前回は、KPI の選定手順と留意点を説明しました。近年インターネット通販の普及などにより、商取引活動(受発注)が大きく変化しました。この結果、宅配の物流需要が急激に増加するとともに、ドライバー不足もあって物流の需給バランスも変化しています。最終回の今回は、物流の需給バランスの変化がもたらす物流のパラダイムシフト(社会の価値観が劇的に変化すること)について解説します。需給量の調整のための対策と、これに伴う物流管理の変化について紹介します。
第7回「物流のパラダイムシフトと物流管理の将来」を解説していきます。
1. 物流の需給バランスの変化とパラダイムシフト
今までの日本は、物流の供給量が需要量を上回り、インターネット通販で商品を販売すれば、いつでも物流(輸送)は可能という状況にありました。言い換えれば、従来は「物流需要量<物流供給量」だったため、受発注にもとづく物流需要に対して、十分な物流の供給が可能でした。このため、配送貨物の時間帯指定や宅配便の再配達にも応じることができたのです(図1)。
ところが、多頻度小口配送のインターネット通販に代表されるように、商取引活動のデジタル化が進むほど、物流需要量が増加しています。そして物流供給量が物流需要量の増加に追いつかなくなれば、近い将来に「物流需要量>物流供給量」となるでしょう。つまり、「商品を販売しても、物流(輸配送)が確保できないために届けられない」という状況に転換する可能性があるのです。これは、「お盆や年末年始に新幹線の切符が確保できなければ、帰りたくても帰省できない」ことと同じです。
つまり、「売りさえすれば、必ず運べる時代」から、「物流を確保しないと、売っても届けられない時代」へというパラダイムシフトが、現在起きているのです。これは、「商流(販売)優先から、物流(輸配送)優先へ」というパラダイムシフトでもあります。
このような兆候として、車両や運転手不足により重量物の輸送や、繁忙期には引っ越し作業が断られる事態も起きています。このパラダイムシフトに対して、従来のように物流事業者の努力だけで解決策を見いだすことは、基本的には困難です。なぜならば、物流の需要を引き出す商取引(受発注)の改善こそが、最大の解決策になるからです。
2. 物流需給量の管理(物流TDM)
現在進行中のパラダイムシフトについて、需給バランスを調整する対策には、「物流需要量の管理(物流TDM:物流需要管理、Transportation Demand Management)」と「受発注内容の管理(サービス水準の抑制)」の2つしかありません。第1の物流需要量の管理とは、輸送や保管の能力を向上させることであり、物流の分散化、物流供給量の拡大、物流の転換の3 つに分けられます(表1)。
物流の分散化(1)とは、時間、空間、手段などについて、ピーク需要を分けて平準化を目指すものです。例えば、従来午前中に集中していた需要の一部を午後に分けることで、ピーク時の需要を下げるとともに、供給量を増加できます。
物流供給量の増加(2)とは、配送車両の大型化や、倉庫内の運用変更です。また、積載率の向上や配送ルートの最適化を通じて、実質的に供給量を増やす方法もあります。
物流の転換(3)とは、輸送や保管の手段、経路、施設、担当を換えることで、物流供給量を増やすものです。配送時の貨物車と台車の組み合わせや、流通センターなどの施設の複数分散がこれに当たります。
3. 受発注内容の管理(サービス水準の抑制)
4. 物流管理の将来
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 物流と物流機能
- 第2回 物流とロジスティクス
- 第3回 在庫計画と在庫管理
- 第4回 輸配送計画と輸配送管理
- 第5回 企業経営と物流KPI
- 第6回 KPIの選定手順と留意点
- 第7回 物流のパラダイムシフトと物流管理の将来