視環境計画の要件(後編)|照明の基礎知識5

照明の基礎知識

著者:放送大学奈良学習センター 所長 特任教授 井上 容子

前回は、視環境計画の要件のうち、「見やすさ」について紹介しました。今回は、引き続き明るさ・グレア、立体感、陰影、材質感、色味 について解説します。

第5回「視環境計画の要件(後編)」を解説していきます。

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1. 明るさ

人の活動のためには十分な明るさが必要であり、休息には適度な暗さが求められます。また、視作業を優先する場合でも、見やすさの確保だけでは不十分で、その作業や行為にふさわしい雰囲気を作るための明るさが必要です。目の機能は加齢に伴い低下するため、同じ照明環境でも、感じる明るさは年齢によって違ってきます。さらに、同じ人でも順応状態によって感じ方が異なります。

明るさの感じ方は個人差も大きく、年齢差による違いより、同じ年齢層での個人差の方が大きい場合もあります。そのため、各照明条件をどの程度の人が「丁度良い」と受け入れられるのかを把握しておくことが重要です。図1は、文字を読む際の文字の大きさ・照度と、読みやすさ・明るさの関係を、高齢者と若齢者について示したものです。両年齢層の違いが大きいことは一目瞭然である一方、高齢者がちょうど良いと感じる明るさは、若齢者にとってもちょうど良いことが示されています。

文字を読む場合の高齢者と若齢者の適正照度
図1:文字を読む場合の高齢者と若齢者の適正照度(参考:I N O U E Y o u k o ,AKIZUKI Yuki: TheOptimal Illuminancefor Reading, Effectsof Age a nd V isualAcuity on Legibilityand Brightness, Journalof Light & VisualEnvironment, Vol.22,N o . 1 , p p . 2 3 - 3 3 ,1998.5  figure 11 を元に筆者作成 )

図2は、順応輝度Laごとの評価輝度L(asb)と、主観的明るさ(ブリル)の関係です。1asb=1/π cd/m 2 です。矢印で示すように、評価輝度が同じであっても、順応輝度によって主観的な明るさ(アパレント・ブライトネス)が大きく異なることが明らかです。

アパレント・ブライトネス
図2:アパレント・ブライトネス(参考:Stevens,J.C. et.al、1963)

2. グレア

グレアは、「不快グレア」と「減能グレア」に大別されます。視野の中に、他よりも著しく輝度の高い部分や、強すぎる輝度対比がある場合に生じやすく、不快感や見やすさの低下(減能) を招き、視環境の快適性を損ないます。グレアの程度が大きくなるのは、以下のような場合です。

・周囲が暗く、目が暗さに慣れている
・光源の輝度が高い
・光源が視線に近い
・光源の見かけの大きさが大きい

ここでの光源には、反射によって生じる二次光源も含みます。グレアが生じる環境では、視線の動きなどによって目に入る光量が大きく変化し、これに対応するため明順応と暗順応が絶え間なく繰り返されます。これは、不快感や視認性の低下 だけではなく、目の疲労にもつながるため、防止すべき現象です。

グレアを生じさせないためには、高輝度面を視線の近くに持ってこないことが肝心です。加えて、視対象や作業面に正反射した光が眼の方に来ないように光源を配置することも重要です。また、窓から見える天空の輝度はかなり高く、窓のある室内においては窓面が主なグレア源であることが多いため、カーテンやブラインドを利用したグレアの軽減が求められます。

(1)不快グレア
不快なまぶしさを感じさせるグレアを「不快グレア」といいます。不快グレア防除のために、各国で独自の評価法が考案されてきました。それらは、評価値方法と輝度制限方法に大別されます。

評価値方法として、CIE(国際照明委員会)基準(=国際基準)であるUGR(式1)があります。JIS照明基準総則に屋内作業の不快グレア基準として用いられており、UGR値とグレアの程度の関係は表1のようになっています。

UGR 段階とグレアの程度
表1:UGR 段階とグレアの程度(引用:JIS Z 9110照明基準総則、2010)

輝度制限方法は、照明器具の配光制限です(表2)。そのため、環境の不快グレアの程度を計る不快グレア指数とはならないものの、照明器具の選定には便利です。G0 ~ G3 が不快グレアに関する規制で、Vは後述の減能グレアを規制するものです。表2の「UGRの試算値」は、日本照明工業会による、G 分類についてのUGR の試算例です。

照明器具のグレア分類と輝度の制限値
表2:照明器具のグレア分類と輝度の制限値(参考:JIS C8106 施設用LED 照明器具・施設用蛍光灯器、2015)

(2)減能グレア
見やすさの低下を招くグレアを「減能グレア」といいます。高輝度のものが視線の近くにある場合、それによる眼球内散乱光のために輝度対比が低下して、見えにくくなります。絵画やVDT 画面への光源の映り 込み(反射映像)である光幕反射(表3)も、色や文字の視認性の低下をもたらす減能グレアの一種です。

光幕反射(反射映像)
表3:光幕反射(反射映像)

眼球内散乱光は、視線の近くに高輝度光源がある場合に生じやすく、光幕反射は視線の正反射方向にある高輝度光源によって生じます。減能グレアを回避するためには、視線の近くや視線の正反射方向に光源を配置しない工夫が必要です。

表4 は、眼球内散乱光や反射映像による光幕によって、輝度対比が低下することを解説したものです。光幕輝度は、元の背景輝度の数10 ~数100 倍になることも多く、その場合は対比の低下が著しいため視認性が低下してしまいます。

光幕による対比の低下
表4:光幕による対比の低下

減能グレアが生じる際は、まぶしさや不快感を伴わない場合もあり、視認性の低下に気付かないことも少なくありません。そのため、設計段階でしっかりと防止しておく必要があります。

3. 立体感、陰影、材質感

4. 色味

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 照明とは
  • 第2回 光源の種類と特徴
  • 第3回 照明器具
  • 第4回 視環境計画の要件(前編)
  • 第5回 視環境計画の要件(後編)
  • 第6回 照明計画

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