前回は、空気圧の特性として、粘性、圧縮性、密度と圧力を解説しました。今回は、空気の状態表示の基本となる、圧力、温度、体積の3つについて、状態量の関係を説明します。まず、圧力の性質としてパスカルの原理を紹介し、次に3つの状態量の関係を与える状態方程式を解説します。また、タイヤの空気入れでシリンダを押し込むときの空気の状態変化を例に、等温変化、断熱変化、およびポリトロープ変化と、空気圧の圧力と圧縮性の活用例として、空気ばねの特性を紹介します。
第2回「空気圧の状態変化」を解説していきます。
1. 空気の状態方程式
空気の状態方程式とは、空気の圧力、温度、体積の関係を示す式のことをいいます。空気の基本状態量である圧力、温度、体積には一定の関係があります。手動式のタイヤの空気入れでレバーを押し込んで体積を小さくすると、圧力が上昇することは体験したことがあるでしょう。空気は、通常の使用範囲では理想気体と見なすことができ、上記3つのうち、2つの状態量が決まれば、残り1つの状態量は一意に決まります。以下に、パスカルの原理を用いてこれらの関係を見ていきましょう。
・パスカルの原理
パスカルの原理は、圧力の単位としても名を残しているフランスのブレーズ・パスカル(1623~1662年)による、流体静力学における基本原理です。密閉した容器内で静止している流体の一部に圧力を加えると、その圧力は流体のどの部分にも同じ強さで伝わるというものです。図1に示すように、2つのつないだシリンダを水で満たし、断面積A
1
の左側のシリンダ1をF
1
の力で押します。
このとき、パスカルの原理により圧力は同じであるため、以下の関係が成り立ちます。
ここで右側のシリンダ2の断面積A 2 、力をF 2 とします。上式を変形すると、以下の式が得られます。
この式は、シリンダ2の断面積A 2 が、シリンダ1の断面積A 1 より大きい場合、入力の力F 1 に対して出力される力F 2 が大きくなることを示しています。つまり、面積を大きくすれば小さな圧力でも大きな出力を得られます。
身近な例として、血圧を計測する際、腕に巻くカフがあります。カフは、パスカルの原理を利用し、少ない空気の供給量でも腕に大きな締め付け力を与えることができます。
・状態方程式
空気圧の圧力P、温度T、体積Vの3つの基本状態量の関係を示す重要な法則、ボイルの法則とシャルルの法則を紹介します。ボイルの法則は、温度を一定に保った状態では、一定質量の気体の体積は圧力に反比例するというものです。よって、温度が一定であれば、一定質量の気体の体積Vと圧力Pの積は一定になります。
PV = 一定
一方、シャルルの法則は、気体の圧力Pを一定に保って温度Tを上昇させると、体積Vが増加するというものです。
V/T = 一定
ここで、Tは絶対温度(K)です。これら2つの法則から、次のボイル・シャルルの法則が得られます。
PV/T = 一定
ここで、気体定数をR、気体の質量をmとすると、PV=mRTの関係が与えられます。これを、理想気体の状態方程式といいます。この式は、圧力P(Pa)、温度T(K)、体積V(m 3 )の3つの基本状態量のうち2つが決まれば、残り1つの状態量が決まることを示しています。なお、空気の気体定数Rは287J/(kg・K)です。
2. ポリトロープ変化
ポリトロープは、流体の状態に関する関係式をいいます。ポリトロープ変化を、等温変化、断熱変化をもとに説明します。
空気の3つの状態量、圧力、温度、体積が変化することを、空気の状態変化といいます。
・等温変化
等温変化とは、温度が一定に保持されながら圧力や体積が変化する状態変化をいいます。タイヤに空気を入れるように、空気を封入したシリンダを押して体積を小さくすると、圧力が上がります。ここで、等温変化が発生します。現実には、相当ゆっくりとシリンダを押した場合に、内部の空気とシリンダ表面間の熱の交換によって等温変化に近付きます。このとき、前章で説明したボイルの法則が成り立ちます。つまり、PV=一定の関係が成立します。
・断熱変化
断熱変化とは、外部との熱交換のない環境で行われる状態変化をいいます。シリンダを急激に押し込んだ場合、内部の空気とシリンダ表面間の熱交換を行う時間的なゆとりがありません。つまり、外部との熱の授与がなく、空気の状態が変化します。これが断熱変化です。エネルギーの保存式と状態方程式から、断熱変化においては、PV
κ
= 一定となります。ここで、κは比熱比であり、空気の場合、κ=1.4です。この式は、等温変化と同じ圧力までシリンダを押し込もうとした場合、断熱変化では等温変化と比べて少ない容積変化で実現できることを示しています。
・ポリトロープ変化
ポリトロープ変化とは、断熱変化と等温変化の間の状態、つまり、外部との熱交換が適度にある現実的な状態を表現できるものであり、次式で与えられます。
PV n = 一定
ここで、nはポリトロープ指数で1<n<κです。nが1に近いほど等温変化に近付き、κに近い場合に断熱変化に近いことを示しています。
空気の状態変化を図で表す方法として、縦軸に圧力P、横軸に体積Vに取るP-V線図が用いられます。図2に、上記の3つの状態変化をP-V線図に表現した概略図を示します。ポリトロープ変化は、等温変化と断熱変化の間に位置します。
3. 空気ばね
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 空気圧の特性
- 第2回 空気圧の状態変化
- 第3回 空気圧のエネルギー
- 第4回 空気圧における流れ
- 第5回 空気圧機器の流量特性
- 第6回 空気圧による駆動