日本と世界のスマートシティ、迫り来るこの産業の焦点 |国際的スマートシティの基礎知識12

国際的スマートシティの 基礎知識

著者:亜細亜大学 都市創造学部 都市創造学科 教授 岡村 久和

前回は、国際的スマートシティにおける日本の強み、弱みを紹介しました。今回は最終回です。日本と世界のスマートシティに対する解釈の違いという視点で、この産業を俯瞰(ふかん)し、ビジネスとして、今何をすべきかを考えます。俯瞰し、地図が見えると、日本としての強みや弱みも見えてきます。団体戦だけでなく、2011年の東日本大震災での、ハイテク技術を用いたがれき処理からパンデミック対応まで、都市を取り巻く産業の焦点は変化してきました。一方で、それを阻害してきた問題についても考えてみましょう。また、2023年の今、迫り来る次の焦点についても解説します。

第12回「日本と世界のスマートシティ、迫り来るこの産業の焦点」を解説していきます。

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1. 日本と世界のスマートシティの解釈の違い

英語のSmart City は、「よりよいまち」を意味します。一方、日本では、「ハイテクを入れたまち」などと解釈されています。この解釈の違いが存在したまま、世界中で投資や研究開発が続けられています。表1 は、2023 年3 月にロサンゼルスで開かれたスマートシティ国際会議の際、アメリカの自治体や大学と意見交換し、作成したスマートシティの定義です。

さまざまなスマートシティの定義
表1:さまざまなスマートシティの定義

スマートシティには、1. 実験型と、2. まちづくり産業型があります。1. 実験型の上段にある、スマートシティ実証実験型が、日本国内で広く進められているタイプの日本型スマートシティです。アメリカ国内のスマートシティに対する解釈も日本とよく似ているため、これが国際的モデルであると誤解されることがあります。しかし、この解釈をしているのは、日本とアメリカだけであると筆者は感じています。

この、スマートシティ実証実験型は、政府や自治体の補助金を元に、ハイテクや IT 技術を使ったまちの仕組みと考えられています。例えばMaaS、自動運転の実証実験、都市 OS の試験導入、AI やロボットのまちでの活用などが、これに相当します。以下に、内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省の 4 府省が選定しているスマートシティ関連事業(51 地域・54 事業)を示します。(参考:内閣府、令和4年度のスマートシティ関連事業の選定結果、2022 年 7 月)

・未来技術社会実装事業(内閣府):10 事業
AI、IoT や自動運転、ドローンなどの未来技術の実装
・地域課題解決のためのスマートシティ推進事業(総務省):13 事業
都市 OS/ データ連携基盤の導入(整備・改修)
・地域新 MaaS 創出推進事業(経済産業省):11 事業
新交通ビジネスモデル MaaS 実証
・日本版 MaaS 推進・支援事業(国土交通省):6 事業
観光、商業、医療、教育、子育て、防災・減災、MaaS の提供
・スマートシティ実装化支援事業(国土交通省):14 事業
都市インフラの高度化、エリアマネジメントやデータを活用プランニング


実験型の3 つ目には、スマートシティの商品展示場という考え方もあります。トヨタのウーブン・シティ、パナソニックのサスティナブル・スマートタウン、グーグルのトロントなど、各企業がスマートシティを市場として捉え、自社としてそこに販売可能な製品やサービスを、実物で展示するという試みです。商品展示スペースであるため、一定の期間が過ぎた後は、会場は閉じられます。

例えば、自動運転のモデルシティであるグーグルのトロントは、その展示使命を終えると、スマートシティを閉じ、アメリカ西海岸サンノゼで、新たな人間中心の都市開発を始めました。静岡県裾野市のトヨタウーブン・シティは、内燃機関を超えたトヨタグループの可能性展示を終え、閉鎖されたと考えられます。しかし、この商品展示場型スマートシティの閉鎖を、スマートシティの失敗例と考えてはいけません。計画的な戦略なのです。

表 1 の 2. まちづくり産業型を見てみましょう。この中の、まちの再開発とは、既存のまちを再開発するモデルです。700 ともいわれる日本国内の駅前再開発は、それぞれの規模は小さくても、膨大なまちの再開発型スマートシティ事例です。

大規模なまちの再開発としては、渋谷地区の大規模開発、六本木ヒルズの建設、スカイツリー、高輪ゲートウェイなどの例が存在します。スマートシティとは呼ばれないものの、日本各地で非常に多くの再開発プロジェクトが存在しています。例えば、東京だけでも、事業中地区を含めて 284 地区で市街地再開発を行っています(参考:東京都都市整備局)。

全てのプロジェクトに、その時点での最新の土木技術、建築技術、電機技術、通信技術、AR といった映像技術などが含まれています。日本はスマートシティの成功例が満載の国と考えられます。

2. 日本の強み

著者がスマートシティの仕事に従事し始めた2008年ごろは、センサ技術、自動車、半導体、画像処理、通信技術など、さまざまな分野で、日本は最先端の技術と製品・サービスを有していました。2023年の現在、この分野での中国や韓国の台頭は誰も否定できません。日本の技術での強みは希薄になっています。

図1は、2011年ごろからの、日本の都市開発の歴史と、スマートシティ産業分野を重ねた図式です。2011年、東日本大震災では、54基の原子力発電所のうち52基が止まり、猛烈なスピードで代替エネルギープロジェクトが起こりました。

まちづくりスマートシティ日本の歴史
図1:まちづくりスマートシティ日本の歴史

2013 年にはオリンピックが決定され、最先端の土木、建設技術で、さまざまな競技施設が作られました。2019 年はラグビーのワールドカップが始まり、来日外国人対応のため、公共安全、個人宅のセキュリティ、小学校の英語の授業、英会話スクールなど、産業や取り組みが急成長しました。

2020 年のパンデミックでは、医療に焦点が移りました。また、団塊の世代の高齢化は今や社会問題になっています。この10 年を見ても、日本人の団体戦スマートシティ構築に対する圧倒的な強みを感じることができます。世界の発展途上国や新興国は、この日本の姿をスマートシティ満載の国と考えているのです。

3. 海外競争における日本の弱み、語学力とハイテクによる克服戦略

4. 今迫り来る次の焦点

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全12回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 スマートシティの本来の意味
  • 第2回 国際的なスマートシティとは
  • 第3回 日本のスマートシティ
  • 第4回 実は強い日本のスマートシティビジネス
  • 第5回 日本製スマートシティチームの勝ち組み例
  • 第6回 国際的スマートシティプロジェクトにおける日本モデル、コングロマリット
  • 第7回 スマートシティ戦争、コングロマリット各国モデルで激戦
  • 第8回 実ビジネスの事業者とアプローチを考える
  • 第9回 スマートシティで日本が強い売り物とは(前編)不動産
  • 第10回 スマートシティで日本が強い売り物とは(後編)ハイテクインフラ産業
  • 第11回 日本が強いエリア、弱いエリアを冷静に見極める
  • 第12回 日本と世界のスマートシティ、迫り来るこの産業の焦点

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