前回は、塗装の概要とその歴史について解説しました。そして、直接法の中から、はけ塗りを紹介しました。今回は、直接法から、ローラブラシ塗りと浸せき塗りを、さらには電気メッキの原理を応用した電着塗装について解説します。
第2回「ローラブラシ塗り・浸せき塗り・電着塗装法」を解説していきます。
1. ローラブラシ塗り
ローラブラシ塗りは、1955年ごろアメリカから導入され、当初は船舶の塗装に利用されていました。その後、広い面を塗ることができる点が注目され、用途が拡大していきました。
ローラブラシは、塗料を無駄なく、住宅の壁など広い面積に塗ることができるので、建築塗装業界では最も使われる塗装方法です。仕上がり面の滑らかさは、はけ塗りに劣りますが、はけ塗りより数倍も速い作業スピードで塗装することができます。
ローラブラシの構造と種類
ローラブラシは、図1のようにローラカバーとローラハンドルから構成されています。カバーは、はけでいう毛の部分に当たり、コアとナップで構成されています。目的に応じて短毛、中毛、長毛と、毛の長さもさまざまです。塗料の種類、被塗装面の形状、仕上がり面の模様などを考えて、適切なローラブラシを選ぶ必要があります。
一般的に、平らな面では、短毛または中毛のローラカバーを用います。凹凸のある面では、中毛または長毛を用います。平らな面でも、厚塗りで特殊なローラパターンを作るときには、長毛を使う場合もあります。
ローラブラシ塗りの方法
事前に、ローラブラシでは塗りにくい箇所を、はけで塗ります。そしてまず、ローラブラシに塗料を含ませます。ブラシの1/3~ 1/2くらいの深さまで、塗料に付けては、金網の上を転がす操作を数回繰り返し、ブラシ全体に塗料を均一になじませます。
ブラシの運行は図2 の右図に示します。右上から真っすぐに降ろし、塗り付け幅だけ左上に移動し、その後真っすぐに降ろします。これを繰り返すと、被塗装面全体へ均等に塗料を配ることができます。
次に、図3のように塗りつけた塗料をすばやくならします。はけ塗りと同様に、塗り方向と直行する方向に塗り広げます。最後に、ローラの運行方向を一定にして、もう一度初めからローラブラシを軽く押し当てて運行します。これにより、ローラマークが均一になります。
ローラ塗りのコツは、ローラを均一な力で回転させることです。ローラの継ぎ目が凸形状になるのを避け、ローラマークを均一に整えると、良い仕上がり面になります。
ローラブラシの後始末と保管
まず、図4の左図のように、ローラカバーにフィットする半円形のくぼみのある木べらを自作します。そして、ナップに含まれる塗料を丁寧にしごき出します。その後、洗浄液で洗って、ナップに癖が付かないように立てて乾かし、保管します。
2. 浸せき塗り
浸せき塗りは、大きく2つに大別されます。1つ目はディッピング方式といい、塗料が入った容器に被塗物をどっぷり浸けて、引き上げて乾燥させます。2つ目は、塗料を押し込む、しごき塗りです。
図5に、液体塗料と粉体塗料のディッピング方式の原理を示します。粉体塗料へのディッピングでは、はじめに粒子中に低圧で空気を送り込み、粉体塗料を流動させます。この中へ、加熱した被塗物を入れると、接触した粉体は溶け、塗膜になります。この方法は、水道バルブのような熱容量の大きい鋳造品などに適しています。
次に、図6にしごき塗りの原理を示します。しごき塗りは、薄く何回も塗料層を重ねる、塗装の理にかなった技法です。被塗物が移動する方式と、塗料槽が移動する方式があり、ます。鉛筆や釣り竿、ゴルフのシャフト、電線など棒状のものに均一に塗るのに適しています。余分な塗料をゴム板やシール材でしごき取る方式のため、形状が一定であれば一度で全体を均一に塗ることができます。
ただし、塗料をしごき取るため、塗付量が少なく、膜厚不足になります。塗装回数が増える欠点があります。鉛筆の塗装仕上げは、目止め工程を含め、しごき塗りを10回程度行います。
他のしごき塗りの例として、図7に明石海峡大橋の鋼鉄製ハンガーロープの塗り替えを示します。ここでは、塗料槽が移動する方式が採用されています。この方法は、高所作業を自動化できる大きな利点があります。
塗料槽が、ロープの巻き上げ方向に沿って回転、下降しながら塗装します。図6の右図のように、重力の作用で塗料がロープ内部までよく浸透することが分かりました。さび止め効果を十分に発揮できます。
3. 電着塗装法
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 塗装とは?はけ塗りの方法とは?
- 第2回 ローラブラシ塗り・浸せき塗り・電着塗装法
- 第3回 液膜転写法とは?
- 第4回 スプレー塗装の原理と種類
- 第5回 塗膜形成時に起こる欠陥
- 第6回 流動性と表面張力の影響による欠陥
- 第7回 塗膜形成後に生じる欠陥
- 第8回 割れの原因と対策とは?
- 第9回 塗膜形成後の欠陥「剥がれ」とは?