経営ビジョンは北極星|管理会計の基礎知識3

管理会計の基礎知識
著者:LEC会計大学院 客員教授 林 總

前回は、ドラッカーを引用しながら、利益とは何かについて解説しました。管理会計は、過去、現在、未来を可視化するツールです。今回は、管理会計が会社経営に欠かせないツールである理由をお話しします。

第3回「経営ビジョンは北極星」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 中期経営計画

財務会計は過去の実績を対象とすることから、「死亡診断書」に例えられることがあります。過去はどうすることもできないからです。これに対して管理会計は、過去、現在、未来の企業の姿を可視化します。とりわけ重要なのは、未来の姿です。未来は運命的に確定しているのではなく、経営者の意思と努力によって作るものです。つまり、経営者の使命は、目指すべき挑戦的目標を明確にして、その目標を実現するための道筋を考え、組織を動かすことです。

挑戦的目標を明文化、数値化したものを「経営ビジョン」といいます。これは、企業が掲げる「経営理念(経営者の想いを言語化したもの)」を実現するための具体方針を示すもので、組織を構成する従業員の判断や行動のベクトルを一致させる役割があります。私は拙著「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?(林總、ダイヤモンド社、2006年、以下『餃子屋』)」で経営ビジョンを「北極星」に例えました。

「経営ビジョンって・・・」
「北極星と思えばいい」
由紀はその意味が分からない。
「君はハンナをどのような会社にしたいのかな」
「女性が、この服に出会ってよかった、と感動を覚える服を提供する会社です。しかも、働く女性に自信を与え、自信をなくしたときは励ましてあげられるような服が作れたらいいな、と思います」
由紀が目を輝かせて言った。
「君の夢、めざす会社の方向性、挑戦的目標。それこそが立派な経営ビジョンだ」
経営ビジョンとは、いかなる状況に直面しても方向がブレない北極星だ、と安曇は言うのである。
(『餃子屋』より引用)


経営ビジョンを達成するための経営計画や経営方針が経営戦略です。経営者は、経営ビジョンに基づく経営目標を設定し、それを実現するために5年から10年で行うべきことを明確にした長期経営計画を策定します。具体的には、「2035年までに全車種EV化を目指す」といったように、将来的な見通しや、今後強化していく内容を明文化します。

次に、3年から5年で達成すべき売上高や利益額、ROE(自己資本利益率)など、定量的目標値を文書化した中期経営計画を策定します。行うべきことが明確かつ具体的である点が、長期経営計画と異なります。

2. 単年度経営計画と予算

中期経営計画のうち、最初の1 年間の計画を、単年度経営計画といいます。この段階では、設備投資計画や人員計画は固定化されているため、設備と従業員数を前提として、年間の行動計画を具体的に策定します。また、年間の行動計画は、月次の行動計画を積み上げて作成します。

行動計画を貨幣価値に置き換えたものが、年度予算です。つまり、年度予算は原則として月次予算を積み上げたものであり、月次予算は月次行動計画の積み上げによって作成します。そして、月次決算は月次の行動実績を会計数値に置き換えたものです。また、日々の活動は行動計画をにらんで行われるため、月次予算が達成できないということは、計画通りの活動ができていなかったことを意味します。

しばしば、「予算は絵に描いた餅」という話を耳にすることがあります。それは、予算金額の背後に行動計画が存在しないからです。単純に「売上高は前期の10% 増し、費用は前期の5% 削減」といったように、会計数値だけを根拠にして機械的に予算を組むからです。

3. 毎日の行動は経営ビジョン実現の第一歩

4. 目標である予算を達成するための仕組み

5. まとめ

続きは資料をダウンロードしてご覧ください!

全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 なぜ管理会計が必要なのか
  • 第2回 利益とは何か
  • 第3回 経営ビジョンは北極星
  • 第4回 原価の本質を理解する
  • 第5回 キャッシュフロー計算書を理解する
  • 第6回 貸借対照表の構造を理解する

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