前回は機械要素のうち、機械構造を支える部品について伝えました。今回は、機械の運動に関わる動力伝達要素について説明します。
第6回「機械の運動に関わる動力伝達要素」を解説していきます。
1. 動力伝達要素とは
機械を適切に動かすには、駆動源(モータなど)の動力を機構設計通りの運動に変えるメカニズムが必要です。動力伝達要素とは、このメカニズムを構成している主な部品のことで、動力を伝える部品を原動車(または原動節)、動力が伝わって運動をする部品を従動車(または従動節)といいます。機構設計では、動力を目的の運動に変換するための方法、具体的には、1:運動の変換、2:運動の方向、3:運動の伝達について考察し、動力伝達要素の中から適切なものを選定します。
1:運動の変換
運動の変換は不変型と可変型に大別できます。
・不変型:速度や力(トルク)は一定(等速)で、方向のみを変えて運動を出力する
・可変型:速度・力(トルク)・方向を変えて運動を出力する
2:運動の方向
運動の方向は4 種類あり、複数を組み合わせることで複雑な動きが可能です。
・正転
・逆転
・上下運動
・左右運動
3:運動の伝達
運動伝達要素を選定する際は、力(トルク)や回転数、伝達方向、要素間の距離、減速率、伝達効率、メンテナンス性などを考慮します。
運動の方向に着目すると、一般的な動力伝達の種類は以下の4 つに分類できます。この4 種類の動力伝達要素を、詳しく見てみましょう。
・回転運動を別の回転運動に変えて伝える
・直進運動を別の直進運動に変えて伝える
・回転運動を直進運動に変えて伝える
・任意の運動に変えて伝える
2. 回転運動を別の回転運動に変えて伝える
回転運動を別の回転運動に変えて伝えるには、かみ合いで運動を伝える方法と摩擦で運動を伝える方法があり、前者は歯車伝達、後者は摩擦車伝達が該当します。
1:平歯車
平歯車は時計の内部や自動車の変速機など、さまざまな産業で使用される歯車伝達要素です。歯車の数量や歯数を変えることで、力(トルク)・回転速度・方向を容易に調整できます。
2:ウォーム・傘歯車
ウォーム・傘歯車は、運動の回転方向を90 度(直角)の方向に変更し、高トルクの機構に適します。一方で、高速回転の機構にはあまり向きません。身近な製品では、ウォームはオルゴールの調速機、傘歯車はコーヒーミルの手回しハンドルに用いられています。
3:ゼネバ(ジェネバ)
ゼネバは、連続回転運動を断続回転運動に変換する動力伝達要素です。原動車(連続回転する側の機構)に付いているピンが従動車(断続運転させる側の機構)のスロットに入り込むことで、断続回転を起こします。機械式時計のために開発された機構で、スイスのジュネーブ(ジェネバ)から名称が付けられました。
4:摩擦車
摩擦車は摩擦を利用して回転を伝える動力伝達要素で、軸同士が比較的近い場合に用います。摩擦によって動力を伝達するため振動が発生しにくく、低速回転に適しています。一方で、滑りが発生すると効率が落ちる点に注意が必要です。身近な製品では、自転車の発動機に用いられています。
3. 直進運動を別の直進運動に変えて伝える
4. 回転運動を直進運動に変えて伝える
5. 任意の運動に変えて伝える
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 機械設計とは
- 第2回 機械設計のプロセス
- 第3回 機械設計に必要なスキルと知識
- 第4回 機械製図の3つの役割
- 第5回 機械構造を支える部品
- 第6回 機械の運動に関わる動力伝達要素
- 第7回 メカトロニクスを支える部品
- 第8回 機械設計に関する規格とリスクマネジメント