前回は、金属の特性を引き出す熱処理技術を紹介しました。今回は、鉄鋼材料のさまざまな種類と記号、用途に応じた多様な性質について解説します。
第2回「鉄鋼材料の種類と性質」を解説していきます。
1. 鉄鋼材料の種類と種別記号
鉄鋼材料には、主成分の鉄 Fe 以外にも、炭素 C、ケイ素 Si、マンガンMn、リン P、硫黄 S が必ず含まれています。これらの元素は、原材料の鉄鉱石に混入しているか製鋼過程で添加されるもので、「鋼の5 元素」と呼ばれています。
5元素の中で特に重要なのは、炭素です。炭素の含有量によって、鉄鋼材料は大きく2 つに分類されます。すなわち、炭素が0.006mass% 以下のものが「純鉄(α-Fe)」、0.006mass% を超えるものが「鋼(はがね)」です。ただし、鉄鋼の炭素量は最大でも2mass% 程度で、それを超えると「鋳鉄」と呼ばれます。
また鉄鋼材料の耐摩耗性、引張強さ、じん性、耐食性、耐熱性などを向上させる目的で、5元素以外の合金元素(クロム Cr、モリブデン Mo、タングステン W、バナジウム V、ニッケル Ni、ホウ素 B など)を添加した鋼種もよく使用されています。
このように鉄鋼材料には多くの種類があります。JIS に規定されている鉄鋼材料の中から比較的使用量の多いものについて、その分類と、個々の代表的な種別記号および主な用途を表1 に示します。
1文字目の「S」または「F」は、それぞれStee(l 鋼)、Ferrum(鉄:ラテン語)の頭文字です。その後に続くアルファベットは、鉄鋼材料の用途や、含有している合金元素を表しています。例えば、「SUP(ばね鋼)」のUはUse(用途)、P はSpring(ばね)を、「SCM(クロムモリブデン鋼)」のC はクロム Cr、Mはモリブデン Moを意味しています(表2)。
また多くの種別記号では、アルファベットの後に1~3桁の数字が続きます。これらは炭素または合金元素の含有量や、引張強さなどを表し、意味は分類によって異なります(特に意味のない番号の場合もあります)。種別記号の詳細はJIS で確認できます。
2. 鉄鋼材料の熱膨張係数
温度の上昇に対応して物体が膨張する割合を、熱膨張係数といいます。熱膨張係数には「体膨張係数(体積が変化する割合)」と「線膨張係数(長さが変化する割合)」があり、鉄鋼材料では線膨張係数で表示されるのが一般的です。鉄鋼材料の線膨張係数は、合金元素の種類や含有量により大きく変動します。例えば炭素鋼の場合、炭素量が多いものほど線膨張係数は小さくなります。また同一鋼種であっても、熱処理条件や金属組織によって、線膨張係数は多少の影響を受けます。
以下に示すのは、炭素鋼および2 種類のステンレス鋼の、0 ~ 100℃における線膨張係数です。ステンレス鋼は、炭素鋼よりも大きく寸法変化することが分かります。またステンレス鋼でも、合金元素の含有量により線膨張係数が異なります。
・炭素鋼: 約11×10
-6
/℃
・18Cr-8Ni ステンレス鋼: 約17×10
-6
/℃
・25Cr-20Ni ステンレス鋼: 約14×10
-6
/℃
3. 鉄鋼材料の熱伝導率と電気抵抗率
4. 鉄鋼材料の結晶粒度と特性
5. 硬さと機械的性質の関係
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 新たな特性を引き出す熱処理の種類
- 第2回 鉄鋼材料の種類と性質
- 第3回 焼なましと焼ならし
- 第4回 機械構造用鋼の焼入れ・焼戻し
- 第5回 工具鋼の焼入れ・焼戻し
- 第6回 ステンレス鋼の熱処理
- 第7回 表面熱処理の種類