今回は、姿勢偏差の指示例と公差域を解説します。姿勢偏差は、対象となる形体がデータムに関連して、平行や直角、任意の角度を持つ幾何学的に正しい姿勢を表す偏差(ずれ)の許容値内にあるかを規定するものです。姿勢偏差に分類される幾何特性には、平行度、直角度、傾斜度、線の輪郭度、面の輪郭度があります。本稿では、平行度、直角度、傾斜度の指示例と公差域を取り上げます。(線の輪郭度、面の輪郭度は、第5 回を参照)
第6回「姿勢偏差の指示例と公差域の定義」を解説していきます。
1. 姿勢偏差の種類と特徴
姿勢偏差は、基準となるデータムを必ず参照し、その形体が指定したあるべき形状(カタチ)と角度(傾き)になっているかを要求する特性です。形状と傾きを満足すれば、位置までは規制されません。
姿勢偏差を形体の表面に指示したとき、特に指定しない限り、面全体が対象です。このとき、相手部材の形状が丸棒やナイフエッジ状の場合、設計意図を伝えるには母線で指示するべきです。しかし、形状偏差と違い、姿勢偏差には母線を指示する記号が存在しないため、LE(LineElement:線の要素)という記号を、公差記入枠の下部に記載します(図1)。
図1 は、データムA に平行で、かつデータムB に直角な任意の位置にある線分が、0.1mm 離れた平行2 直線間にあればよいことを意味しています。この場合、2 次データムであるデータムB は、平行度指示とは無関係に、その向きを直角方向であると見なします。
2. 平行度の指示例と公差域
平行度は、その中心線や表面が基準に対して、どれだけ平行から傾いているかを表す指標です。
・穴の中心線を基準にして、他の穴の中心線に平行度を指示する場合
図2 は、中心線同士の平行度の指示例とその公差域です。それぞれの穴の寸法線の延長線上に、データムと幾何公差の指示線を当てます。指示線を当てた穴の中心線は、データム軸と平行な円筒内になければなりません。円筒の直径は公差記入枠で指定され、図2では0.1mmです。この場合、公差域となる穴とデータム穴の距離は、一般寸法(2 点間距離)で管理するため、幾何公差としては平行度のみを確認します。
・一方の平面を基準にして、対向する平面に平行度を指示する場合
図3 は、平面同士の平行度の指示例とその公差域です。寸法線から外れた表面に、データムと幾何公差の指示線を当てます。この場合、指示線を当てた平面は、データム平面と平行な平行2 平面間になければなりません。平行2 平面間の距離は公差記入枠で指定され、図3 では0.1mm です。公差域となる平行2 平面とデータム面の距離は、一般寸法(2 点間距離)で管理するため、幾何公差としては平行のみを確認します。
・一方の平面を基準にして、他の穴の中心線に平行度を指示する場合
平行とは、2 つの平面同士、直線同士、あるいは直線と平面が交わらない状態と定義されます。図4 のうち、ねじれの関係にある2 つの直線は、平行ではありません。また、面と線の平行に注意する必要があります。
図5 は、基準のデータムA 面に対して、穴の中心線の平行度を要求している例です。
図5 に平面図(真上から見た図)を追加したのが、以下に示す図6 です。穴の中心線は、追加した平面図の両側面(面1、面2)に対して平行でなくても、データムA に対する平行度は満足することが分かります。姿勢偏差は外郭形状に惑わされやすく、正しい設計要求を見誤らないようにしましょう。側面に対しても平行を要求する場合は、面1 あるいは面2 のどちらかにデータムB を設定し、平行度はデータムA とB の2 つを参照します。
3. 直角度の指示例と公差域
4. 傾斜度の指示例と公差域
5. 姿勢偏差と形状偏差の関係
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 幾何公差とは?
- 第2回 位置に対する寸法公差と幾何公差の違い
- 第3回 幾何特性の種類と記号
- 第4回 データム記号と幾何公差の表記法
- 第5回 形状偏差の指示例と公差域の定義
- 第6回 姿勢偏差の指示例と公差域の定義
- 第7回 位置偏差の指示例と公差域の定義
- 第8回 振れ偏差の指示例と公差域の定義