前回は、材料を生成させるプラズマ技術について説明しました。今回は、材料を削って加工するエッチング技術を解説します。エッチング液を用いた化学的なエッチングの代替にとどまらず、プラズマにしかできない超微細な加工が可能になるこの技術について、その原理と応用製品を紹介していきます。
第4回「エッチング技術」を解説していきます。
第4回もくじ
1. ドライエッチングの原理
ドライエッチングとは、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法をいいます。材料に溝を作ったり、パターンを彫り込んだりする加工をエッチングと呼びます。これは、半導体デバイスを作るためにはなくてはならない技術です。1960年代までは、エッチング液を用いるウェットエッチングと呼ばれる方法しかなく、デバイス作製にはもっぱらこの方法が用いられました。この方法は、装置が安価であり、一度に大量のシリコンウェハ(半導体素子製造の材料)を処理できるため高い生産性を実現しました。しかし、エッチング反応速度を一定にするための制御が難しく、またICやLSIの製造に必要とされる超微細加工にも適しませんでした。そこで、このウェットエッチングに代わる手段としてプラズマの応用が検討され、1970年代の前半から、ICの製造に導入されるようになりました。
プラズマを用いるエッチングはプラズマエッチング、あるいは液体を使わないことからドライエッチングと呼ばれます。その原理は、薬液によるウェットエッチングを気相に置き換えたものです。前回説明した、プラズマCVDと同様の装置を用いて、そこにエッチング用のガスを導入します。プラズマ中で電子衝突により解離、生成されたラジカルが、エッチング反応の主役になります。シリコン(Si)のエッチングを例にとると、四フッ化メタン(CF 4 )を含むガスを放電させ、プラズマ中で以下のような解離反応によりフッ素(F)原子を生成させます。
CF 4 +e → CF 3 +F+e
F原子はSi基板まで拡散し、表面で以下のような反応を起こしてSiをエッチングします(図1)。
Si(固体)+4F → SiF 4 (気体)
この方法を用いるとエッチング速度が安定し、しかも放電を止めればエッチングが停止するため、ウェットエッチングに比べて制御性が大幅に改善されます。しかし、このような電気的に中性なラジカルをエッチングに用いると、気体内での分子との衝突によりランダムな方向からウェハ面に飛び込んできます。そのため、深さ方向のエッチングに加えて、マスクの端部から横方向にもエッチング(サイドエッチング)が進行し、結果的に図2の左に示すような、ウェットエッチングと同様の等方性エッチングになります。等方性エッチングではマスクの下にアンダーカットが生じるため、マスクパターンに対して仕上がり寸法が不正確になり、微細パターンへの適用には限度があります。この問題を解決し、図2の右のような異方性エッチングを実現するために開発されたのが、次に紹介する反応性イオンエッチングです。
2. 反応性イオンエッチング
反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)とはドライエッチングに分類される微細加工技術の1つです。LSIなどの超微細加工が要求される用途では、マスクの寸法通りに深さ方向のみにエッチング可能な、異方性エッチングが必要不可欠になります。これは、エッチングに必要なラジカルを、基板に垂直に入射させることで実現できます。プラズマ中には中性のラジカルだけでなく、イオン化したラジカルも多数存在します。イオンは、原子や分子との衝突で散乱されなければ、電界の方向に運動します。反応性イオンエッチングはこの性質を利用しています。
RIEの原理について説明します。第2回で紹介したように、直流グロー放電において陽極側ではプラズマとの間にほとんど電位差がなく、逆に陰極近傍には大きな電圧がかかっています。そのためプラズマCVDでは、製膜中に高速イオンが衝突して膜に欠陥を発生させないように、基板は陽極側に置きます。一方、RIEではイオンの指向性を積極的に利用するため、陰極側に基板を置きます。エッチング装置としては、一般的に平行平板電極を用いたRF放電(CCP)が用いられます。その場合には、接地電極が陽極に対応し、RF電圧を印加する電極が陰極に対応します。ここでは、詳細な説明は省略します。興味のある方は文献「プラズマ半導体プロセス工学」市川幸美 他、内田老鶴圃・2003年、第2章を参照してください。
RIEでは数10nm幅のエッチングも可能であるものの、イオンの指向性だけで細くて深いエッチング形状を垂直に掘り進めるのは限界があるため、Deep RIEと呼ばれる方法も開発されています。これは、1990年代初めにドイツのBosch社で開発されたことからボッシュプロセスとも呼ばれています。この方法では、RIEと膜堆積を交互に繰り返し行うことで、高アスペクト比の異方性エッチングを行います。例えば、厚さ数100μmのSiウェハに、直径数μmの貫通孔を開けることも可能です。
図3にその原理図を示します。
エッチングガスである六フッ化硫黄(SF 6 )を放電させると、プラズマ中で解離されてFやF + が生成され、これによりSiはエッチングされます。一方、八フッ化シクロブタン(C 4 F 8 )を放電させるとCF系のラジカルが生成され、エッチングされた面にパッシベーション膜(フッ化炭素系の保護膜)を堆積します。これらのガスを交互に切り替えて導入することにより、エッチング部の側壁は保護膜によりエッチングされず、底の部分はFイオンによるRIEによりエッチングが進むため、深掘りエッチングが進みます。側壁は、ガスの切り替え周期に依存した波形(スキャロップ)形状になりますが、用途に応じて周期やエッチング条件を工夫すれば、その形状は制御が可能です。この技術は、LSIにおける貫通配線やキャパシターの形成だけでなく、次に説明するMEMSにおいても重要な加工手段になります。
3. MEMSへの応用
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 プラズマの種類と特徴
- 第2回 プラズマの発生方法
- 第3回 薄膜堆積技術
- 第4回 エッチング技術
- 第5回 表面処理技術
- 第6回 バイオ技術への応用