前回は、電解反応を利用した電気めっきを紹介しました。今回は、電気を使用しない化学めっきを取り上げ、その成膜原理やニッケルNi- リンP めっきについて解説します。
第4回「化学めっき」を解説していきます。
第4回もくじ
1. 化学めっきの原理
化学めっきは、電気を使わない化学反応によって皮膜を析出させる表面処理です。無電解めっきとも呼ばれ、置換型(置換めっき)と還元型(還元めっき)に分類されます。
置換めっき
置換めっきは、めっき金属よりもめっき処理品のイオン化傾向が大きい場合に成立します。以下に、置換めっきの原理を示します(図1)。
この場合、めっき処理品はニッケル Ni、めっき金属は金 Au です。めっき処理品の金属がめっき液中に溶解することによって、電子を放出して金属イオンになり(図1 の1 の反応)、めっき液中に存在しているめっき金属のイオンがその電子を受け取って、金属として置換析出します(図1 の2 の反応)。めっき処理品は還元剤の役割を担っているため、表面がめっき膜で覆われてしまうと反応は終了します。置換めっきの種類には、置換亜鉛 Zn めっき(ジンケ-ト処理)や、金Au のストライクめっきなどがあります。
還元めっき
還元めっきは、化学薬品の還元能力を利用してめっき金属を析出させる表面処理です。非触媒型と自己触媒型に分類されます(図2)。
銀鏡反応は非触媒型に属します。薬品の還元能力によって金属の析出が進行するため、めっき処理品だけでなく、槽の内面や治具などにもめっきされます。そのため、めっき液の劣化が早く、厚めっきは望めません。
自己触媒型も、非触媒型と同様に、化学薬品の還元能力によってめっき金属が析出します。ただし析出しためっき金属が触媒として作用するため、金属の析出はめっき処理品に限定されます。還元剤(RA:Reducing Agent)を補給し、めっき液の組成を保持することで、厚めっきも可能になります。自己触媒型の代表的なものには、無電解ニッケルNi-リンP めっきと、無電解銅 Cu めっきがあります。めっき対象材料は金属だけではなく、プラスチックやセラミックスなど不導体材料にまで及びます。
2. 無電解ニッケルめっき
無電解ニッケルNi めっきは、一般にはニッケルNi- リンP めっきのことを指します。主な適用分野には、自動車部品(ピストン、シリンダなど)や、金型(プラスチック成形用)、などがあり、いずれも耐摩耗性や耐食性の付加を目的としています。
めっき液の主成分は硫酸ニッケル NiSO4 や塩化ニッケル NiCl2 で、ニッケル Ni の供給源である金属塩です。その他、リン P の供給源かつ還元剤として用いられる次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2・H2O や、pH 調整剤の水酸化ナトリウム NaOH、めっき液中で金属イオンと錯体を形成する錯化剤の有機酸(クエン酸 C6H8O7 や酢酸 CH3COOH など)があります(表1)。
ニッケルNi-リンP めっきのリンP の含有量は2 ~ 15mass%の範囲で、3%以下は低リン、6 ~ 8%は中リン、10%は高リンと呼ばれています。一般的な皮膜の場合、リン P の含有量は8 ~ 10%です。ただし、めっき液のpH と錯化剤やその他添加剤の種類によって変わることもあります。
ニッケルNi-リンP めっきの、めっきした時点での硬さは500 ~ 600HV程度です。めっき硬さは熱処理によって増し、得られる硬さは加熱温度によって異なります。約400℃の熱処理で得られる硬さは900 ~1,000HV にも達することから、耐摩耗部品に多用されています(図3)。
3. 粒子分散めっき
4. プラスチックへのめっき
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 表面処理の種類と選定方法
- 第2回 金属の腐食と防錆(せい)・防食法
- 第3回 電気めっき
- 第4回 化学めっき
- 第5回 化成処理と陽極酸化
- 第6回 PVDとCVD
- 第7回 硬質膜の種類と特性
- 第8回 溶融めっきと溶射