プラズマの発生方法|プラズマ処理の基礎知識2

プラズマ処理の基礎知識
著者:東京都市大学 総合研究所 客員教授 市川 幸美

前回は、プラズマの種類と特徴を紹介しました。今回は、プラズマの発生方法を説明します。放電条件や構造の違いにより、さまざまなプラズマが生成できます。本稿では、次回以降でふれる予定の、プラズマ処理技術に用いられる主要なプラズマ源について説明します。具体的にはグロー放電プラズマ、アーク放電プラズマ、大気圧低温プラズマに関して、それらの放電形態や電子温度、ガス温度の特徴を取り上げ、種々のプラズマ処理技術を解説します。

第2回「プラズマの発生方法」を解説していきます。

基礎知識DL

1. グロー放電プラズマ

前回、弱電離プラズマの代表例として取り上げたグロー放電プラズマについて説明します。円筒放電管を例にとると、1,000分の1気圧(100Pa)程度に減圧されたガスを封入し、両端に置かれた電極に直流電圧を印加することで、グロー放電と呼ばれる構造を持つ放電が生成されます(図1)。グロー放電とは、低圧の気体中の持続的な放電現象です。放電管の長さを変えても陰極部分の構造は変化せず、陽光柱と呼ばれる一様に光っている部分(蛍光灯の光っている部分に対応)の長さだけが変化します。この領域では、イオンや電子の密度は長さ方向に一様(径方向には変化する)であり、電位の変化が直線的であることから、電界(電位変化の傾き)も均一です。

グロー放電は、古くから非平衡プラズマ(第1回3章平衡プラズマと非平衡プラズマ 参照)の代表例として研究が進んでおり、また応用上でも重要なプラズマです。前回で述べたように、こうしたプラズマの中では電子温度がイオンや中性分子(ガス)温度に比べて2桁ほど高く、高速で動き回る電子と分子の衝突により分子が解離(分解)されます。その結果、反応性の高いフリーラジカル(遊離基)が生成され、プラズマ処理に応用されることになります。

直流グロー放電プラズマの構造と電位分布
図1:直流グロー放電プラズマの構造と電位分布

陰極領域は、陰極から順に陰極降下部、負グロー、ファラデー暗部で構成され、その長さは数cmです(ガスやガス圧により変化します)。陰極降下部には大きな電位差(高電界)がかかっており、これにより正イオンは陰極に向かって加速され、高速で衝突します。高速イオンが衝突すると、陰極を構成している分子から電子が弾(はじ)き出されて電極表面に放出されます。これが、二次電子放出です。二次電子は、電界によりイオンとは反対方向に加速され、高速で負グローに打ち込まれます。そこで分子と激しく衝突し、分子を電離させたり励起させたりします。励起された分子は、もとの基底状態に戻るときに光としてエネルギーを放出するため、負グローは明るく光ります。このように、負グロー内には陽光柱内の電子に比べてより高速な電子が多数存在するため、高エネルギー電子が必要なプラズマ処理には大変有効です。

衝突する正イオンにより陰極からたたき出されるのは電子ばかりではなく、陰極を構成している材料原子や分子も飛び出してきます。これを対向して置かれた基板に付着させれば、陰極材料で構成された薄膜が堆積されます。このようにして膜を形成する手法はスパッタ法と呼ばれ、重要な製膜技術の一つです。

2. アーク放電プラズマ

アーク放電とは、放電管に大電流を流すことにより発生する放電です。グロー放電の代表的な放電電流密度の上限値は、数100mA/cm2程度です。ここから更に電流を増やすと、アーク放電と呼ばれる放電形態に移行します。アーク放電では、電極間の電圧が10V程度まで極端に低下します。その主な理由は、グロー放電の陰極降下部が消滅する、また電子密度の増加に伴う陽光柱領域の電気伝導度の増大により電圧降下が小さくなることです。

アーク放電では、イオン温度やガス温度が上昇して平衡プラズマに近づきます。図2は、水銀アーク放電を例に、ガス圧に対する電子温度Teとガス温度Tgの変化を示したものです。低ガス圧の時は、グロー放電のように、TeがTgに比べて極端に高い非平衡状態になっています。しかし、大気圧になるとTeとTgはほぼ同じになります。これは、電子とガス分子の衝突頻度がガス圧に比例して増加するため、大気圧では低ガス圧の場合に比べ衝突回数が桁違いに増え、効率よく電子の運動エネルギーが分子に与えられることによります。

アーク放電における電子温度とガス温度のガス圧依存性
図2:アーク放電における電子温度とガス温度のガス圧依存性

このように高気圧のアーク放電では、ガス温度を容易に数千度まで上げることができます。物質の加熱にこの高温ガスを応用する技術も、プラズマ処理の重要なテーマです。それについては、次回以降で改めて紹介します。

3. 大気圧低温プラズマ

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 プラズマの種類と特徴
  • 第2回 プラズマの発生方法
  • 第3回 薄膜堆積技術
  • 第4回 エッチング技術
  • 第5回 表面処理技術
  • 第6回 バイオ技術への応用

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