前回は、ISO 9001 の審査の流れについて説明しました。今回は、ISO 9001 以外の ISO 規格を紹介します。ISO 9001 が 1987 年に発行されて以来、ISO 14001(1996 年)や ISO 27001(2005 年)など、さまざまな分野の ISO マネジメントシステム規格が発行されています。ISO マネジメントシステム規格は、大まかに次の 4 つに分類できます。
全4回「さまざまなISOマネジメントシステム規格」を解説していきます。
1. 環境マネジメントシステム( ISO 14001)
ISO 9001 に次いで広く普及しているのが、「環境マネジメントシステム」ISO 14001 です。ISO 9001 が、顧客(消費者)に届ける「製品やサービスの品質」を管理するのに対して、ISO 14001 は、利害関係者(社会一般)に対して「組織の環境保護活動」を証明するためのマネジメントシステム規格です。組織はISO 14001 の認証を取得することによって、「成長」と「環境保護」を両立させるために「持続可能な開発(SustainableDevelopment)」に前向きに取り組んでいることを社会に表明できます。このため、ISO 14001 は環境への負荷が大きい企業を中心に、世界中に広まっています。
ISO 14001 の全体的な構成は、ISO 9001 とほぼ同じです。ただし、2 つの重要な相違があります。1 つは「環境側面の管理」です。「側面」は「Aspect」の日本語直訳です。すなわち、「環境に影響を与える原因としての活動や状況」を意味しています。「環境影響評価」という一種のリスクアセスメントを実施することにより、優先的に管理すべき内容(著しい環境側面)を決定することが、ISO 14001 の基本になります(図1)。
ISO 14001 のもう1 つの特徴は、「環境法規制遵守」です。ISO 9001 では、製品種別ごとの法規制が千差万別です。これに対し、環境法は各国で独自の規制体系があり、いかなる組織でも国の環境法規制に対する法令遵守(コンプライアンス)を意識せざるを得ません。特に環境負荷の大きい副生成物を排出する企業は、神経質なまでにコンプライアンスを管理する必要があります。これがISO 14001 を運用する理由の1 つといえます。
このように、著しい環境側面やコンプライアンス(主として法規制)、およびその他のリスク(悪影響と好影響)について、計画を立てて実施する組織独自の環境配慮活動が「環境マネジメントシステム(EMS:Environmental Management System)」です。その活動結果について、最終的にマネジメント・レビューで経営者の判断を仰ぐところは、ISO9001 など、その他のマネジメントシステムと共通しています。
2. 情報セキュリティマネジメントシステム(ISO 27001)
世界中の認証件数を比べた場合、「情報セキュリティマネジメントシステム」ISO 27001 は、ISO 9001、ISO 14001 に次いで、3 番目に普及している規格です。ISO 9001 やISO 14001 と同様に、英国の国家規格として始まりました。日本では、コンピューターシステムの安全対策に関する認定制度(後のISMS 適合性評価制度)に採用されたことから大々的に普及し、日本における認証件数は世界でも抜きんでています。ISO27001 規格の初版は2005 年の発行ですが、日本のISMS 適合性評価制度は、2002 年から運用されています。
この規格の特徴は、1 つにはリスクマネジメントの規格として構成されているところです。情報セキュリティ上、問題がある箇所を洗い出してリスク分析を行い、優先的に管理するという枠組みは、ISO 14001 とも共通しています。なお、リスクマネジメントの常として100%の管理(リスクがゼロになること)は不可能なので、ISO 27001 では「残存リスク」の管理も要求されています。
もう1 つの特徴としては、いわゆる要求事項の他に、114 の具体的な「管理策(Controls)」が決められていることです。この中から、組織は必要な管理策を選び、独自の「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS:Information Security Management System)」に取り込み、管理します。管理策には、「物理的入退管理策(許可されている者だけが入室できる仕組み)」や、「暗号管理」など、製造業とは一見関係のなさそうなものを含め、さまざまな種類があります。このように多くの管理策が整備されているのは、昨今のサイバー空間の広がりを勘案すれば、納得がいきます。つまりIT 業界(情報通信産業)だけでなく、あらゆる業種において情報(データなどの資産)の管理が必要不可欠になっているといえます。
3. 安全に関するマネジメントシステム規格
4. ISO マネジメントシステム規格の共通化
全5回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ISOマネジメントシステム規格とは?
- 第2回 ISO 9001規格と品質マネジメントシステム(QMS)
- 第3回 ISO 9001(品質マネジメントシステム)の審査の流れ
- 第4回 さまざまなISOマネジメントシステム規格
- 第5回 ISOマネジメントシステムの活用