前回は、特許を扱う仕組みである特許制度とは何か、という点を取り上げて解説しました。今回は、そもそも特許とは何か、という根本的な疑問についてお話しします。技術者・研究者は、もちろん「特許」という言葉を知っているでしょう。しかし、「特許とは何か?」という質問に答えるのはなかなか難しいのではないでしょうか。いろいろな答えがあり得ます。そこで、「特許とは物である」と考えれば、より分かりやすくなりそうです。さらに、特許権を取得するとどのような利益があるかについても、併せて解説していきます。
第2回もくじ
1. 特許≒車?
特許とは何でしょうか。「特許」とは「物」である、と考えると分かりやすいと思います。具体的にいうと「特許を持っている」とは、「車を持っている」ということとほとんど同じです。
例えば、車を持っている人が自分の車を中古車屋に売れば、中古車屋からお金をもらえます。車を友人に貸す場合、「1日5,000円で貸します」などと言うこともできます。友人が断りなしに自分の車を使っていたら「勝手に使うな!」と言って使用をやめさせることもできます。特許を持っていると、これと同じことができるのです(表1)。
特許を持っていたら、その特許権を欲しい人へ売って、お金を得ることができます。その発明を使いたい人がいれば「その発明を1年間使っていいから、○○円ください」などと言うこともできます。その発明を自分の断りなしに使っている人がいたら、「勝手に使うな!」といって使用をやめさせることもできます。勝手に使われたことで自分に損害が発生するので、損害賠償を請求することもできるのです。
このように「特許を持っている」ということは、車などの「物を持っている」ことと、ほとんど同じといえます。
2. 特許と車の違い
それでは、特許と車の違いは何でしょうか。それは、車には実体があり、特許には実体がないということです。
車には実体があるので、「あなたの車はどれですか」と聞かれた場合、指さして「これです」と示すことができます。しかし、特許には実体がないので、「これが私の特許です」と指さして示すことはできません。実体がないものの内容を示すには、工夫が必要です。そこで、特許制度においては、自分の特許(発明)はどのようなものかを書面に示し、それを特許庁に登録することにしています。こうすることで、実体のないものの内容を明確にし、誰もがその内容を理解できるようにしているのです。
このように、発明の内容を記載して特許庁へ提出するものが、明細書や、特許請求の範囲などの特許出願書類です。実体のないものを文章で表してその内容を明確にするので、特許出願書類の作成はかなり難しい作業です。
3. 特許権を取るとどのような利益があるのか
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 特許制度はなぜ、存在するのか?
- 第2回 そもそも特許とは何か?
- 第3回 特許を取るまでの流れ
- 第4回 どのような発明であれば特許が取れるのか
- 第5回 知っておくと得する手続き
- 第6回 外国出願および関連する他の制度