誘導モータは、交流電源に直接接続して使うことができるモータです。産業用途で広く使われており、その結果多くのエネルギーを消費しています。そのため、効率のいい誘導モータの利用を義務付ける動きが、日本を含む世界各国で進んでいます。今回は、誘導モータのトップランナー制度から、原理・特性・制御方法までを解説します。
第7回「誘導モータとは」を解説していきます。
1. 誘導モータとトップランナー制度
誘導モータは、誘導電流により回転トルクを発生させるため、直接交流電源に接続し始動することができます。大容量化するほど効率が向上するので、ポンプ・圧縮機・送風機など、産業機器の動力源として使用されています。資源エネルギー庁の平成21年度エネルギー消費機器実態等調査報告書によると、誘導モータは、2008年度の70W以上のモータ生産台数ベースで74.9%を占めています。また、三相誘導モータが、生産容量ベースで85%を占めています(図1)。
国際的には、米国で2010年にIE3(プレミアム効率)のモータの適用義務化が始まり、欧州においても 2015年にIE3またはIE2+インバータの適用義務化を決めています。さまざまな国々でも、最低エネルギー消費効率基準(MEPS: Minimum Energy Performance Standard)での適用義務化を開始・計画しており、モータ単体の効率規制に向けた取り組みが進められています。日本においても、2013年に三相誘導モータが、省エネを進めるトップランナー制度に追加されました。対象となる三相誘導モータは、JIS C 4034-30単一速度三相かご形誘導電動機の効率クラス(IEコード)に規定されており、国際規格IEC 60034-30とも整合が取られています。新たにモータを導入する場合は、トップランナー制度に合ったモータを選定する必要があります。産業用途以外では、誘導モータは、家庭用の小容量分野で使われています。家庭用の単相交流電源で駆動できるように、コンデンサによる疑似2相駆動が行われています。
2. 誘導モータの構造と原理
誘導モータは、電源の違いにより、三相交流を電源とする三相モータと、単相による単相モータ(コンデンサランモータ)に分類できます。さらに三相モータはロータ(回転子)の構造から、かご形と巻線形に分類されます。巻線形はロータにも三相の巻線を施す構造で、風力発電用など大容量の特殊な用途にしか使用されません。
かご形誘導モータのステータ(固定子)は、PMモータと同様、交流三相の全節巻線で構成されています(図2左)。ロータは鉄心のスロット1本毎ににアルミや銅の導体を挿入し、鉄心の外部でその両端をアルミや銅の短絡環で短絡した構造となっています。産業用としては、図2の右に示すようにアルミダイキャストにより製造されています。リス小屋(かご)の回し車のように見えるため、かご形と呼ばれているそうです。
誘導モータの動作は、同期モータとは違っており、原理が複雑で、非線形の特性を持っています。動作原理は、2つに分けて考えると、分かりやすいでしょう。1つ目はロータバーに電流を流す動作と、2つ目は流れた電流が電機子電流となってステータの磁束との相互作用でトルクを発生する動作です。図3の左と中央の図は、誘導モータのステータに三相交流が印加されると、回転磁界が発生することを、模擬的に表現しています。この回転磁界の速度N(rpm) は、電源周波数f、極数Pと置くと、N=120f/Pで表すことができます。
ステータが回転し磁極も回転すると、ステータから出た磁束がロータの導体を横切り、フレミングの右手の法則に従った方向に起電力を発生します。ロータ導体が短絡されているので、導体の抵抗に従った電流が矢印の方向に流れます。この電流と回転しているステータ磁極からの磁束が鎖交することになり、今度はフレミングの左手の方向に力を、発生します。ロータの運動なので、導体に働く力とロータ半径を掛けると、回転モーメントとしてのトルクが求めれられます。この発生したトルクは、磁極の回転方向と同方向に発生するので、ステータの回転速度N s の速度に追い付こうとロータの速度Nが上昇します。最終的には、NはN s に近づく回転速度までは上昇しますが、同じ速度まで追い付くことはありません。2つの速度NとN s との比を滑りと呼び、s=(N s -N)/ N s で表します。
3. 誘導モータの特性と速度制御法
4. コンデンサラン誘導モータの特性
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 モータとは?
- 第2回 DCモータとは
- 第3回 ブラシレスDCモータとは
- 第4回 ステッピングモータとは
- 第5回 サーボモータとは
- 第6回 PMモータとは
- 第7回 誘導モータとは
- 第8回 モータの選び方