制御流れとするように、スピードコントローラを配置した空気圧回路をメータアウト回路と呼びます。このメータアウト回路を用いた駆動は、圧縮性流体である空気圧の特徴をうまく活用したとても興味深い方法です。
分かりやすくするために、図2に示すように空気圧シリンダを垂直に立て、負荷を載せてメータアウト駆動させる場合を考えましょう。負荷が重いほど、空気圧シリンダの降下速度が速くなるとイメージするのではないでしょうか。ところが、空気の圧縮性のおかげで降下速度は負荷の重さによらず、一定となります。不思議に思うかもしれません。図2に示すように、負荷がn倍大きくなると、それを支えるために圧力もn倍大きくなり、圧縮されてn倍の空気が流出することから、降下速度は変わらないのです。
降下速度は、排気する際の開度で調整できます。つまり、スピードコントローラの開度を調整するだけで、負荷によらず移動速度を制御できるということです。これは大変簡便な方法だと理解できます。メータアウト回路は速度フィードバック(速度信号を検出、フィードバックして制御に用いる)を内包しています。詳しくは専門の論文をご参照下さい。
3. 空気圧サーボ制御
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 空気圧の特性
- 第2回 空気圧の状態変化
- 第3回 空気圧のエネルギー
- 第4回 空気圧における流れ
- 第5回 空気圧機器の流量特性
- 第6回 空気圧による駆動