工作機械の歴史|工作機械の基礎知識4

工作機械の基礎知識

著者:芝浦工業大学 大学院 機械工学専攻 臨床機械加工研究室 教授 澤 武一

前回は、工作機械の構造と特徴について説明しました。今回は、世界における工作機械の歴史を紹介します。

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1. 紀元前からルネサンス期

古来より人は刃物を使い、生活必需品などをつくってきました。人類の文明の歴史はものづくりの歴史、工作機械の歴史といっても過言ではありません。紀元前300年頃のエジプトの墓には、棒状の部材が描かれています。当時は、紐(ひも)や弓を使って材料を回転させていたようです。回転する材料に刃物を押し当て、不要な箇所を削り取り、目的の形状をつくる加工法は、古くから引き継がれているといえます。陶芸で使用される「ろくろ」は、材料を回転させて形状をつくる方法として、紀元前から現代まで形態を変えずに残っています。この加工法を、動力を使って連続的に行える仕組みをつくり、構造体にしたのが旋盤です。旋盤は最も古い工作機械の一つで、時代とともに進化し、現在では製造現場に欠かすことのできないものとなっています。図1は、ルネサンス期に活躍したレオナルド・ダ・ビンチが残したスケッチをもとに製造した木工旋盤です。

木工旋盤(レオナルド・ダ・ビンチのスケッチをもとにしたモデル)
図1:木工旋盤(レオナルド・ダ・ビンチのスケッチをもとにしたモデル)

1550年前後、フランス宮廷で働いていた数学者ジャック・ベッソンの解説書には、弓や竿(さお)の弾力や重りを付けた紐を動力源として木材を加工する旋盤が紹介されています。このときに使用していた竿をLatheと呼んでおり、これが旋盤の英語名(lathe)の語源といわれています。なお、同時期のイタリアでは、水車を動力源として大砲の砲身の中ぐり加工を行ったという記録が残っており、金属の加工も既に行われていたようです。

図2は、図1と同様、レオナルド・ダ・ビンチが残したスケッチをもとに製造した金属の鍛造(圧力を加えて変形させること)に利用されたレバープレスです。

レバープレス(レオナルド・ダ・ビンチのスケッチをもとにしたモデル)
図2:レバープレス(レオナルド・ダ・ビンチのスケッチをもとにしたモデル)

1400 ~ 1700年頃のルネサンス期には、婦人が刺しゅうをするように、紳士が旋盤を使用するのを趣味としていたようです。金、銀、銅を材料として、時計などの装飾品や工芸品を制作していました。多くの人に使用されることで改良が進み、この時期には、ヨーロッパを中心に産業用の旋盤も数多く製造されました。ベッドが木製から金属(鋳鉄)製に、ベッドの形状が平形から山形になり、バイト(旋盤や平削盤などでの切削加工に用いられる工具)が手持ちから固定式の刃物台になり、安定した加工が可能になりました。

2. 産業革命とペリー来航

イギリスから世界的に広まった産業革命では、蒸気機関の開発により多くの工作機械が生み出されました。日本に工作機械が本格的に伝わったのは、その約100年後、ペリー来航によるといわれています。

・産業革命時に開発された工作機械

産業革命の最も重要な変革の一つに、蒸気機関による動力源の変化があります。1769年、ジェームズ・ワットによって蒸気機関が改良され、産業革命の足掛かりになりました。蒸気機関の給排気に重要な役割を果たすシリンダは、旋盤を改良した横中ぐり盤で加工されました。蒸気機関の改良、および産業革命の基盤(影の立役者)になったのは、旋盤(工作機械)ということになります。

1800年、イギリスのヘンリー・モーズリーは、ねじ切り旋盤を開発しました(図3)。このねじ切り旋盤は、精密に加工された送りねじや歯車を使って組み立てられ、送りねじ用の変換歯車までもが備わっていました。モーズリーの旋盤によって、ねじの加工精度が格段に向上し、工業製品の性能が飛躍的に高くなりました。モーズリーの旋盤は、現在の旋盤とほぼ同じ構造で、現在の旋盤の礎になっていることから、工作機械の革命的開発と位置付けられています。開発当時の旋盤は、主軸が右側でした。しかし、使い勝手の悪さから、その後、左側に移されました。1850年頃には、旋盤をはじめ現在使用されている工作機械(ボール盤やフライス盤、形削り盤など)の原型が確立しています。

ヘンリー・モーズリーのねじ切り旋盤
図3:ヘンリー・モーズリーのねじ切り旋盤

・工作機械の日本伝来

1853年、ペリーの来航により日本に金属加工用の旋盤(工作機械)が本格的に伝わったといわれています(ただし、ペリー来航以前にも、ヨーロッパへ留学していた者たちによって、一部の工作機械が輸入されていたという記録も残っています)。ペリー来航によってヨーロッパ製の旋盤(工作機械)が輸入され、国内でも旋盤が製造されるようになりました。1889年には、池貝庄太郎が日本国産初の旋盤を開発・製造しています。当時は動力源がなかったため、主軸に取り付けたベルト車を人力で回していました。1895年頃、動力源に蒸気機関が取り入れられ、その後モータが使用されるようになりました。モータとベルト車による主軸の駆動は、1950年頃まで盛んに使用され、時代とともに小型化し、現在でも同じ機構が採用されています。

3. 自動化、NC の開発

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 工作機械とは
  • 第2回 加工の工作機械の種類
  • 第3回 工作機械の構造と特徴
  • 第4回 工作機械の歴史
  • 第5回 工作機械に求められる機能と性能
  • 第6回 工作機械の未来

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