塗膜形成時に起こる欠陥|塗装・塗料の基礎知識5

塗装・塗料の基礎知識
著者:元職業能力開発総合大学校 准教授 坪田 実

これまでの4回の連載では、さまざまな塗装方法について見てきました。今回からは、塗料や塗膜に生じる欠陥現象について、発生原因とその対策を紹介します。第5~6回では、塗装時、乾燥時に起こる欠陥について解説します。

第5回「塗膜形成時に起こる欠陥」を解説していきます。

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1. 塗料・塗膜の欠陥の分類

塗料・塗膜の欠陥は自然現象です。塗装前の塗料状態、あるいは塗膜を形成する過程で予期せぬことが生じ、欠陥を引き起こすことがあります。その欠陥現象を解析することで、原因を突き止め、対策を施すことができます。流動性や表面張力といった基礎知識は必要ですが、ケースバイケースで理論式などを活用しながら、対策を考えることが大切です。

塗装の過程を、塗装前の塗料状態・塗装時・塗装後の経時変化の3つに分け、そこで起こる欠陥を整理すると、図1のようになります。

塗装前の塗料状態・塗装時・塗装後の経時変化で起こる欠陥と、その外的要因(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.144)
図1:塗装前の塗料状態・塗装時・塗装後の経時変化で起こる欠陥と、その外的要因(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.144)

欠陥が生じたときには、自分でその発生状況、環境条件、塗料の状態などをメモし、原因の推定から、欠陥の再現をして、対策を考えましょう。図1に示す欠陥はあくまでも参考に過ぎません。

2. ブツ:表面に凸部を生じる欠陥

ブツとは、塗料に混入した固体(ゴミ・顔料の凝集物)や、塗装後に付着した異物により、塗装面に凸部を生じる現象です(図2)。ブツの発生は多く、いろいろな対策が施されています。

ブツの現象と、その原因となる異物(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.153)
図2:ブツの現象と、その原因となる異物(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.153)

ブツの原因
塗装後に、外部から混入した異物が原因です。空気中には、いろいろな種類や大きさのほこりが浮遊しています。塗装後に溶剤が蒸発する過程で、無風状態であれば、塗装面は周りに対してわずかに負圧状態(圧力が低い状態)になり、ほこりが吸い寄せられます。

また、図3に示す水洗ブースで塗装する場合、水流と脱気(塗料からガスが抜けること)による空気の流れが生じ、塗装場所は圧力が下がります。塗装室の天井から外気を取り入れ、排気量よりも多くすることで、ブース内を周囲よりも少しだけ加圧状態にでき、ほこりの付着を防げます。また、囲いが無いときには、外部から昆虫も侵入します。昆虫は有機溶剤の臭気を好んでいるらしく、塗装時によく集まってきます。

スプレー方式での水洗ブース(引用:坪田実、ココからはじめる塗装、日刊工業新聞社、2010年、P.29)
図3:スプレー方式での水洗ブース(引用:坪田実、ココからはじめる塗装、日刊工業新聞社、2010年、P.29)

ブツの対策
日常できる対策は、3つあります。まずは、塗装前に必ず塗料をろ過することです。他に、静電気対策と、周りの空気を帯電させる対策があります。

静電気対策:一般的に、ほこりは動くたびに帯電し、正、負の電荷を持ちます。静電気により、塗装面に付着しやすくなります。湿度が低いと帯電しやすいので、床に水をまき加湿します。作業者には、通電靴と帯電しにくい木綿製の服の着用を義務付けます(図4)。図5に示す帯電列から、木綿や絹は帯電しにくいことが分かります。作業者がほこりを身に着けないことが肝心です。

静電気対策(中道敏彦・坪田実、トコトンやさしい塗料の本、日刊工業新聞社、2008年、P.47)
図4:静電気対策(中道敏彦・坪田実、トコトンやさしい塗料の本、日刊工業新聞社、2008年、P.47)
帯電列(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015 年、P.154)
図5:帯電列(引用:坪田実、塗料・塗装のトラブル対策、日刊工業新聞社、2015年、P.154)

周りの空気を帯電させる対策:空気を積極的に帯電させれば、正、負の電荷を持っているほこりを捕集できます。塗装ブース内の空気の流れで、取り除くことができます。図6は、自動車の塗装ラインでブツ対策を行う様子です。ブース内の塗装作業をロボットが行うことで無人化し、静電気発生装置で吸入空気を帯電させます。7秒に1回の割合で、正、負の電荷を供給します。

次に、塗装前の車体にPP(ポリプロピレン)ブラシを接触させ、ブツを吸着させます。接触帯電により、PPブラシは負電荷を持つので、正電荷のブツを捕集できます。繊維ゴミは、正電荷を持ちやすいといわれます。PPブラシは、車体1台をワイピング(ふき取り)した後に集じん機に入れられ、再使用されます。

図6:自動車塗装ラインでのブツ対策(引用:田村吉宣ほか、塗装工学、日本塗装技術協会、2009年2月号、田村吉宣ほか、塗装技術、理工出版社、2009年4月号、P.75)

ブツの再現実験
塗装箇所を囲い、加圧状態にした効果、あるいは静電気対策効果が現れたかどうかを調査することが再現実験になります。

3. 垂れ・たるみ:塗料が流れる欠陥

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全9回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 塗装とは?はけ塗りの方法とは?
  • 第2回 ローラブラシ塗り・浸せき塗り・電着塗装法
  • 第3回 液膜転写法とは?
  • 第4回 スプレー塗装の原理と種類
  • 第5回 塗膜形成時に起こる欠陥
  • 第6回 流動性と表面張力の影響による欠陥
  • 第7回 塗膜形成後に生じる欠陥
  • 第8回 割れの原因と対策とは?
  • 第9回 塗膜形成後の欠陥「剥がれ」とは?

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