表面熱処理の種類|金属熱処理の基礎知識7

金属熱処理の基礎知識
著者:仁平技術士事務所 所長 仁平 宣弘

前回は、ステンレス鋼の熱処理について解説しました。今回は連載の最終回です。「表面熱処理」について解説します。

第7回「表面熱処理の種類」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 表面硬化を目的とした表面熱処理の種類

表面熱処理の概略は、連載の第1 回で紹介しました。その目的の多くは表面硬化です。鋼材に表面熱処理を施すことで高い硬さが得られ(図1)、これにより耐摩耗性や耐疲労性も向上します。「表面焼入れ」(図1 の高周波焼入れ、浸炭焼入れ)や、「非金属元素の拡散浸透処理」の中でも窒化・軟窒化処理によって得られる硬さは1,000HV 程度です。これに対し、「ボロナイジング(浸ホウ・ホウ化処理)」や「炭化物被覆」では1,500HV 以上の硬さが得られます。

表面熱処理の種類と得られる硬さ
図1:表面熱処理の種類と得られる硬さ

鉄鋼材料の種類や期待できる効果によって、適用される表面熱処理の種類は異なります。以下に、工業的によく使われている鉄鋼材料と、適用されている主な表面熱処理を示します(表 1)。表中の「○」は適用例が比較的多く、「×」は適用例が全くないか、あっても極めてまれなことを意味します。例えば、炭素C を0.4% 以上含有する鋼種の場合、「浸炭焼入れ」の適用事例はほとんどありません。また、「窒化処理」および「軟窒化処理」は全ての鋼種に適用されています。

工業的によく使われている鉄鋼材料と適用されている主な表面熱処理
表1:工業的によく使われている鉄鋼材料と適用されている主な表面熱処理

2. 高周波焼入れ

「高周波焼入れ」は、表面焼入れを代表する表面硬化法です。機械構造用鋼に適用され、シャフトや歯車などさまざまな機械部品に使われています。処理方法は次の通りです。まず、高周波コイル(加熱コイル)の誘導加熱によって、鋼材を変態点以上(オーステナイト領域)まで急速に加熱します。そして内部温度が上昇する前に急速に冷却します。これにより、鋼材の表面だけが硬化(マルテンサイト領域)します(図2)。

縦型移動焼入法の模式図 急速な加熱と冷却により金属組織が変化する
図2:縦型移動焼入法の模式図 急速な加熱と冷却により金属組織が変化する

さらに詳しく見てみましょう。鋼材に近接した高周波コイルに高周波電流を流すと、鋼材表面には「渦電流」が流れます。渦電流と鋼材の電気抵抗による「ジュール熱」によって、鋼材は急速に加熱します。渦電流の浸透深さは、高周波の周波数が高いほど浅くなり、低いほど深くなります。そのため硬化層深さを浅くしたい場合や、対象物が小さい場合には高い周波数を用います。逆に内部まで硬化させたい場合には、低い周波数を用います。

焼入硬化層は、通常の焼入組織と同様のマルテンサイトです。焼入硬化層の深さには、「有効硬化層深さ」と「全硬化層深さ」があり、これらの測定方法は「JIS G 0559」で規定されています(図3)。
・有効硬化層深さ:硬化層の表面から限界硬さの位置までの距離
・全硬化層深さ:硬化層と生地の硬さ、または顕微鏡組織の差異が区別できない位置までの距離

高周波焼入れを実施したS45Cの硬さ推移
図3:高周波焼入れを実施したS45Cの硬さ推移

3. 浸炭焼入れ

4. 窒化・軟窒化処理

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 新たな特性を引き出す熱処理の種類
  • 第2回 鉄鋼材料の種類と性質
  • 第3回 焼なましと焼ならし
  • 第4回 機械構造用鋼の焼入れ・焼戻し
  • 第5回 工具鋼の焼入れ・焼戻し
  • 第6回 ステンレス鋼の熱処理
  • 第7回 表面熱処理の種類

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