溶融めっきと溶射|金属表面処理の基礎知識8

金属表面処理の基礎知識
著者:仁平技術士事務所 所長 仁平 宣弘

前回は、硬質膜の開発動向および特性を解説しました。最終回の今回は、溶かした金属中に処理物を浸せきする溶融めっきと、溶融もしくは半溶融材料を処理物に吹き付ける溶射について解説します。

溶融を利用した表面処理法には多くの種類があり、主な利用目的は、耐食性、耐摩耗性および耐熱性の向上です。鉄鋼業や金属製品、輸送用機械や電気機械など、製造業の多分野で利用されています。

第8回「溶融めっきと溶射」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 溶融めっきと溶射

溶融めっきは、溶融金属中に処理物を浸せきし、表面に溶融金属およびその合金層を形成させる表面処理です。代表的なものに、溶融亜鉛Zn めっきや溶融アルミニウムAl めっきがあり、JIS でその種類や、記号、試験方法、作業標準を規定しています。例えば、JIS H 8641 による溶融亜鉛Zn めっきの記号はHDZ、溶融アルミニウムAl めっきの記号はHDA です。また、記号の後に付着量などを示す番号が付きます。

溶融亜鉛Zn めっきは、鋼の防錆(せい)を目的として利用されます。他の表面処理に比べて防錆(せい)期間が長く、経済的にも有利です。処理物の形状や大きさの制約をほとんど受けないため、小物部品から大型部品まで広範囲の分野で利用されています。構造物としては、鋼製のボルトやナット、架線用金具、大型構造物などに利用されます。また亜鉛Zn めっき鋼板は、洗濯機や冷蔵庫など家電製品の外内板や、屋根や壁などの建材、自動車車体などに利用されています。

溶融亜鉛Zn めっきの処理温度は440 ~ 470℃です。図1 に470℃で溶融亜鉛Zn めっきを施したSS400 の断面顕微鏡組織を示します。めっき層は、純亜鉛Zn 層と、鉄Fe- 亜鉛Zn 合金層から構成されていることが分かります。

溶融亜鉛Znめっきを施したSS400の断面組織
図1:溶融亜鉛Znめっきを施したSS400の断面組織

亜鉛Zn の付着量や純亜鉛Zn 層と合金層の生成比率は、めっき浴の温度、浸せき時間、処理物の表面粗さや寸法、化学成分などによって影響を受けます。処理温度が高いほど、また浸せき時間が長いほど付着量が増加し、同時に鉄Fe- 亜鉛Zn 合金層の割合も増加します。特に後工程で塗装する場合は、溶融亜鉛Zn めっき後に加熱して鉄Fe- 亜鉛Zn 合金層を積極的に生成させる合金化溶融亜鉛Zn めっきも行われ、自動車車体、家電製品、建材などに多用されています。

2. 溶射

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 表面処理の種類と選定方法
  • 第2回 金属の腐食と防錆(せい)・防食法
  • 第3回 電気めっき
  • 第4回 化学めっき
  • 第5回 化成処理と陽極酸化
  • 第6回 PVDとCVD
  • 第7回 硬質膜の種類と特性
  • 第8回 溶融めっきと溶射

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