前回は、特許が取れる発明とはどのようなものか解説しました。また、第1回から第4回までは、通常の特許出願を行うために必要な基礎知識について説明しました。今回は一歩進んで、知っておくと得する特殊な手続きとして、「新規性喪失の例外」「国内優先権主張出願」を取り上げて紹介します。前者は、特定の場合に新規性がなくなっていないとみなして審査してくれる規定です。後者は、既に行った特許出願に、改良部分や新たな知見などを付け加えることができる制度です。
1. 新規性喪失の例外
技術者・研究者は、研究実績を学会で発表することが頻繁にあると思います。しかし、学会で発表することで、その研究実績としての発明は公開されることになるため、その時点で発明の新規性はなくなります。よって、学会で発表した後にその発明について特許出願しても、出願する時点で既に新規性がないので、原則的には特許を取ることができません。
ただし、出願する際に特別な手続きを併せて行うことによって、新規性喪失の例外の適用を受けることができます。学会での発表などによって新規性がなくなった発明についても、新規性はなくなっていないとみなして審査してもらうことができるのです。
つまり、新規性喪失の例外とは、本来は新規性がなくなる行為があっても、それが「特許を受ける権利を有する者の行為」に起因している場合、その行為から1年以内に特許出願をすれば、新規性がなくなっていないとみなす、という規定です(図1)。
「特許を受ける権利を有する者の行為」とは、簡単に言えば、発明者や出願人による積極的な公開です。例えば、下記のような行為を指します。
・ロケットの発明などで公開試験を行う
・学術論文などの刊行物で発表する
・インターネットやテレビで発表する
・学会や博覧会で発表する
・研究開発の資金調達のために投資家に説明する
・研究開発コンソーシアムにおける勉強会で口頭発表する
なお、新規性喪失の例外は「自分の行為に対して新規性を失っていないとみなされる」だけであって、他人の行為は関係ありません。例えば、学会発表した後、1年以内に新規性喪失の例外の適用を受ける特許出願を行ったとしても、その特許出願の前に他人が同じ発明について論文発表などをしていたら、自分は特許を取れないことになります。したがって、新規性喪失の例外の適用を受けるとしても、発明が完成したらできるだけ早く特許出願を行うという姿勢が必要です。
2. 国内優先権主張出願
完成した発明について特許出願をした後、さらに技術開発が進み、改良発明(改良を加えた発明)が完成する場合があります。例えば、「成分αを含む塗料」という発明について特許出願した後、実験を進めてみたら、成分αを10~15%含む場合に非常に性能が良くなることが見出された、といった場合です。この場合、先の特許出願から1年以内であれば、その特許出願の内容に、後から分かった知見(成分αを10~15%含むと好ましいこと)を付け加えることができます。このように、後から分かった知見を付け加えて行う特許出願を、国内優先権主張出願といいます。
後から分かった知見を付け加えた方が、特許取得の可能性が高まります。そのため、新たな知見が見出されたら、まず国内優先権主張出願を行うべきです。
上記のような改良発明が見出された場合の他に、新たな実施例ができた場合も、国内優先権主張出願によって実施例を付け加え、特許出願の内容を充実させることができます。また、先の特許出願の内容(明細書など)に誤記などがあった場合、これを修正するために国内優先権主張出願を行うこともできます。
ただし、国内優先権主張出願を行うと、先に行った特許出願は、自動的に取り下げられてしまいます。つまり、先の特許出願はなくなり、後から行った国内優先権主張出願に一本化されるのです。
国内優先権主張出願は、先の特許出願から「1年以内」に行うことができる点がポイントです(図2)。
3. その他
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 特許制度はなぜ、存在するのか?
- 第2回 そもそも特許とは何か?
- 第3回 特許を取るまでの流れ
- 第4回 どのような発明であれば特許が取れるのか
- 第5回 知っておくと得する手続き
- 第6回 外国出願および関連する他の制度