油圧バルブの構造と作動原理|油圧の基礎知識6

油圧の基礎知識
著者:防衛大学校 システム工学群 機械システム工学科 教授 西海 孝夫

前回は、油圧アクチュエータの構造と作動原理を紹介しました。今回は、油圧バルブについて解説します。油圧バルブとは、油圧ポンプから送り出された作動油の方向、圧力、流量を制御する機器です。油圧バルブには、機械制御によって作動する機械操作弁と、電気制御によって作動する電気操作弁があります。ここでは機械操作弁を取り上げ、方向制御弁、圧力制御弁、流量制御弁を紹介します。

第6回「油圧バルブの構造と作動原理」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 油圧バルブとは

油圧バルブとは、油圧ポンプから送り出された作動油の方向、圧力、流量を制御する機器です。バルブ内部の弁体と呼ばれる部品で、絞り流路の断面積を変化させ、流体の流れを制御します。弁体の種類は形状により、ポペットとスプールに分けられます。

ポペットは、円すい形状、球状などの弁体です(図1)。弁座(弁体を受ける部分)のシート面から垂直方向に移動し、弁の開閉を切り替えます。閉位置の状態では基本的に、絞り部からの作動油の漏れは生じません。

ポペットの構造と動作
図1:ポペットの構造と動作

スプールの形状は串形です(図2)。円筒状の穴に内接し、軸方向に移動することで流路の開閉や絞り動作を行います。半径方向に大きい部分をランドといい、ランドが絞り部をふさぐことで弁作用が働き、流れを制御します。ランドと穴の間には隙間が存在するため、閉位置の状態でも若干の漏れが生じます。スプールの利点は、軸方向に圧力が平衡するため、ポペットに比べて外部からの操作力が小さくて済むという点です。

スプールの構造と動作
図2:スプールの構造と動作

ポペットやスプールが流れを制御するとき、弁体と弁座、あるいは弁体と穴には絞りが形成され、流量Qと差圧Δpの関係は、第3回で示したオリフィスの式で表すことができます。

αは流量係数、Aは開口面積、ρは作動油の密度です。この式から、バルブによって流量や圧力を制御するには、他のパラメータをできるだけ一定に保ちながら、開口面積A を変化させればよいことが分かります。流量係数αは、レイノルズ数などによって変化するため、注意が必要です。油圧バルブの種類は役割で分類され、方向制御弁、圧力制御弁、流量制御弁などがあります。それぞれのバルブの構造や動作について、解説します。

2. 方向制御弁

方向制御弁は、作動油の流れ方向を制御するバルブです。これにより、油圧アクチュエータの始動、停止、移動方向を決定します。方向制御弁には、チェック弁や方向切換弁などの種類があります。

・チェック弁
チェック弁は、弁体の球状ポペットを押し開き、作動油の流れを一方向にして、逆流を阻止するバルブです。チェック弁には、ばね付きと、ばね無しがあります。図3 に、ばね付きチェック弁の作動原理、JIS 図記号、内部構造を示します。ばね付きチェック弁は、ばねによって閉位置を保持し、弁座シート面へのポペットの押し付け力を強固にしています。

ばね付きチェック弁の作動原理(上)、JIS図記号(左下)、内部構造(右下)
図3:ばね付きチェック弁の作動原理(上)、JIS図記号(左下)、内部構造(右下)

ばね定数をk、ばねの初期たわみをxo、入口の流路断面積をAe とすると、押し付け力F は、F=Ae(pout-pin)+kxoで表すことができます。F>0の時、ポペットはばねによって弁座シート面に押し付けられています(図3 の左上)。F=0になると、ポペットは弁座シート面から離れます(図3 の右上)。そのときの流入側圧力pinは、pin=pout+kxo/Aeで表されます。油圧力がばね力を超え、押し付け力がばね力などに打ち勝つと、作動油は入口ポートから出口ポートへ流れます。弁が開き始めるときの圧力を、クラッキング圧力と呼びます。

・方向切換弁
方向切換弁は、ポートの接続状態を変えるバルブです。これにより、油圧アクチュエータの駆動、停止、運動方向を決定します。図4に、4ポート、3位置、オールポートブロック、スプリングセンタ仕様の電磁方向切換弁を示します。

方向切換弁の内部構造とJIS図記号
図4:方向切換弁の内部構造とJIS図記号

4ポートとは、4つの接続ポート(図4ではP、T、A、B)を持ち、3位置とは、弁体(スプール)が3つの位置(中央、左、右)に移動することで、流体制御を行うことを意味します。操作力が働いていない中央位置では、全てのポートが閉じている(オールポートブロック)ため作動油の流れはありません。スプールが右に動くと、作動油はPポートからAポート、BポートからTポートへ流れます。スプールが左に動くと、作動油はPポートからBポート、AポートからTポートへ流れます。JIS図記号の左右に書かれている平行な矢印と交差した矢印が、それぞれの流れを表しています。

スプールの移動は、ソレノイドによって行われます。左側のソレノイドSOLaに入力信号が加わると、プッシュピンが押されてスプールは右に動きます。信号が切れると、スプールはばねによって中央の初期位置に戻ります。このような復帰方法を、スプリングセンタといいます。また、右側のソレノイドSOLbに入力信号が加わると、スプールは左に動きます。

3. 圧力制御弁

4. 流量制御弁

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全10回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 油圧の原理と油圧システム
  • 第2回 作動油の種類と性質
  • 第3回 作動油の流れ
  • 第4回 油圧ポンプの構造と作動原理
  • 第5回 油圧アクチュエータの構造と作動原理
  • 第6回 油圧バルブの構造と作動原理
  • 第7回 電気操作弁の構造と作動原理
  • 第8回 アキュムレータとフィルタ
  • 第9回 熱交換器、圧力計、油タンク、配管、電動機
  • 第10回 油圧の動向とハイブリッド技術

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