私たちはたくさんのプラスチック製品に囲まれて生活しています。改めて周囲を見回してみると、自宅やオフィスにある製品、自動車部品など、あらゆるものにプラスチックが使われていることに気づきます。プラスチックが大量生産されるようになって、まだ数十年しか経っていないにもかかわらず、生活の隅々に浸透しているのです。製造業や建設業など、モノづくりに携わる人にとって、プラスチックの基本的な知識は必要不可欠であるといえるでしょう。
今回から8回にわたり、プラスチックの基礎知識を解説します。プラスチック製品を作るための全体像を軸に、プラスチック材料、成形、二次加工および設計の進め方を解説します。第1 回は、プラスチックのメリットやデメリット、プラスチック製品の製造に関わる技術分野を取り上げます。
第1回「プラスチックとは?メリットとデメリットとは?」を解説していきます。
1. さまざまなプラスチック製品
プラスチックの定義は、原料(ポリマー)や配合剤を含んだ成形材料を示すことが一般的です。プラスチックまたは樹脂と呼ばれます。プラスチックには非常にたくさんの種類があり、製品に求められる機能や性能に合わせて、適切なものが選定されます。まずは私たちの身の回りに、どのようなプラスチック製品があるか(表1)、どんなプラスチックの種類があるか(表2)を見てみましょう。
実にたくさんのプラスチック製品があることが分かります。乳幼児から高齢者に至るまで、プラスチックと無縁で生活できる人は存在しないといっても過言ではないでしょう。皆さんも、身の回りにどのようなプラスチック製品があるかをチェックしてみてください。思った以上にたくさんあるはずです。
2. プラスチックを使うメリットとデメリット
これほどプラスチックが使われるようになったのは、プラスチックを利用する側にも、製造する側にも、非常に大きなメリットがあるからです。プラスチックを使うメリットは、製品により違います。表3 に、代表的なプラスチックを使うメリットを示します。
特に「複雑な形状の製品を効率よく生産できる」というのは、最も大きなメリットの一つでしょう。例えば、家電や自動車部品といった複雑な形状の製品を、プラスチックを使わずに作るには、何倍もの費用がかかります。また、プラスチックであればほぼ自動で作ることができるバケツのような製品も、プラスチック以外の素材で作ると、多くの加工工程が必要になります。
一方で、プラスチックには、いくつかのデメリットもあります。それらをよく理解しないまま使ったために、手痛い失敗を経験した人もいるのではないでしょうか。表4 に、代表的なプラスチックを使うデメリットを示します。
最も注意しなければならない特性の一つが、各種条件によって材料の性能が変化することです。金属のように性能が安定している材料と同じと考えて、プラスチックを使ってしまうと、市場からクレームとなって返ってくるでしょう。
私が長年所属していた住宅設備業界では、プラスチックのメリット(表3)に着目し、多くの製品がプラスチックで作られるようになりました。プラスチック化が進んでからかなりの年月が経過しているため、相当な知識が蓄積されているものの、現在でも多くの問題が発生しています。決して手を抜いているわけではなく、性能向上やコストダウンなど新しいことを進める中で、プラスチックの表4 のような特性を見誤ってしまうのです。プラスチックは、意外にも取り扱いが難しいことを頭に入れておきましょう。
3. プラスチック製品を作るには
プラスチック製品を作るには、複数の技術分野の全体像を理解しておくことが必要です(図1)。
それぞれの技術分野は、お互いに深く関係し合っています。例えば、成形法が決まらなければ形状(設計)が決められず、形状が決まらなければ成形法も決まりません。また、形状が決まらなければ、どのような二次加工をするのかも決められません。まさに「ニワトリが先か、卵が先か」の世界です。同じ製品であれば材料や成形法が同じと考えていませんか? 文房具店でプラスチック製の定規を見てください。全て同じように見えても、製品ごとに、材料、成形法、二次加工が異なっています。求められるQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期の略)により、適用すべき技術が違います。これが全体像を理解しなければならない理由です。
私は、新しいプラスチック製品の開発を始める時には、いつも複雑なパズルを解くような感覚を覚えます。プラスチックの技術分野に関して、全体像を理解すること、そして各分野の専門家の協力を得ることが、この複雑なパズルを解くカギになると考えています。
いかがでしたか? 今回は、プラスチックのメリットやデメリット、製造に関わる技術分野を解説しました。次回は、プラスチック材料について解説します。お楽しみに!
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 プラスチックとは?メリットとデメリットとは?
- 第2回 プラスチックの材料特性
- 第3回 プラスチック成形法と射出成形
- 第4回 押出成形とブロー成形
- 第5回 プラスチックの二次加工
- 第6回 プラスチック製品の設計手順
- 第7回 プラスチック製品の材料と成形法の選び方
- 第8回 プラスチック製品の不具合