安全性の要は復原力|船舶工学の基礎知識2

船舶工学の基礎知識

著者:大阪公立大学 客員教授 池田 良穂

前回は、大型船が輸送機関として経済的で、高いエネルギー効率を示す理由を解説しました。今回は、船を直立状態にする復原力を取り上げます。船は、大量の荷物を最も少ないエネルギーで輸送できます。ただし、もともと不安定であるという大きな欠陥を持っています。それを克服するのが復原力です。いかに転覆しないように復原力を維持するかが、安全性の要となります。

第2回「安全性の要は復原力」を解説していきます。

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1. 転覆はなぜ起こる

前回説明したように、船は輸送において、高いエネルギー効率を示します。ただし、水という液体の上に浮かんでいるため、基本的に不安定です。船体に穴が開けば沈みますし、重い荷物を高いところに積むと重心が上がって転覆します。また、荒天になって大きく揺れ、転覆することもあります。特に転覆は、船にとっては最も危険な現象です。そのため、古くから研究が行われ、その原因が研究されてきました。それが復原性の研究です。

2. 船を直立状態に戻す復原力

船を傾けるのは、偶力(モーメント)と呼ばれる回転力です。船が水面で直立しているときには、船の重力と、船に働く浮力が同一線上にあり、大きさも同じです。ただし、重力は下向き、浮力は上向きという方向の違いがあります。

船が傾くと、傾いた舷側の船体が沈み、反対の舷の船体は空中に出ます。この結果、傾いて沈む舷(船の側面)側の浮力が増加し、浮き上がる反対舷の側の浮力が減少します。浮力の作用線は沈んだ舷側にシフトし、重力の作用線とは平行にズレます。このズレが、船に元の成立状態に戻そうとする偶力を発生させます。これが復原力と呼ばれる力です(図1)。

傾いたときに復原力が働くメカニズム
図1:傾いたときに復原力が働くメカニズム

3. 安定・不安定の指標 GM

4. 最後の砦は復原力消失角

5. 波の中での復原力減少

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 経済的で地球環境に優しい輸送機関
  • 第2回 安全性の要は復原力
  • 第3回 抵抗を減らしてエネルギー効率を上げる
  • 第4回 船を走らせる推進器
  • 第5回 荒れ狂う大自然の中での船体運動
  • 第6回 船の自動運転の現状

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