前回は、投影図の描き方を紹介しました。今回は、加工と投影図の向きを解説します。図面は、部品加工や組み立ての指標として描くものです。そのため、加工者にとって分かりやすく、誤解されない内容でなければいけません。加工方法を考慮した、見やすい投影図を描くために必要な知識を紹介します。
第3回「加工と投影図の向き」を解説していきます。
1. 正面図の決め方と投影図を配置する際の注意点
正面図とは、投影対象物の特徴を最もよく表す方向から見た図のことです。例えば自動車の場合、横から見た形状が最も自動車の特徴を表しているので、それが正面図となります(図1)。
正面図を基準として、上方向から見た投影図は平面図、下方向から見た投影図は下面図、左方向から見た投影図は左側面図、右方向から見た投影図は右側面図です。また、右側面のさらに右方向は正面図の真裏になり、これが背面図になります(図2)。
6つの投影図を全て図面に配置したものが、図3です。平面図、下面図を描く際には、基準となる正面図に対して垂直の位置を合わせて描きます。左・右側面図、背面図を描く際には、正面図に対して水平の位置を合わせて描きます。また、投影方向から見える形状は全て実線で描き、隠れている形状は破線を使って描きます。
ただし、必ずしも6つの投影図を描く必要はなく、対象物の情報を整理して、必要な数の投影図にまとめます。多くの場合、正面図、平面図、側面図(右か左)の3面図にまとめられます。
以下に、JISの一般原則に基づく、投影図の表し方のルールを示します。
・最も対象物の情報を与える投影図を主投影図、または正面図とする
・他の投影図(断面図を含む)が必要な場合には、あいまいさがないように、
完全に対象物を規定するために必要かつ十分な投影図や断面図の数とする
・可能な限り隠れた外形線やエッジを表現する必要のない投影図を選ぶ
・不必要な細部の繰り返しを避ける
2. 旋盤加工と投影図
図4に示すような、片側にEリング溝と段付き加工をした軸について、加工方法を踏まえた投影図の描き方を説明します。
図5 は、この段付き軸の組立図です。
このような丸軸は、寸法線でφを付けることで円形であることを表現できるので、正面図のみを描き、側面図は省略するのが一般的です。そこで、図4と図5から、以下のような投影図が描かれるかもしれません(図6)。この投影図は、間違ってはいないものの、部品図面として親切ではありません。なぜなら、この図面は、軸を加工する人にとって、とても見づらく、不親切な図面だからです。
通常、丸軸は旋盤(せんばん)という機械を使った旋削(せんさく)加工で作られます。旋削加工とは、素材を回転させ、そこに工具刃物を当てて削る加工です(図7)。
旋削加工では、その構造上、一般的に回転軸の同心円状の加工となるのが特徴です。旋盤には普通旋盤のほか、数種類の工具を刃物台に取り付け、工程ごとに刃物台を回転させて数種類の連続的な加工ができるタレット型旋盤や、モデルをスタイラスでなぞり、なぞったとおりに刃物を動かして、モデルと同一形状の旋盤加工を行う、ならい旋盤と呼ばれる旋盤もあります。
図7のような一般的な旋削加工では、加工者から見て素材の左側をつかみ、右側にある刃物で、右側から左側に向けて加工していきます。従って、図面も実際の加工の向きに合わせて、加工部分を右にレイアウトするのがマナーです(図8)。
3. フライス盤加工と投影図
全10回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 図面とは
- 第2回 投影図の描き方
- 第3回 加工と投影図の向き
- 第4回 特殊な図示法1
- 第5回 特殊な図示法2
- 第6回 寸法記入に関する決まり事
- 第7回 寸法補助記号1
- 第8回 寸法補助記号2
- 第9回 寸法の配列
- 第10回 寸法記入思考