空気圧は柔らかさを有し、比較的大きな力を発揮できる特徴があります。産業用途はもちろん、近年では人との協働ロボットなどにも用いられ、注目されています。本連載では6回にわたり、空気圧の基礎知識を解説します。第1回は、空気圧の特性として、粘性、圧縮性、密度と圧力について説明します。
第1回「空気圧の特性」を解説していきます。
1. 流体とは
流体は、外力を加えると自由に形を変えることができる物質の総称です。物質の3態、固体、液体、気体の中で、液体と気体は流体です。流体の特性として、粘性と圧縮性があります。
・粘性
粘性とは、流体の粘り気を定量的に表すものです。流体の流れに速度差が生じた際に、その差を妨げようと摩擦応力が生じる性質です。粘り気のある水あめを棒でかき混ぜる際には、水より大きな力が必要となることから粘性をイメージできると思います。気体である空気圧は、液体などと比較して小さな粘性を持ちます。
図1に示すように、平行な下の壁と上の板の間に空気が入っていて、上の板が右方向に水平に移動している場合、粘性によって空気の速度は一定の速度勾配を持ちます。つまり、下の壁では流速は0で、上の板の速度に向かって一定に流速が大きくなります。
これを数式で表すと、以下のように表すことができます。
ここで、A(m2)は引張力を受ける板の面積、τ(Pa)は上の板と空気の間の摩擦応力、F(N)は上の板の引張力、μ(Pa・s)は空気の粘性係数、du/dyは速度勾配を表します。Pa(パスカル)は、圧力・応力、N(ニュートン)は、加速度を生じさせる力の単位です。
なお、空気の粘性係数μは温度の関数となります(サザーランドの式)。
ここで、μ0は基準の温度T0(K)における粘性係数Pa・s、Tは空気の温度K、Cはサザーランドの定数Kを表します。なお、T0=293K=20℃における空気の粘性係数μ0=1.82×105、C=117です。粘度μは流体中の物体の動きにくさを表すものです。粘度μを密度ρで割った値を動粘度といい、ν=μ/ρで表されます。動粘度ν(mm2/s)は流体そのものの動きにくさを表します。
表1に、乾き空気と水の粘度、密度と動粘度を示します。粘度は水の方が大きく、動粘度は空気の方が大きいことが分かります。これは、水の方が重くて動きにくく伝わりにくい、空気の方が軽くて動きやすく伝わりやすいことを示しています。
・圧縮性
圧縮性とは、外部からの力や圧力、温度の変化によって、圧縮、もしくは膨張して体積が変化する性質です。空気圧で膨らませた風船を触った感覚から、圧縮性をイメージできると思います。
流体には、大きく分けて、圧縮性流体と非圧縮性流体があります。圧縮性流体は、体積が変化する流体です。空気を含む気体が該当します。一方、非圧縮性流体は、圧縮も膨張もせず、常に体積が一定である流体です。通常、液体が該当します。ただし、空気においても流れが遅い場合には非圧縮性流体として取り扱うことができます。流速をu(m/s)、音速をa≒340(m/s)とすると、その比で定義されるマッハ数M=u/aが0.2以下であれば、空気でも非圧縮性流体として扱うことができます。
2. 空気の基本性質
空気は、地球の地表から約15㎞の対流圏にある気体です。無色透明で暮らしの身の回りに存在します。空気の基本性質を、組成、質量と密度から説明します。
・空気の組成
空気は、窒素N2、酸素O2、アルゴンAr、二酸化酸素CO2、ネオンNe、キセノンXe、ヘリウムHe、クリプトンKrなどからなる混合気体です。空気は対流によって常に撹拌(かくはん)されており、その組成はほぼ変化しません(表2)。
・空気の質量と密度
空気は圧縮性があり、体積が外部環境に依存して大きく変化することから、空気の質量には液体と異なり体積ではなく、分子の数を用います。表2より窒素N2(分子量28g)、酸素O2(分子量32g)、アルゴンA(r 分子量40g)、二酸化炭素CO2(分子量44g)から、空気の分子量mは、以下のように算出できます。
m=28×78.09/100+32×20.95/100+40×0.93/100+44×0.03/100≒28.96(g)
分子量は気体の種類によらず、その体積Vが22.4L=22.4×10 -3 m 3 です。よって、空気の密度ρは、以下のように求められます。
ρ=m/V=28.96/22.4=1.293kg/m 3
水の密度がおよそ1,000kg/m 3 なので、液体である水と比較して、気体である空気は軽いことが分かります。
3. 圧力
圧力Pとは単位面積に対して垂直に働く力であり、次式で表せます。
ここで、Fは断面積Aに働く力を示します。圧力はスカラー量(向きは持たず大きさのみを持つ量)であり、その単位はSI単位系N/m 2 、あるいはPa(パスカル)で与えられます。大気は圧力を持っています。これを大気圧といいます。大気圧は海面からの高さ、地域や気象によって変化します。海面から高いほど、空気は希薄していくため大気圧は低くなります。
1643年に、イタリアの物理学者であるトリチェリ E.Torricelliは、水銀で満たした長いガラス管を、空気が混入しないようして水銀の容器に逆さまに立てたところ、図2に示すように水銀の液面が下がって76cmの高さで止まることを発見しました。これは、ガラス管内の水銀の重さが、トレイの水銀にかかる気圧とバランスしたことを示しています。よって、大気圧は76cmの水銀柱の重量による圧力に等しいことが分かります。また、ガラス管の上端は真空であり、トリチェリは実験を通じて史上初の真空を作ったのです。
水銀の密度が水の13.6倍の13.6×10 3 kg/m 3 であることから、大気圧は760×13.6kg/m 2 =760×13.6×9.8N/m 2 =101.3kPaと計算されます。この値が標準大気圧です。
この圧力は、圧力のない状態、あるいは真空を基準とした絶対圧として表示されます。一方で、大気圧を基準とする圧力をゲージ圧といいます。図3に、絶対圧とゲージ圧の関係を示します。圧力は温度、体積と合わせて空気の状態表示における基本状態量です。空気圧駆動システムは、この圧力を駆動に用いるものです。次回は、これらの関係を取り上げます。
いかがでしたか? 今回は、空気圧の特性として、粘性、圧縮性、密度と圧力を解説しました。次回は、空気圧の状態変化を取り上げます。お楽しみに!
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 空気圧の特性
- 第2回 空気圧の状態変化
- 第3回 空気圧のエネルギー
- 第4回 空気圧における流れ
- 第5回 空気圧機器の流量特性
- 第6回 空気圧による駆動