前回は、空気圧における流れを紹介しました。今回は、空気圧機器の流量特性を取り上げます。空気圧シリンダなどのアクチュエータを駆動する場合、アクチュエータに流入・流出する空気の流れは、バルブで制御します。よって、バルブにおける絞りの流れの特性について理解することが重要となります。また、圧縮性流体である空気圧では、絞りを通過する流量と圧力差が線形とはならない興味深い現象が起こります。本稿では、絞りを通過する流れについて、詳しく解説します。
第5回「空気圧機器の流量特性」を解説していきます。
第5回もくじ
1. 絞りを通過する流量
絞りとは、流れの断面積を減少させ、管路または流体通路内に抵抗を持たせる構造のことをいいます。多くの場合、絞りはバルブによって行われます(図1)。
前回、流れの運動方程式は下記で表されることを示しました。
ここで、図2に示すような絞りを通過する流れについて考えてみましょう。
空気圧システムでは、絞りの一種である制御バルブを通して流量を調整し、空気圧シリンダの制御を行います。よって、絞りの流れを理解することは非常に重要です。絞りを通過する流れでは、剪(せん)断力は十分小さく、無視できます。また、流れが一定とすると、運動方程式において左辺第1項と右辺第2項がゼロになり、次式の関係が得られます。
図1に示す2つの断面間で上式を積分すると、次式が得られます。
ここで圧縮性がないとして、つまり密度ρが一定であるとして上式を計算すると、
となります。この式は、非圧縮性流体におけるベルヌーイの定理です。圧力差が大きいほど、下流側での流速u 2 が大きくなることが分かります。
ところが、圧縮性流体である空気の場合、密度が一定ではないことから、密度と圧力の関係を表す式が必要となります。そこで、気体の状態方程式とエネルギー方程式から関係式を導きます。流体が絞りを通過するのは極めて短時間であり、断熱変化と考えることができます。よって、以下の関係式が与えられます。
ここでκは比熱比(空気の場合1.4)です。式1と式2より、圧縮性流体におけるベルヌーイの定理は次のようになります。
非圧縮性流体のベルヌーイの式と比較すると、両辺に比熱比が出てきます。また、2つの断面での密度が必要なことが分かります。引き続き、この関係式を用いて、絞りを通過する流量を見ていきましょう。
2. 有効断面積
有効断面積とは、配管内を実際に流体が流れることができる断面積のことをいいます。各種空気圧バルブは、空気圧システムにおいて空気圧抵抗となっており、その流量特性は、絞りとして表すことができます。そこで式3(圧縮性流体におけるベルヌーイの定理)を基に、流量特性を記述する式を導き出します。図2において、絞りを通過する流速はu 2 >>u 1 と見なせることから、この関係を用いて式3を整理すると、以下のようになります。
絞りを通過する流れは、図2に示すように、絞り直後で縮流が生じます。つまり、流れが通過できる断面積は、絞りの断面積Sより小さくなります。縮流部での断面積をS e とすると、絞りを通過する質量流量Gは次式となります。
ここで、縮流部の断面積S e を、有効断面積と呼びます。有効断面積は、制御弁を選定する場合に、重要な指標となります。筆者も、空気圧システムを構成する際、制御弁の選定においては、まず有効断面積を考えます。その理由は、式5からも明らかなように、送り込める流量Gは有効断面積で決まるためです。
不適切なバルブを選定すると、流量が不足し、所望の動作を実現できません。特に空気圧システムの制御では、流量飽和(制御バルブの開度が最大となること)が、比較的頻繁に発生するため、制御バルブの選定には注意が必要です。
一般に、有効断面積S e は、断面積の80~90%(縮流係数)になります。ただし、流れの状態や、バルブの絞りの形状によって変化することから、流量Gと圧力P 1 、P 2 を測定し、式5を用いてS e を算出する必要があります。次に、この流量と圧力差の関係をさらに詳しく見ていきましょう。
3. 音速流れと亜音速流れ
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 空気圧の特性
- 第2回 空気圧の状態変化
- 第3回 空気圧のエネルギー
- 第4回 空気圧における流れ
- 第5回 空気圧機器の流量特性
- 第6回 空気圧による駆動