ヒューマンエラー|ヒューマンインタフェースの基礎知識2

ヒューマンインタフェースの基礎知識

著者:東京農工大学 名誉教授 北原 義典

前回は、人間中心設計の重要性について解説しました。今回のテーマは、ヒューマンエラーです。時代が進んでも一向に減らないヒューマンエラー、その原因と対策について考えてみましょう。

第2回「ヒューマンエラー」を解説していきます。

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1. ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、人間が意識しない状態で犯す過誤で、時として、装置やシステム、あるいはユーザー自身、さらには会社や社会に重大な問題を引き起こすことにもなります。ビルの屋上からわざとものを落として壊したり、人を死傷させたりするような意図的な行為は、ヒューマンエラーとは呼ばれません。あくまでも意識しないで犯すミスがヒューマンエラーです。

工事現場で誤って鉄材を落下させ通行人を巻き添えにしてしまう事故、手術中にメスを体内に置き忘れ患者を死に至らせてしまう事故など、さまざまな作業現場で、人間のちょっとしたミスが大事故につながることがあります。最近では、2021年2月から始まった新型コロナワクチンの接種において、使用済み注射器の使用や、インフルエンザワクチンと間違えての接種など、まさにヒューマンエラーが頻発しています。

ヒューマンエラーの防止策として、注意喚起だけでは限界があります。「人間はエラーを起こすものである」ことを前提に、予防的かつ対処的に、科学的・工学的な策を具体的に講じたシステム設計を行うことが重要です(参考文献:北原義典、イラストで学ぶヒューマンインタフェース 改訂第2版、講談社、2019)。ヒューマンファクタ研究者の石橋明は、「表面に見える事故の背後には、それにつながる多くの要因が潜んでいる。誰の責任かを追及するだけでなく、エラーを誘発した背後の要因は何か、そしてそれらを排除するにはどのような具体的方策があるのかを検討することが重要である」と指摘しています(参考文献:黒田勲監修、石橋明著、事故は、なぜ繰り返されるのか 第2版、中央労働災害防止協会、2006)。

さまざまな事故の原因は、図1のように、ユーザーに起因する要因(感覚器や知覚、記憶、運動器など)、システムに起因する要因(ハードウェアやソフトウェアなど)、自然に起因する要因(温度、湿気、雷、地震)などに分けられます。しかし、システムに起因する要因でも、バグやユーザインタフェースの悪さなどは人間に起因するものであって、間接的なヒューマンエラーです。また、自然に起因する要因であっても、点検や温度管理、落石対策、落雷対策などを怠っていなければ事故を防げることも多く、これもやはり間接的なヒューマンエラーといえます。ヒューマンエラーでは、表層的な事象だけでなく、背後に潜む要因を人間の特性という観点から分析し、エラー防止につなげることが大切です。

事故の原因
図1:事故の原因

2. ヒューマンエラーへの予防的対策

ヒューマンエラーへの対策には、予防的対策と対処的対策があります。予防的対策はエラーの発生を未然に防ぐこと、対処的対策はエラーが起こっても被害を最小限にすることを意味しています(図2)。

ヒューマンエラー対策の基本
図2:ヒューマンエラー対策の基本

予防的対策では、抽象的な注意喚起ではなく、具体的な設計上の工夫が必要です。そのために、安全工学者の河野龍太郎、中條武志らが挙げている方法を軸に対策を整理すると、以下のようになります(参考文献:河野龍太郎編、ヒューマンエラーを防ぐ技術、日本能率協会マネジメントセンター、2006)、(参考文献:中條武志・久米均、作業のフールプルーフ化に関する研究、品質、Vol.14 No.2、1984)。

1:作業や注意を不要にする(排除)
危険因子を含むものや手順をやめてしまう。いらない情報は消す。例えば、鉄道を高架にして踏切をなくす、通行者が引っかかる可能性のある通路の消火栓ボックスの出っ張りをなくす(図3)、など。

通路の消火栓ボックスの出っ張りをなくす
図3:通路の消火栓ボックスの出っ張りをなくす

2:作業できないようにする(不能化)
事故につながりかねないアクションをできないようにする。例えば、スイッチにカバーを取り付け操作できないようにする、操作画面でボタンを選べないようにする(図4)、など。

操作画面でボタンを選べないようにする
図4:操作画面でボタンを選べないようにする

3:作業の方法や手順を分かりやすくする(明瞭化)
ユーザーの注意喚起や記憶の負担を軽減するよう、表示などを分かりやすくする。例えば、操作の順序を分かりやすくする(図5)、整然とそろえる、文字を拡大する、色をつける、音声で知らせる、など。

入力ボックスやボタンなどパーツをそろえて表示する
図5:入力ボックスやボタンなどパーツをそろえて表示する

4:人間が作業しなくても済むようにする(容易化)
ユーザーが危険な作業や複雑な作業をしなくても済むよう、代わりにやってもらう。例えば、危険な場所での作業をロボットにさせる、複雑な計算を表計算ソフトにさせる(図6)、など。

複雑な計算を表計算ソフトにさせる
図6:複雑な計算を表計算ソフトにさせる

5:人間が作業しやすいようにようにする(代替化)
ユーザーの運動器の負担を軽減するよう、作業をしやすくする。例えば、足場を作る、取っ手や車輸を付ける(図7)、など。

運びやすいように取っ手を付ける
図7:運びやすいように取っ手を付ける

このように、ヒューマンエラーにつながる可能性のあるユーザーの行動を物理的に制限したり、確認したりする機構などが重要になります。また、知識不足や忘れに対しては、メタファ(身近なものに例えるインタフェース)の利用、ヘルプの用意も有効です。これらの対策の中でも、特に、ユーザーがエラーを犯さないように設計段階で施すユーザー行動の制限機構を、フールプルーフと呼んでいます。2:作業できないようにする(不能化)に挙げた以外に、洗濯機のふたをきちんと閉じないと脱水機能が働かないようにする、パソコン上のファイルを削除する際に本当に削除してよいかどうかをユーザーに確認するなども、フールプルーフの例です(図8)。

フールプルーフ
図8:フールプルーフ

3. ヒューマンエラーへの対処的対策

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 人間中心設計とユーザインタフェース
  • 第2回 ヒューマンエラー
  • 第3回 GUI設計
  • 第4回 ユーザビリティ評価
  • 第5回 ユニバーサルデザイン
  • 第6回 新しいインタフェースの展開

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