DXとマーケティング|マーケティング戦略の基礎知識6

マーケティング戦略の基礎知識

著者:若井テクノロジオフィス代表 第一工業大学 元教授 若井 一顕

前回は、マーケティングミックスについて説明しました。今回は、最終回です。継続的な顧客獲得の取り組みの中から、DXとマーケティングについて説明します。昨今は、あらゆる分野でDXが推進されて数年が経ちます。生産管理や工場管理、そして企業運営の仕組みにまで展開されています。

第6回「DXとマーケティング」を解説していきます。

基礎知識DL

1. DX とは

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、進化したデジタル技術を浸透させ、人々の生活をより良いものへと変革することをいいます。経済産業省は、経営陣がおさえるべきポイントを明確にしたDX推進ガイドラインにおいて、以下のようにDXを定義しています。

「ビジネス環境の変化に対応し、デジタル技術を活用してサービスやビジネスモデルを変革するとともに、業務、組織、企業文化、風土を変革し、競争の優位性を確立すること」

DXを推進するためには、DXの人材育成が不可欠です。ITの知識だけでなく、自社の業務に関する知見や経験が必要となるため、人材育成は、外部委託に頼るだけではなく社内で行うことも大切です。また、不確実性の高い取り組みのため、経営トップが強くコミットして推進していく必要があります。政府がこれ程までにDXを推進するのには、2025年の崖という懸念に対応するためでもあります。

・2025 年の崖

2025 年の崖とは、経済産業省が2018 年に出したDX レポートにおいて、DX 推進に向けて今の日本が抱えている深刻な課題を表す言葉です。その内容は、現在、日本企業で使用される大半の基幹システムは老朽化しており、2025 年までに手を打たないと、最大で12 兆円の赤字を出してしまう、という警告です。

日本でDX がなかなか進まない理由の一つとして、レガシーシステムが挙げられます。レガシーシステムとは、旧来の技術基盤により構築されているコンピュータシステムのことを指します。日本企業で使用されるシステムの多くは1990 年代~2000 年代に開発され、その後、自社用に開発したり、部署ごとにカスタマイズしているうちに、どんどん複雑になってきています。そのノウハウは、ある一定の人材のみが共有し、引き継ぎせずに退職すると、そのシステムは、ブラックボックス化されていきます。また、その大規模なシステムを開発していた技術者たちは、既に定年を迎え、当時のシステム言語を使える技術者が少なくなっているのが現状です。

旧システムを廃止していく動きは、世界的に進められています。2020年には、Windows7がサポート終了し、2024年には固定電話網PSTNが終了することが発表されています。その他、多くの日本企業をユーザーに持つSAP社のERP(Enterprise Resource Planning)の統合基幹システム、SAP ERP 6.0、SAP Business Suiteが2027年に終了します。こういった終了に伴い、企業はサービスを移行していく必要があります。移行作業は、取引先と連携して計画的に進めなければなりません。

ここで、DXに至る3段階のモデルを紹介します(図1)。

デジタルトランスフォーメーション(DX)に至るまでの3段階
図1:デジタルトランスフォーメーション(DX)に至るまでの3段階

・デジタイゼーション(Digitization)

デジタイゼーションとは、紙などに記録されている情報をデジタル化することをいいます。アナログ、あるいは物理的なデータをデジタル化することにより、業務効率やコスト削減を目指します。例として、クレジットカード、電子書籍、デジタルカメラ、文書電子化などが該当します。

・デジタライゼーション(Digitalization)

デジタライゼーションとは、業務のデジタル化をいい、特定、あるいは一連の業務でデータを利用し、コンピュータでの遂行を可能にすることをいいます。手作業で行われていた膨大な単純業務をRPA(Robotic Process Automation)などのロボットツールを活用することも、デジタライゼーションに含まれます。例として、E コマース、オンライン授業、オンライン診療、ネット銀行、Web による音楽配信などが該当します。

・デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業のデジタル化の取り組みが、社会全体までに及ぶような仕組みのことを指しています。デジタイゼーションが、効率を求めて、物理的にデジタル化を行うのに対し、デジタライゼーションは、長期的な視野でデジタル化を進めていくものです。DX は、それらのデジタル化の集大成として、新しいビジネスモデルや社会変革を創出することをいいます。例として、サブスクリプション(サービスや製品を売り切りではなく、サービスや製品を利用した期間、用途、利用量に対して対価を支払う課金型のビジネスモデル)や、マルチサイドモデル(プラットフォーム上に複数の顧客グループをつなぎ合わせることで、ユーザー同士の交流を促進し、価値を創出するビジネスモデル)などが挙げられます。

2. マーケティングDX

マーケティングDXとは、市場調査や商品開発、広告宣伝、効果検証といったマーケティングプロセスをITツールやAIを導入してデジタル化し、新しいビジネスや組織を生み出すなどの変革を起こすことをいいます。2020年に始まったコロナ渦において、マーケティングのあり方も変化していきました。コロナ渦前の営業は、足で稼ぐ、電話での新規獲得、展示会での名刺交換などは一般的でした。しかし、対面が難しくなってしまった結果、webマーケティングにシフトせざるを得なくなっていきました。

多くの企業が、営業側からのアプローチがなくとも、顧客から問い合わせがくるスタイルを理想としています。コロナ渦によるwebマーケティングへのシフトによって、それが実現するチャンスとなっているのではないでしょうか。

さまざまなパターンが挙げられるものの、営業側にDXを取り入れるには、まず業務プロセスをデジタル化し、情報を可視化できるようにすることが重要です(図2)。営業がどんな商談に応じているのか、その商談の回数、内容などを社内で共有していきます。その繰り返しにより、組織は成長していくこととなります。

業務プロセスをデジタル化し、情報の可視化をする
図2:業務プロセスをデジタル化し、情報の可視化をする

また、マーケティング側からいうと、自社のコーポレートサイトを見直すことも大切です。商品やサービスの情報、セミナー情報、資料請求などが分かりやすく揃(そろ)えられているかということも確認しましょう。

次に、検索エンジンなどで自社サイトを検索結果に上位表示させ、検索流入を増やすためにSEO 対策をし、セミナーや資料請求などを通して見込み顧客を獲得していきます。見込み顧客が蓄積されていくと、データ化することができ、これを効率的に活用していくことで成約に結び付きやすい見込み顧客を見いだすことが可能になっていきます。見込み顧客との関係を温め、適切なタイミングでアプローチをしていきます。

こうした見込み顧客の獲得から育成、商談までつなげていくプロセスを一元管理し、フロー構造を築いていくことをマーケティングオートメーションといいます。この機能を活用していくことで、営業が足で稼がずに、顧客からの問い合わせにより顧客獲得していくことが可能になっていきます。

3. 製造業におけるDX

4. DX による変化

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 マーケティングの基本
  • 第2回 マーケティングと分析
  • 第3回 顧客重視のマーケティング
  • 第4回 市場の選定
  • 第5回 マーケティングミックス
  • 第6回 DXとマーケティング

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