前回は、幾何特性の種類と特徴、普通幾何公差について説明しました。今回は、設計意図を表すためのデータム記号と、幾何公差記入枠の表記法を解説します。多くの設計者が知らないルールで、指示する場所を誤ると、設計意図が正しく図面に反映されません。測定の際にも誤った測定法になる可能性が高くなり、品質保証の仕組みが崩れてしまいます。
第4回「データム記号と幾何公差の表記法」を解説していきます。
1. 表面形体とサイズ形体から導かれる誘導形体
幾何公差の基本記号を指示する場所には、表面形体とサイズ形体から導かれる誘導形体の2種類があります(図1)。表面形体は、物体の表面、または母線(表面上の任意の位置にある実体のある線)です。一方、サイズ形体から導かれる誘導形体は、物体の中心線、中心平面、および中心点です。
2. データム指示のルールと注意点
データムは、関連形体(平行や直角のように、対象物の線や面との関係を指定する形体)の幾何公差を指示するときに基準となる線や面です。JIS B 0022 幾何公差のためのデータムでは、「関連形体に幾何公差を指示するときに、その公差域を規制するために設定した理論的に正確な幾何学的基準。例えば、この基準が点、直線、軸直線、平面及び中心平面の場合には、それぞれデータム点、データム直線、データむ軸直線、データム平面及びデータム中心平面と呼ぶ」と規定されています。
データムは、作業担当者の視点によって、何を指示するために使うのか異なってきます。
・設計者の視点:取り付け面や位置決め穴、回転軸を受ける穴、摺動面など
・加工者の視点:加工の基準となる面や穴など
・検査者の視点:定盤やゲージなどを当てる面や穴など
データムであることを示す場合、データム記号を用います。データム記号は、三角記号とアルファベットの大文字を囲んだ枠で表します(図2)。三角記号は、黒と白のどちらを使用しても違いはありません。黒の方が目立つので、黒を使うとよいでしょう。
データム記号の記入場所は、投影図の外形線上や、寸法引き出し線上です。向きに意味の違いはありません(図3)。
データム記号を図面に指示するとき、注意しなければいけないのは、記号を配置する場所です。表面形体(表面、母線)と、サイズ形体から導かれる誘導形体(中心点、中心線、中心平面)に記号を配置するときの注意事項を確認しておきましょう。
・表面や母線にデータムを指示する場合
表面や母線にデータムを指示する場合、該当する形体の寸法線とは距離を置き、形状線上、または寸法補助線上にデータム記号を配置します(図4)。
・中心点、中心線、中心平面にデータムを指示する場合
中心点、中心線、中心平面にデータムを指示する場合、該当する形体の寸法線の延長線上にデータム記号を配置します(図5)。
3. 幾何公差記入枠のルールと注意点
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 幾何公差とは?
- 第2回 位置に対する寸法公差と幾何公差の違い
- 第3回 幾何特性の種類と記号
- 第4回 データム記号と幾何公差の表記法
- 第5回 形状偏差の指示例と公差域の定義
- 第6回 姿勢偏差の指示例と公差域の定義
- 第7回 位置偏差の指示例と公差域の定義
- 第8回 振れ偏差の指示例と公差域の定義