前回は、病院の全体計画について解説しました。今回は、病院を構成する各部門を説明します。
第4回「病院の部門計画 」を解説していきます。
1. 病棟部門
病棟部門は、入院して必要な診療・看護を行う部門です。その建築設計は、患者の療養の場としての設(しつら)えと、看護作業の能率との両面から考える必要があります。例えば、病室の窓から見える樹木が治療効果につながる、というアメリカの研究があります(参考:Ulrich SR., Viewthrough a window influence recovery from surgery., Reprint Series.Science. 1984; 224:420-421.)。ベッド周りの療養環境が、手術や投薬と同じように治癒に役立つことを真剣に検討する視点が大切です。ナイチンゲールは、ベッド周りに新鮮な空気の量(気積)を確保し、さらに陽光と適切な室温を供給することを主張しました。これは、COVID-19の感染患者の入院環境の参考にもなります。
何人かの看護スタッフが、チームを組んで世話をする患者の一群を看護単位と呼びます。日本では、50 ~60床規模の看護単位が多くなっています。これは、看護勤務体制と診療収入の上で最も採算に合う数字だからです。しかし、急性期患者の看護が十分にできるのは、20床までです。そこで、実際の現場では50床を2分して、25床ごとに主任看護スタッフを置き、チーム看護をしています。従って、看護スタッフの看護単位は25床で、50床は看護師長の管理単位と呼ぶべきです。
看護単位規模は、日本の病棟計画での最大の問題点です。単位が大きいと、全体面積が大きくなり看護動線が長くなります。つまり、看護観察が行き届きません。福祉施設では、個室で構成された8 ~10人の小規模ケアユニット(小規模生活単位特別養護老人ホーム)が制度化されています。病院でも、病室を全て個室(一床室)にして、患者・家族のプライバシーを守り、かつ診療・看護上も効率的な看護単位規模を実現した例が増えてきました(第1回、足利赤十字病院)。看護動線短縮のために、病棟の中心にナースステーション(現在では、他の職種のスタッフも利用するところなのでスタッフステーションと呼ぶことが多い)を配置します。配置方法は、病室群の中心に配置、縦動線の近くに配置、分散配置の3つに大別されます(図1)。昨今では、病棟出入り口はカード式の施錠で、厳密に管理するのが一般的です。
2. 外来部門
外来部門では、患者の来院から受付、診察、検査、会計、投薬などが能率よく、快適に実現できる環境の整備が必要です。診療予約、診療録(カルテ)の保管・搬送、検体採取・搬送、会計計算・支払い、処方オーダー・調剤投薬に関する各種システムの理解と、建築・設備的対応が求められます。また、患者の移動に伴って発生する「迷い」と、それぞれの場所で生じる「待ち」とを軽減する計画・設計を、システムとの対応で考える必要があります。迷いの対策としては、患者自身が、自分のいる位置と状況を判断できる視認性を保ち、明解な経路探索(Wayfinding)システムを組むことが有効です。待ちの対策では、診察時間の合理化(予約の時間にできるだけ診察が受けられるようにする)と呼び込みシステム(診察時間になったらポケットベルあるいはスマ―トフォンで知らせるなど)の改善、そして屋外が見える快適な待合環境が求められます(図2)。
また、外来部門にコンビニやカフェテリアなどの「街」的な要素を組み込むことも、環境の向上に効果的です。図3は、アムステルダム近郊にある学術医療センターです。全面トップライト(天窓)のアーケードや広場が設けられ、カフェテリア、郵便局、図書館や樹木・街灯が設置されています。
3. 診療部門
4. 供給部門
5. 管理部門
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 病院建築・設備の特徴
- 第2回 病院の地域施設計画
- 第3回 病院単体の全体計画・設計
- 第4回 病院の部門計画
- 第5回 ライフサイクルとファシリティマネジメント
- 第6回 20世紀型病院建築までに至る変遷
- 第7回 次の世紀に求められる病院建築とは