前回は、モータの定義と原理、モータの種類、超音波モータを解説しました。今回は、モータの歴史の中で、初期に開発されたDC(直流)モータを詳しく見ていきます。DCモータの動作原理、特性、用途を学びましょう。
第2回「DCモータとは」を解説していきます。
第2回もくじ
1. DCモータの動作原理
DCモータは、DC(直流)電源で動くモータです。DCモータは、磁石と導体で構成されます。DCモータの基本構造を、図1に示します。磁石を構成する界磁は、巻線による電磁石と永久磁石の2種類があります。大容量モータを除き、ほとんどの場合、永久磁石(PM)が使われています。また、トルクを発生する導体部分を、電機子と呼びます。DCモータでは、ロータ(回転子)が電機子です。そこに施されている巻線(コイル)は、電機子巻線と呼ばれます。
DCモータには、整流のための機構が不可欠であり、ロータには整流子が、直流電源回路にはブラシが設置されています。界磁磁束が一定の場合、フレミング左手の法則で考えると、コイルには、上向きと下向きの力Fが発生します。上向きコイルが界磁の中間に来た際に、整流子とブラシの接触する位置が反転します。コイルに流れる電流の方向が逆転するので、回転を持続する下向きに力が働くようになります。なお、整流子とブラシによる整流は、接触による機械的な作用です。整流がモータの制御に影響することはなく、電流や電圧の大きさを変えることで、モータ速度制御を行います。
DCモータが回転する際、コイルがS極と対向する状態ではプラスの電流が流れ、逆にコイルがN極と対向する状態ではマイナスの電流が流れます。このためコイルに流れる電流は、図2のように矩形波状の交流電流となります。電流がプラスからマイナスに遷移する区間は、図2では電流がゼロとなっています。実際には、非常に複雑な電気的過渡現象が起きています。
DCモータの整流子の機構は、スイッチであり、電流の向きが切り替わる時に火花が発生する可能性があります。そのため、火花が発生しないような設計が必要です。また、整流子とブラシは接触するため、整流子が機械的に磨耗し、モータの回転速度が落ちたり、寿命が来て使えなくなる欠点もあります。
2. DCモータの特性
永久磁石を用いたPM界磁DCモータを、最も簡単な電気回路で表現すると図3のようになります。モータのコイルには、電機子が回転することで逆起電力E m が発生し、E m に向かって電流I a が流れることで、電気エネルギーから機械エネルギーへ変換が行われます。電気回路では、逆起電力をDCモータのシンボルMで表現し、回路抵抗をr a で表します。
界磁磁石が永久磁石で構成されるため、磁束密度は常に一定になります。電機子の電圧をV m (V)、電機子電流をI a (A)、電機子抵抗をr a (1/S=Ω)、速度に比例して発生する電機子電圧をE m (V)とすると、V m =r a I a +E m が成り立ちます。この式の両辺に電流I a を掛けると、V m I a =r a I a 2 +E m I a となり、これは入力電力と出力電力の関係式です。
V m I a は、モータへの入力電力を表しています。r a I a 2 は、電流が流れることで発生する銅損(コイルの巻線の抵抗成分により発生する損失)、E m I a は出力を表しています。外部から機械的にモータを回転させた場合、誘導起電力E m の方向に電流が流れ、発電します。
モータの回転速度がω(rad/sec)である場合、単位回転速度あたりの起電力定数をK E (V/s)とすると、回転数と電圧の関係は、ω=(V m -r a I a )/K E となります。またトルクT(Nm)は、電機子電流I a (A)に比例するため、その比例定数をK T (Nm/A)とすると、T=K T I a となります。これをSI単位系で表現した場合、K E =K T の関係です。以上をまとめると、ω=V m /K T -r a T/K T 2 が成り立ちます。
この式から、DCモータには、一定の電圧を印加して外部から負荷トルクを与えた場合、直線的に速度トルクが変化するという特性があることが分かります。DCモータの電圧をVからV/2へ変えたとき、軸(負荷)トルクに対する回転数は、図4のNのような直線になります。
モータの回転数は、モータに印加する電圧で制御することができ、流す電流で負荷トルクを制御することができます。モータの回転数は逆起電圧に比例するので、トランジスタ回路を加えてこの電圧が一定になるように印加電圧を制御すれば、回転速度を一定に制御できます。これは電子ガバナモータ(調速機用電動機)など、簡易な速度制御器として使われています。
3. DCモータの用途
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 モータとは?
- 第2回 DCモータとは
- 第3回 ブラシレスDCモータとは
- 第4回 ステッピングモータとは
- 第5回 サーボモータとは
- 第6回 PMモータとは
- 第7回 誘導モータとは
- 第8回 モータの選び方