原価の本質を理解する|管理会計の基礎知識4

管理会計の基礎知識
著者:LEC会計大学院 客員教授 林 總

前回は、経営サイクルなどを用いて、管理会計が会社経営に欠かせないツールである理由を解説しました。今回は、原価の本質について解説します。

第4回「原価の本質を理解する」を解説していきます。

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1. 原価とは何か?

原価について解説する前に、私たちが何気なく使っている、原価、コスト、費用について、簡単に説明しましょう。原価とコストは、日本語と英語の違いで、意味は同じです。費用は、これまで何度も取り上げてきたように、期間利益を計算するときに、期間収益と対応させた原価のことです。

例えば、製品を作る際には原価が生じます。その製品が売れたときには、売上原価という費用になります。工場で働く作業員の賃金は、彼らが製造した生産物が完成するまでは仕掛品原価であり、費用ではありません。営業や本社で働く従業員の給与は、労働力の購入と消費する時点が同じであるため、原価でもあり、費用でもあります。

では、原価とは何を意味するのでしょうか? 原価の定義は、原価計算基準(以下「基準」)に詳しく記載されています。これは、1962年に、当時の大蔵省企業会計審議会から公表された会計基準で、各企業が原価計算を実施する際の実践規範として定められたものです。一般的に、「基準」は、メーカーのための会計基準と思われがちです。しかし、銀行業、運送業、賃貸業といったサービス業も適用すべき基準です。

「基準」では、原価を次のように定義しています。

「原価とは、経営における一定の給付にかかわらせて、把握された財貨又は用役(以下これを「財貨」という)の消費を、貨幣価値的に表したものである」(基準三)

ここで財貨とは、企業が購入した経済価値であり、具体的には材料、労働力、機械装置などです。留意すべきは、原価は第一義的には物量(Kg、分、Wattなど)で測定されることです。これを原単位といいます。原価計算上の原価は、原単位に単価を乗じて貨幣価値に変換したものです。経理担当者は、金額に置き替えた後の原価を「原価」であると考えがちです。しかし、これは正しくありません。

2. 原価は「ネガティブ」なものではない

私たちは、原価(コスト)をネガティブな概念で考えがちです。例えば、無駄なコストとか、コストの削減とかいった具合です。

筆者自身の経験として、こんなことがありました。ある会計監査先で、取締役経理部長が「営業部はプロフィットセンターで、経理部は単なるコストセンターにすぎない」というのです。つまり、利益(プロフィット)を生み出しているのは営業部で、経理部は原価(コスト)を消費しているにすぎない。だから、経理部は、営業部に食べさせてもらっているというのです。

それからもう一つ、あるテレビ番組で、著名な経済評論家がこんなことを声高に言っていました。

「お金を使うときには、この支出は投資かコストかをよく考え、コストであれば考え直す必要があります」

果たしてこの経済評論家の言うように、全てのコストは無駄なのでしょうか?

コストの正しい理解には、世界的に有名な経営学者ピータ・ドラッカーの言葉が参考になります。

「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのはコストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させることだけは確実である。しかし成果に貢献するかはわからない」(出典:ピーター・F・ドラッカー、創造する経営者、ダイヤモンド社、2007 年)

ドラッカーは、営業部も経理部も同じコストセンターであるといいます。問題は、原価が成果をもたらすかどうかという点です。言い方を変えるならば、価値を生成するかどうかです。営業マンを増やしても(つまりコストをかけても)、成果(価値である利益)が増えるとは限りません。営業部は商品を売る仕事をしているのであって、お金を作り出しているのではありません。したがって、営業部門もコストセンターです。

経理部についていえば、会計情報を収集するのにはコストがかかるため、コストセンターです。ところが、その会計情報が価値の増加につながるならば、経理部は立派に利益獲得に貢献しています。

原価には、価値の消費と価値の生成という両面があります。大切な点は、消費した原価が価値の生成に役立っているかどうかです。

3. 原価の正しい理解

4. 活動基準原価計算

続きは資料をダウンロードしてご覧ください!

全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 なぜ管理会計が必要なのか
  • 第2回 利益とは何か
  • 第3回 経営ビジョンは北極星
  • 第4回 原価の本質を理解する
  • 第5回 キャッシュフロー計算書を理解する
  • 第6回 貸借対照表の構造を理解する

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