連続体の力学|機械力学の基礎知識5

機械力学の基礎知識

著者:広島大学 先進理工系科学研究科 機械力学研究室 教授 菊植 亮

前回は、多自由度系と振動モード、共振・反共振について解説しました。これまでは、一つ一つ独立した物体(質点、あるいは剛体)の運動を数式で表して調べる方法を解説してきました。今回は、ひと続きになって変形する物体(連続体)の運動と振動を解説します。

第5回「連続体の力学」を解説していきます。

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1. 弦の運動方程式

最も単純な連続体の例として、弦を考えます。ギターの弦のように、両端が固定されて、ピンと張られたワイヤを想像してください。そのワイヤを指ではじくと振動します。どのような振動が起こるかということを、運動方程式から考えてみましょう。

図1のように、左右の両端が固定されていて、張力(テンション)Tで左右から引っ張られている弦を考えます。長さをL(m)、張力をT(N)、線密度(単位長さ当たりの質量)をρ(kg/m)とします。左端を原点とし、弦に沿ってx軸をとります。

弦
図1:弦

弦の振動は、弦の各部分が、弦と垂直な方向(図1の上下方向)に変位することで生じます。時刻tにおける位置xの部位の上方向への変位をu(x,t)と表すことにします。下方向に変位した場合、uは負になります。縦軸がu、横軸がxの座標系で、ある瞬間t 1 における関数u(x,t 1 )のグラフを描くと、それはそのままその瞬間のワイヤの形状を表します。

一般に、連続体の挙動を数式で表そうとするときには、ひとまず連続体を微小な部分に分けて、その部分について運動方程式を立てます。

弦について考えるときは、図2のように、ある長さがΔxの微小部分を考えます。

弦の微小部分に加わる力
図2:弦の微小部分に加わる力

ここでΔx は十分に微小であるとします。この部分の質量はρΔx です。

ある時刻t において、その部分の左端の変位はu(x,t) で、左端の上下方向の加速度は∂ 2 u(x,t)/∂t 2 です。弦に加わる張力がTであるとすると、その微小部分の左端には-Tの力が、右端には+Tの力がx軸方向にかかっていることになります。ただし、この部分は少し傾いているので、張力はピッタリx 軸方向ではありません。その傾きは左端、右端において、以下のようになります。

そのため、この微小部分の上下方向の運動方程式は、以下のようになります。

この式1 を書き直して、両辺をΔx で割ると、以下の式が得られます。

これがこの弦の運動方程式です。この式は、時間の2 階微分と空間の2 階微分から成る偏微分方程式で、波動方程式と呼ばれる式の一種です。ここで、uは弦のその部分の上下方向の変位を表すため、∂u/∂x はその部分の弦の傾き、∂ 2 u/∂x 2 は弦のその部分の曲がり具合です。そして、∂u/∂t は弦のその部分の上下方向の速度、∂ 2 u/∂t 2 は弦のその部分の上下方向の加速度です。このように考えると、式2は、弦の曲がり具合によって上下方向に力が発生して、それによって上下方向の加速度が発生するという解釈ができます。

2. 運動方程式の解とモード関数

前章で出てきた運動方程式(式2)の解を考えます。結論をいうと、運動方程式(式2)の解は下式のようになります。

ここで、A n とα n は初期条件で決まる定数です。そして、ω n は第nモードの固有角振動数、関数ϕ n (x)は第nモードのモード関数と呼ばれる関数で、下式を満たすように定められます。

つまり、式2の解は、式4で決まったω n とϕ n (x)を式3に代入したものです。そうなる理由は、式2に式3を代入して式4を考慮して式変形すると、等号が成立することが示せるからです。前回も述べたとおり、微分方程式の解というものは結果オーライです。

モード関数ϕ n (x)と固有角振動数ω n は「式4を満たすように定める」と述べました。もう少し具体的にするために、線密度ρと張力Tが一定値であると仮定してみます。すると式4は、単純な2階の線形微分方程式になります。弦は両端が固定されているので、モード関数ϕ n (x)はϕ n (0)=0、およびϕ n (L)=0を満たします(これらを境界条件といいます)。この条件を考慮に入れると、結局、式4を満たす固有角振動数ω n とモード関数ϕ n (x)は、以下のようになることが分かります。

これらを式3に代入すると、運動方程式(式2)の解は以下となります。

例として、長さがL=0.65m、張力がT=60N、質量密度がρ=0.0009kg/mの弦を考えます(これはギターの第3弦に近い張力です)。この弦の第1モードから第3モードの固有角振動数は、以下のようになります。

図3に、第1モードから第3モードのモード関数ϕ 1 (x) ~ϕ 3 (x)と、そのモードの振動ϕ n (x)cos(ω n t)のグラフを示します。多自由度系のときと同様に、このモード関数ϕ n (x)というものは、そのまま「振動の形」を表します。それぞれの振動の形(モード)において、振動の周波数(固有角振動数)が決まっているということに注意してください。

弦の第1 ~第3モードの角振動数、モード関数、および振動
図3:弦の第1 ~第3モードの角振動数、モード関数、および振動

なお、上記の固有角振動数ω 1 、ω 2 、ω 3 、・・・の単位はrad/sで、この単位をHzに換算すると、それぞれ2πで割って、199Hz、397Hz、596Hz、・・・ということになります。第1モードの音(振動)は、ピアノの真ん中辺りから1オクターブ下がった「ソ」の音、第2モードの音はピアノの真ん中辺りの「ソ」の音、第3モードの音はさらにそれより少し上がった「レ」に近い音です。

また、実際の弦を指ではじいたときの振動は、式3で表されるように、いくつかのモードの振動の重ね合わせ(足し合わせ)になります。ギターの弦では、普通に指ではじくと、第1モードの振動が支配的になります。しかし、弦の真ん中辺り(具体的には、12フレット)を指で軽く押さえて弦をはじいた後にすぐ指を離すと(いわゆるハーモニクス奏法)、普通に弦をはじいたときより1オクターブ高い音(倍音)、つまり、第2モードの振動が発生します。同様に、弦の3分の1あたり(具体的には7フレット)を押さえてから弦をはじくと、第3モードの振動が発生します。

3. さまざまな連続体の振動

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 運動方程式
  • 第2回 自由振動
  • 第3回 強制振動と周波数応答
  • 第4回 多自由度系と振動モード
  • 第5回 連続体の力学
  • 第6回 剛体とリンク機構の力学

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